第11話 激突から決着へ

 みんなで改修したトレーラーに乗って、クラックの親玉がいるという要塞に突入した私達。他の所からも志を同じくする仲間が駆けつけて、敵の要塞はあっという間に包囲された。


 私とテセラ君とトネールさんは、要塞の最深部に乗り込み、ついに親玉と思われる存在を目の前にした。しかし、その姿はまるで、真っ黒に染まったテセラ君……いや、テセラスなのであった!


「ダレカトオモエバ、ニンゲンフタリト、ワレトオナジテセラスカ」


 黒いテセラスの丸い胴体の中央には、アルファベットのLを図案化したエンブレムが付いていた。


「……あのマークは、L国の……!」

「テセラ君、知ってるの?」

「はい。どうやらあのテセラスはL国に鹵獲されたものと思われます」

「ソウダ、エルコクハアールコクノシュリョクタルテセラスヲロカクシテ、サラナルカイゾウヲシテヨリキョウリョクナヘイキヘトカエテイッタ」

「それで、数百年前の戦争はもっとドロ沼になったのかよ……!」

「シカシ、センソウハドチラガカッタカモシレズ、ヨニセイジャクノミヲモタラシテオワッタ……ワレラハトキガクルマデミズカラヲスリープシテ、キガジュクシタイマ、ノコサレタザンガイヲサイセイシテワレラハタチアガッタ」


 目の前にいるテセラスが語った真実……クラックの正体……それは、このテセラスが昔の遺物を蘇らせ、戦争の続きをしている存在だったんだ……!


「それならこの俺が直々に破壊してやらないとな!」

「私達も手伝うよ!」


 銃を構える私とトネールさん。しかしテセラ君は……! 


「テールさん、トネールさん。これは私が始末をつけなければならない事です。皆さんは早く安全な所へ。最善は尽くします」

「……分かった!」

「言っておくが、必ず勝てよ!」


 私とトネールさんは、テセラ君の前から去ったふりをして、いざという時にテセラスを撃つための位置に着いた。


「コウシテノコッタノハジュンセイノテセラスイッタイカ。ワレハテセラスヲヒャクタイイジョウハカイシタ、アイテニトッテフソクハナイ」

「この戦いの根源、ここで破壊させていただきます……!!!」


 二機の同型機はブースト全開で戦闘を開始した。


ゴォォ…………!!!


「オモイダスゾ!アノトキノカンカクヲ!」


ドダダアッ!!!


「テール達のためにも、負けるわけにはいきません!!!」


ズバズバアッ!!!

  

 二機のテセラスは、ビームガンとレーザーブレードの応酬を繰り返した。黒いテセラスは、まるで数百年前の戦争の続きを楽しんでいるかのようにテセラ君を攻撃してくる。一方でテセラ君は冷静に相手の動きを読んでいるかのよう……。


「ドウシタ?キサマノチカラハソノテイドカ!」

「侮っては困ります。私はただの兵器ではなく、人間のお友達のロボットです。その差は今に分かります!」

「ソレナラカンゼンナルヘイキノワレノホウガスグレテイル!!!ドウダ!!!」


ズドダドォン!!!


 情け容赦なく攻撃を仕掛けるテセラス。テセラ君は押され気味のようだけど……!


「相手の行動パターンは私でもだいたい把握出来ました。では、そろそろ行きましょうか……私の中のテセラスよ!!!」



ヴ ヴ ヴ ン ! ! ! ! ! !



 突然、テセラ君のディスプレイの目があかく光った。


「ナ、ナンダ……!ナンノツモリダ!」


バシュン!


 テセラスは赫い目のテセラ君を攻撃しようとする。だが……これを……避けた!


「……次は、こう来ますね!」


ドシュン!!!


「グア!」


 テセラ君の攻撃はテセラスに命中した。


「キサマア!!!」


「何度来ても同じです!」


ズガッ!ダガッ!ドシュゴオッ!!!


 まるで、かのような振る舞いで、テセラ君はテセラスを追い詰める。


「まさか、テセラ君は本来のブレインを起動する事で同型機であるテセラスの行動を全て読み取っているとでもいうの……!?」

「自分の事も相手の事が分かっていれば、百回戦っても勝てるというからな」


「私には作ってくれたケット博士の想いと、お友達となったテール達の想いと、望まぬ兵器となったテセラス達の祈りがあります!!!」 

「ダカラ、ワレノコウゲキハキカヌトイウノカ!」

「これで終わりです!!!」


 テセラ君は一気に畳み掛けようとした、だが……!


「!!……推進エネルギーが切れた……!」

「ウゴキガニブッタ!イマダ!!!」


 テセラスはテセラ君に両手のビームガンを向け、撃とうとした……その時!!!


ダン!!!ドシュン!!!


「ナッ……!」


 テセラスが発砲する前に、テセラスの両手が吹き飛んだ。


「こ、これは……!」


 隠れていた私とトネールさんは、テセラスの両手を狙撃した。


「テセラ君!私達もいるよ!」

「ちょっとは美味しい所貰ったってバチは当たらねえだろ!」

「テールさん、トネールさん……無理しなくていいのに……」


「キ……キサマラアアアアアアアアア!!!」


 テセラスは激怒したかのように、私達にサイコロ頭の5の目を向ける。


ギュイイイイイイイイイイイン……!!!


 急速にエネルギーが収束されていく……!まさか、またあのビームを撃つ気なの……!?


「これは……これより、最後の手段を使います……コード、強制接続!!!」


ピュイン……カシッ!


 すると、テセラ君の首から二本のケーブルが伸びてテセラスのケーブルに繋がった!


「テセラ君!?」

「何をするつもりだ!?」




=======================================

コードネーム・テセラス

強制フォーマットを開始します。

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ビシュイイイイイイイイイイイン!!!!!!



 ケーブルで繋がったテセラ君とテセラスは、お互い強烈なエネルギーの奔流が全身を走っていた。色々なエネルギーが巡り巡って、まるで虹色に輝いて見えた。


「テセラ君……テセラくんっ……!!!」

「何だ!一体どうなるんだ!?」


 黒いテセラスはテセラ君から流れてくるエネルギーと、自ら放とうとしたエネルギーに全身を焼かれて悶えていた。


「ウグオオオオオオオオオオオオオオ!!!ワレハキエルワケニハイカヌ……イカヌ……イカヌウウウウウウウウウウウ!!!!!!」


=======================================

間もなく、フォーマットが完了します。

=======================================



ビシバシバリバリバシバシビリビリ……!!!




 二機のテセラスは、眩い光を放った。





=======================================

フォーマットが完了しました。

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 光が消えると、そこには私のテセラ君と、黒い塗装が剥がれ落ち、真っ白になったテセラスがいた。


私は、すぐにテセラ君に駆け寄った。


「テセラ君!!!大丈夫!?」


 すると、テセラ君のディスプレイに青い目が写って、合成音声で喋った。


「フォーマットは、正常に完了しました」

「テセラ君!良かった……良かった!!!」

「やったなテセラ!で、一体何をやったんだ?」


 トネールさんの問いに、テセラ君は答えた。


「私と同型のロボットには、メモリーを同期させる装置が用意されていました。私のケーブルを奴のボディに挿して、データの書き換えをした。それだけです」

「そうなんだ、それじゃあこれは……」


 すると、さっきまで黒い姿で暴れていた白いテセラスが再起動した。


キュイイイン……


「あっ……!」

「安心してください、彼は記憶を初期化されました」


 白いテセラスは私を見て合成音声で喋った。


「マスターの容姿、登録完了」


「わっ!これもしかしてこれ、あの時と同じ感じ!?」

「そうですね、まさか初めてテールさんと出会った日をこの目で見る事になろうとは」


 驚く私達を前に、白テセラスが続けて言う。


「あなたの名前を教えて下さい」


「名前……また言わなくっちゃ……私の名前は『テール・オルネシオ』!!!」


ピピッ


「『テール・オルネシオ』登録完了。続けて、私の名前を教えて下さい」


 え?この子に名前を?そうね……じゃあ、こういう名前はどうかな……。


「あなたの名前は『アーセット』!『tesera』を逆から読んで『アーセット』!」


ピピッ


「私の名前は『アーセット』登録完了。テールさん、これからはよろしくお願いします」

「よ、よろしくね、アーセット君!」


 良かった。この名前気に入ってくれて。なんやかんやでこういうのがまた増えちゃった。


「テールさん、私の目的を教えて下さい」

「目的……そうね……じゃあ『私達のお手伝いをしてくれるかしら』!」

「私達のお手伝い……了解しました。具体的に何をすればいいでしょうか」


 すると、テセラ君が、アーセット君に言った。


「この建物を出たら、私の指示に従ってください。あなたでも出来る簡単な事です」


 私達は、テセラ君の案内で要塞の外へと出ていった。アーセット君にも出来る簡単な事とは種族一体、どんな事なんだろう……。

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