レッスン4 つながり
浅草三社祭(合コンしないか?)
秋葉悠一、渋沢智裕、大塚湊がいつも通りに部室にたまってダベっている。
「GW、何してた?」悠一
「ゴロゴロしてた。ゲームして、漫画読んで、寝てた」智裕
「大学生って最高、授業もない、勉強しなくても何とかなる、うるさい親もいない」悠一
「パラダイスだな」智裕
「欲を言えば彼女が欲しい」悠一
「部活やってると、つくる暇もないし、金もない、そこがネックだ」湊
「でも、合コンくらいやらないと、何も始まらない」悠一
「そうだな、それに恒星を餌にすれば、女子の方から寄って来る」智裕
遅れて聡一郎と神田淳が体育館にやって来る。
「おまえ、もっとパット起きれないのか?」淳
「朝早いから無理、講義中くらい気持ち良く寝かせて」聡一郎
「聡一郎も来たし、そろそろ練習始めるか」湊
「あれ?恒星がいない」聡一郎
「取材で遅れるそうだ、先に始めようぜ」智裕
「聡一郎、さっさと始めようぜ」淳
「悪い、恒星を見てくる、先に始めといて」聡一郎
***
(学生食堂のカフェテラス)
初夏の光を浴びて、藤棚から垂れ下がる紫の花が優雅にゆれている。テラスでカフェを飲む男女が意味のない会話で盛り上がっている。その向こうには白いハナミズキが咲いていて、ヒヨドリが枝から枝へ飛び跳ねている。
ライバル対談でした、と言って雑誌の記者が会話のレコードを止める。
「残念ですが、俺は大獅のライバルではないです」
隣に座っている物部大獅のことを気に留めずに、恒星が、未だ大獅の本当の実力を見せて貰ってないと言う。
「とぼけた奴だ」と物部大獅が愉快そうに笑う。
「ともかく、おまえがバレーボールを続けてくれたのは嬉しい。おまえがいないと、俺も張り合いないからな」
ここか、聡一郎がカフェのテラスに来る、
「恒星」と声をかける聡一郎、物部と目が合う。
「橘か、おまえとは久しぶりだな」
竜王の物部?
「安心しろ、借りは返す」
「借り?ああ、借りね、ありがとう」
「ありがとう?相変わらず、とぼけた奴だ、おまえらは二人とも」
こいつは、とぼけたんじゃない、と思う恒星。
「おまえ達の練習も見たかったが、今日は時間がない。楽しみができたということにしておく」
「ああ」とだけ応える恒星
「大獅君、忙しいのにありがとう」雑誌記者が礼を言う。
「ええ、東京に出て来た甲斐がありました」
***
(本日の練習)
2対2のスパイク、レシーブ、トスの練習。
サーバーがサーブを打つ、相手がレシーブ、さらにもう1人がトスを上げる、レシーブした人がスパイクを打つ。
サーバーがスパイクレシーブ、もう1人がトスを上げる、サーバーがスパイクを打つ。
相手は入れ替わってレシーブ、ボールが落ちるまで続ける。レシーブ、トスの練習なのでスパイクはレシーバーが拾える範囲に打つ。
15分交代で4人づつコートに入り、コートの外では体幹トレーニング。
体幹トレーニングをしながら、秋葉悠一が恒星に合コンの話しをする。
「恒星、合コンやらないか?」
「何のため?」
「たまには女子と楽しくお食事したいだろ、ぱーっと盛り上がろうぜ」
「俺が盛り上がると思うか?」
「それはないと思うけど、おまえがいると助かる。皆んなのため、いや、慈善活動、社会貢献だと思って、お願い!」
無視して、ストレッチする恒星。恒星の隣で、慈善活動という言葉に反応する聡一郎。
「慈善活動なのか?だったら俺も参加したい」
「あたりまえだ、おまえが参加しないでどうする」
「いいの?合コン初めてだから、なんか楽しみ」
「聡一郎も参加するから、恒星もいいよな、頼む」
「いつやるんだ?」
「今週の土曜日だけど、来てくれるか?」
「考えとく」
「そう言えば、あっくん、俺、竜王の物部に何か貸してたかな?」
「覚えてないのか?あれを」
「あれか?あれは覚えてる」
「あれ?そのあれって何?」
「あっくんにこないだ、1000円貸した(もんじゃ焼き一緒に食べたよね)」
「まあ、借りてるわけじゃなかったら、忘れといていいんじゃないか」
「そうしよ、でも、あっくんのは忘れてないから」
***
(翌朝)
聡一郎のあとについて走る恒星。
「聡一郎、何処まで行く気だ?」
「浅草」
「反対に向かってないか?」
日本橋から人形町を進み、水天宮で右折、八丁堀も過ぎて、今は築地を走っている。
「こっちであってる」
「あってるならいいが、何で浅草なんだ」
「週末の三社祭の下見、町の様子を見ておきたい」
築地から勝鬨橋を渡り、左に曲がって月島もんじゃ焼き仲通りに入る。真っ直ぐ行って突き当たったら、右に折れて相生橋、隅田川を渡り清澄通りに入る。
右に明治丸記念館、明治丸が泊まっている、深川、仙台堀川の手前の芭蕉像を過ぎると左手に清澄公園。
さらに真っ直ぐ進むと両国、左手に江戸東京博物館、両国駅を過ぎたところで、北斎通りに入り、大横川親水公園を過ぎて錦糸町。
左に折れてタワービュー通りに入り、そのままスカイツリーまで真っ直ぐ進む、スカイツリーにぶつかったら右に巻いて、小梅通り西交差点を左に進み言問橋、墨田川を渡る。
そのまま言問通りを進みローソン浅草観音店手前を左折、左折して200mで浅草寺、浅草寺本堂の前を通り過ぎて、東側の浅草神社の前で止まる。
「着いた!」と聡一郎、「俺はお祈りするけど、おまえはどうする?」
「俺は神頼みはしない」
聡一郎が静かに賽銭を置き、二礼ニ拍手して手を合わせる、お祈りのあとでまた一礼する。
「神妙な顔してたが、何を祈ったんだ?」
「世界平和、お祈りの定番にしてる」
「そうか、心配した俺が馬鹿だった」
「そう、叶わなくても、祈ってる」
浅草寺会館前、宝蔵門(仁王門)と五重塔が見える。ストレッチする恒星と聡一郎。
「昨日、物部はどうしてうちに来たんだ?」
「雑誌社が俺と対談させたかったんだろ」
「わざわざ来るか?あいつ忙しそうだったけど」
「おまえに借りを返すと言いたかったんだろ」
「そうなのか?俺は何を貸したか覚えてないけど」
「だと思ったよ、気にするな」
「何故か気になるんだよな、気になると言えば、おまえもだ。どうしてここいるんだ?」
「ここに連れて来たのは、おまえじゃないのか?」
「いや、バレーボールするなら、他の大学だろ?」
「だったら、おまえは何してる?」
「俺とおまえは違うだろ、俺はバレーが好きなだけ、おまえは好かれてる」
「俺も聞いても良いか?」
「嫌だ(って言っても聞くよな)」
「おまえはどうしてバレーが好きなんだ?」
「好きだからだろ」
「じゃあ、俺とおまえで何が違う?」
「同じじゃないだろ、一緒が良いのか?」
「おまえ、真面目に答える気ないだろ」
「それより、何でうちの大学なんだ?おまえは何かを決めてから行動するよな」
「おまえには言わない」
「何で?やっぱりいい。どうせ俺には関係ないんだろ」
「そうは言ってない。それより、どうやって帰るんだ?」
「おまえは来た道を帰る、俺は真っ直ぐ帰る。ここから上野までは遠くない、おまえには近すぎるだろ」
***
(法学部講義室)
「悠一が合コンするんだって」聡一郎
「出会いが欲しいなら、マッチングアプリか街コンの方がいいじゃないか」淳
「そこまで彼女が欲しいわけじゃないだろ、騒ぎたいだけじゃないか」聡一郎
「あんたも参加するのか?」綾乃
「勿論!しかも、初合コン。高校は男子校で部活ばっかだったからな」聡一郎、
「だったら俺も参加する」淳
「じゃあ、皆んなで盛り上がろう!そうだ、女子もどう?」聡一郎
「何故、女子を誘う?」綾乃
「いいんじゃない、女子友連れて来れば」聡一郎
「そう言うことか、まあいいけど、それって大和も来るのか?」綾乃
「来ると思う?」聡一郎
「あんたが呼べば?その方が女子は喜ぶ」綾乃
「無理でしょ、呼んで来るような奴じゃない」
「だったらバレー部以外の男子を頼む」綾乃
(男子バレー部部室)
「目白さんと瑞穂ちゃんも友達連れて来るって、あと、恒星も仕方ないから参加するって(雨降んないといいけど)」と聡一郎が秋葉悠一に言う。
「おまえ、いい奴だな、ずっと友達でいようぜ」
「だったら、バレー部以外の男子も呼んで貰えるかな、目白さんに頼まれた」
「何か入り乱れて大勢になるけど気にしない。瑞穂ちゃん可愛いし、まかせて」
「それと、場所は浅草がいい、三社祭があるから」
「三社祭?」
「ああ、実家との関係で、祭りの手伝いをしてる」
-三社祭-
浅草神社の祭礼「三社祭」は、鎌倉時代の正和元年(1312)に、神輿を船に載せて隅田川を渡御した船祭を起源とする。浅草神社の氏子四十四ヶ町を中心に、勇壮且つ華やかな神輿渡御を主として、五月の第三土曜日を基点とした金・土・日の三日間に亘って行われる。江戸風情の残る下町浅草が1年でもっとも活気付くと云われ、東京の初夏を代表する風物詩の一つになっている。
初日は、お囃子屋台をはじめ
二日目には、「例大祭式典」が斎行され、その後に「町内神輿連合渡御」によって浅草氏子四十四ヶ町の町内神輿約百基が神社境内に参集し、一基ずつお祓いを受けて各町会を渡御します。
最終日は、宮神輿三基「一之宮」「二之宮」「三之宮」の各町渡御として、早朝には神社境内から担ぎ出される「宮出し」が行われ、日中は氏子各町を三方面に分かれ渡御し、日没後に神社境内へ戻る「宮入り」を迎えて祭礼行事が終わります。
期間中は浅草の街がお祭り一色に彩られ、神社では各神事が斎行されると共に、境内や神楽殿においても様々な舞踊が披露されます。
神輿は祭礼にあたり、神幸に際して、ご神体あるいは御霊代がお乗りになる輿の事をいいます。氏子達が担いで各地区を練り歩きますが、こうすることで神様に各地区をご覧頂くのです。神幸の途中、神輿を上下左右に振り動かしたり、わざと荒々しく揺さぶることで、神輿に坐す神様の「
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