第1話 孤独
「.....」
少年は見上げていた
とある海岸で
砂浜に寝っ転がり、雲一つない青空を見上げていた
何か目的があるわけではない
ただ茫然と砂浜に寝ていた
「.....なんでだよ。今日こそは完璧だと思ったのに」
そうその少年は言って、左へ転がる
そこには破り捨てられてあった手紙があった
見事に真っ二つに分かれた手紙が海水に浸っている
その手紙は数時間前、その少年が好きな人に渡したラブレターであった
「はあー。勘違いだったのかなあ.....」
そうため息をつく少年の名前は三池 二有無
高校2年生
彼は好きな女子がいた
その女子は二有無の席の隣にいて、たまに朝で挨拶しあう中
二有無にとって唯一の話し合うことができる女子であった
だが、いつの間にか彼はその女子に好意を持つようになる
毎朝挨拶するのも、もしかしたら自分のことが好きなのではないのか
そう感じていた
そして、今日遂に二有無はその女子に告白する
夕焼けが広がるこの砂浜で彼はラブレターを差し出し、告白したのだ
だが、こっぴどく振られしまいにはラブレターを破られる始末
「うう.....。1日かけて作り上げたんだぞ.....。何も、捨てることはないじゃないか」
夕日の暖かみを感じながら、彼は頬を濡らす
生涯にかけて初めての大泣きであった
「ああ.....帰りたくねえ。何だか、波にさらわれて死にたい気分」
夕陽は刻々と水平線の下に落ちる
時刻は6:30
いつもなら食卓の上で夕食を食している所
だが、彼はその砂浜の上で立てずにいた
服が泥で汚れても、波で濡れても、構わずにそこに寝ていた
__あぁ
「.....誰?」
舞台は砂浜
そこには二有無以外誰もいなかった
だが、確かに弱々しくい誰かの声が二有無の耳に届いた
その声に二有無はぞくりと背筋を凍らした
真っ暗闇で人がいないかどうか定かではなく、人の声が聞こえたところで大して変な
話ではない
しかし
その声は人間の声とは思えないほど、低い声をしていた
いや女の声ではあるのは分かるが、どこか遥か下の方から発するような
まるで地獄から聞こえるような.....
そう二有無は感じた
「え.....だ、だ、誰.....!?誰かいるの!??」
二有無はすくっと立ち上がり、すかさず戦闘態勢に入る
こぶしを握り締める
まさに幽霊
恐怖が全身を包み込むが、それ以上に好奇心がかっていたらしく
一歩一歩確実に二有無は音の主の方へ歩いていく
「幽霊か.....?」
これ以上進んではいけない
それを端的に表すのならその一文
二有無はじわじわと感じていた
これ以上進んではならない
だが、これ以上引いてはならない
明らかにそれは二有無を見ていた
なら進むしかない
二有無は意を決して次の一歩を踏んだ
__あぅ
「.....あえ?」
二有無は思わず情けない声を漏らした
そこにいたのは、不気味な声を出していた主は
自分と違わない女子であった
そこにいたのは、自分の年端もいかない女子
その女子は髪を濡らして、服が切り裂かれ上半身が露出していて
顔が驚くほど青ざめていた
「君.....大丈夫」
その露わもない姿に恥ずかしさを覚え、目を隠しながら
二有無はその女子に手を差し伸べた
__助けて.....
手を差し伸べられ、その女子はそう最初に人間らしい言葉を出した
女子に振られた二有無
砂浜に打ち上げられた何か
それが二人の最初の出会いであった
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