第10話 決意から決戦へ

 トネールさんがクラック達の集まっている要塞を突き止め、クラック殲滅のための最後の戦いに行く事になった。テセラ君は重要な役割を果たすために参加する事になり、私はテセラ君の友達だから一緒に行く事にした。作戦決行の日まで、あと一週間。


「いつもの日常のはずでも、大切な日が近付くとなんだか違うよね」

「ええ、ここ最近のリンカーネの人達はいつにも増して働き詰めのようです」

「無理しない範囲で、準備を進めなくちゃね」


 今日はジャンク屋組合からあるものが届く日。何かが遠くから運ばれてこっちへ来る。


「オルネシオさん、これ使えますか!」


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!


 お店の前に運ばれたのは大きなトレーラーの残骸。それと、沢山の機械の部品。


「修理に使えそうな部品は出来る限り集めました!我らも一丸となって修理をお手伝いします!」

「出来そうか、テール」

「お父さん……この大きさ、普通に直したらきっと一週間はかかると思うけど、上手くいけば決行の日までには間に合うと思う」

「残骸の全体をスキャン……私の最適解の設計図を表示します」


 テセラ君は4の目のモニターに修理のための設計図を表示した。ケットさんが生きていた頃は色々な分野でAIが活躍していたみたいで、元のテセラスにも優秀なAIがセットされていた。


「すごい、これならなんとかなりそう。さあ、みんなでこれを直そう!!!」

「 「 「オオオーーーーーーッ!!!」 」 」


 テセラ君の設計図に従い、動力部から乗組員の部屋までしっかりと修復し、決行前日に、ついに完成した。


「運転は、トネールさんにお願いしてもいいかな?」

「俺か。こんなデカブツ、動かすのは初めてだが、アイツラの本拠地に突っ込むならこれでちょうどいい」

「改めまして、皆さん、お疲れ様でした」


 テセラ君がみんなに挨拶した後、トネールさんは言った。


「リンカーネの全住民に告ぐ。これより我らは、クラックとの最後の戦いへ向かう!道中は生きて帰れるか分からない危険なものとなるだろう!だが、これは強制ではない、行きたいと思った人だけがこれに乗って行くんだ!」


 その言葉に、看護師のお母さんは言った。


「危険な道なら、医者を一人用意するべきです。私も共に行きます!」

「セレニテ……!」


 パン屋をやっている幼馴染も。


「僕はみんなの道をパンで支えてあげたい!腹が減っては何も出来ないでしょ!」

「レッくん……!」


 周りの様子を見た後、お父さんも。


「俺は見ての通り戦場には出れないが、機械を直す腕ならある!同行しよう!」


 その姿に、他の人達も。


「俺も行く!少しでも役に立ってみせる!」

「思いつく事なら何でもやる!」

「クラックシャッター続けた意味がようやく報われるならな!」

「みんなの命、テール達にお願いするぜ!」


 勇気ある住民達の声に、私達も決意した。


「みんな、ありがとう……それじゃあ行こう!先祖の罪を償うための最後の戦いへ!!!」


 行くと決意した人達はトレーラーに荷物を積んで、リンカーネに残る人達もしっかりと守りを固めるのであった。


   * * * * * * *


 そして迎えた作戦決行の日。


「みんな、準備はいいかな……」

「今から、とても危険な戦いに行きます……」


 作戦に同意したリンカーネの住民達は、私達が昨日完成させたトレーラーに乗り込んで、今まさに出発しようとしていた。


 乗組員は身内だけでも……


「先祖が犯した罪に、ひとつの決着をつけるんだ!!!」


 冒険心は燃え尽きないジャンク屋、フェール・オルネシオ。


「本作戦中の負傷者は、一人たりとも死なせません!!!」


 慈愛のココロで人を癒やす医師、セレニテ・オルネシオ。


 「うんと塩を効かせたパンを沢山焼くから、チカラを付けてね!!!」


 美味しいパンでみんなを支える、レコルテ・ファーティリティ。


「邪魔する奴らは、俺が破壊シャットしてやるからな!!」


 巨大な銃を持つクラックシャッター、トネール・オウルアイ。


「みんながいるから、私は戦える!!!」


 私自身、テール・オルネシオ。


「では、行きましょう!皆さん!!!」


 そして、本作戦の切り札、テセラ。


「トネールさん!あの場所までお願い!」

「よっしゃ!飛ばすぜーーーー!!!」


ブルォロロロロブゥオオオオオオオオ!!!


 皆を乗せたトレーラーは、決戦の地に向けて力強い音を鳴らして荒野の中を走り始めた。



 朝早くから出発して、数時間かけて、クラックの集う要塞に近付いてきた。遠くから、こちらを砲撃しようとしている……!


ズドン!ズドン!ズドン!


「要塞からの攻撃か!これぐらい十分避けられる!」


 トネールさんの操縦で砲撃を巧みに避けると、前方からバイクに乗ったクラック達が群れをなして走ってきた!重火器を構えながら走っている……!


「各砲座、展開!」


 トネールさんの声に、トレーラーの後ろが開き、機銃を構えたクラックシャッター達がバイクに乗ったクラック達を次々と撃って破壊する。


ドドダン!ドドダン!ドドドダン!!!


 敵のクラックを次々と破壊していくけど、敵の数は一向に減らない。


「それじゃあテセラ君、ちょっと手伝ってくれる?」

「分かりました。みんなを守る事が私の使命です」


 テセラ君はトレーラーの天井を開けてトレーラーの上に立ち、両手をクラック達に向けてビームガンを連射した。


ダダダダダダダダダン!!!!!!


次々と倒れていく敵達。この戦いに、私達の明日がかかっているから、ここで負ける訳にはいかない!


「見えた!あれが奴らの要塞……な!」

「鉄の扉が閉まっている……このままじゃ!」

「トネールさん、テールさん!これも私にお任せ下さい!」


 テセラは鉄の扉の前に飛び出し、レーザーブレードで扉を溶断した。


ズバズバズバズバズバズバァ!!!!!!


 一瞬のうちに、鉄の扉はバラバラになっていた。


「よし!このまま突っ込むぞ!!!」

「テセラ君、行くよ!!!」


ズドオオオオオオオオッ!!!!!!


 轟音と共に鉄の扉を破壊して、要塞内部に突入したトレーラー。


「……これで私達、敵のド真ん中に来ちゃった感じ?」

「俺が無計画でここに来ると思ったか?」


 すると、私達のトレーラーの後ろには……!


「 「 「うおおーーーーーーー!!!」 」 」


 他の集落から来たクラックシャッターの人々が援護のために集まってきた。道中で敵を沢山倒したから、トネールさんが予め召集した味方も沢山来れた。すぐさま内部にも雪崩込んで、要塞内の敵も総崩れになっていく。


「これで敵は完全に包囲されたという事だな」

「やっぱり、トネールさんってすごい!」


 ここまで来れたのも、私には素敵な仲間がいたからこそ。


「武器の補充なら今のうちにやっていけ!」


 ジャンク屋の父はみんなの武装を用意して。


「一撃でも被弾したらこっちに来て!」


 看護師の母は怪我人の治療をして。


「パンは沢山焼けてるからどんどん食べて!」


 パン屋のレッくんは美味しいパンをくれて。


「テール!テセラ!これより俺達で敵本陣に向かうぞ!」


 勇敢なトネールは決意の銃を構えて。


「みんなありがとう……行こう、テセラ君!」

「最後まで、皆さんを守ってみせます!」


 私はテセラ君と共に最後の戦いへの道を向いたのだった。


「ここからは、私も銃を持って戦う。大丈夫、昔から沢山の地雷や不発弾をこれで破壊してたから」

「あれから見違えるほど頼りになったな、お嬢さん」

「では、行きましょう!」

「俺達の銃に続けええええええ!!!!!!」


「 「 「うおおーーーーーーー!!!」 」 」


 私達は要塞内の敵を破竹の勢いで打ち倒して、私とテセラ君とトネールさんは要塞の最深部へと辿り着いた。そこには、大きな扉があった。


「この先に、親玉がいるのね」

「いかにも、ヤバい奴が待ち構えてそうだな」

「……前方に高エネルギー反応!直ちに横に避けて下さい!」


 その言葉に私達は扉の横に飛び込んだ。すると……!


ピュウン……ズバアアアアアアア!!!!!!


 突然、五本のビームが扉を貫通して放たれた。扉の前に立っていたなら、直撃して、分子レベルで分解されていたかもしれない。


「なんなの、あのビームは……!」

「今まで見た事無いヤバさだったな……!」

「私は、このビームを知っています……!そこにいるんですね、私とは別個体のテセラスが……!!!」


扉の向こうには、サイコロの5の目のような模様を向けたロボットがいた。それはこちらに4の目を向けると、赤い瞳をディスプレイに映していた。


「ヨクキタナ……ジャマモノガ…!」


 その姿は、いうなれば真っ黒に染まったテセラ君……いや、テセラスなのであった……。


「テセラスの生き残りが、ここにもいたなんて……!」


 どうやら、これが最後に斃すべき相手……奴を倒す事が出来れば、世界は平和になるのかな……いや、出来る……何故ならテセラ君には、この作戦を成功させるための切り札があるんだから……!

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