第7話 真実から事実へ
私達が発見した謎の建物を調べていると私とテセラ君はこの建物の地下に転落した。トネールさんが私達を探す中、私とテセラ君は最深部で一冊のノートを見つけたのだった。
私とテセラ君は、そのノートを読み始めた。
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当研究所所長ケット・ホワイトポイントだ。この日記を誰かが読んでいるという事は既に戦争が終わって時間が経った頃だろう。ここに私の覚えている限りの全てを記述する。これを読む者が正しい心を持つというのなら、ここに書いてある事を他の者にも教えてくれ。
私は文明繁栄の絶頂時代に生を享けた。技術の進歩と生活の洗練は多くの富を生み出し人々の暮らしを豊かなものにした。私はその技術を用いて人を幸せにする科学者達に多大な憧れを抱いて育った。
私は幼少から四角い形のものに魅了された。特に好きだったのは今となっては時代遅れと言われていた遊び道具の『サイコロ』だった。大きくなったら、このサイコロを進化させた発明品を作るとも豪語したほどだ。
私は学校でロボット工学を貪欲に学び、大学を首席で卒業して、科学者への道を歩む。若い頃は沢山苦労したものだったが今では良き思い出になっている。
私は確実に着実にキャリアを積み重ねて、遂に研究主任にまで上り詰めた。ここから私の夢を今こそ作る時である。新型ロボット開発計画、コードネーム
『テセラス』
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「テセラス!?!?じゃあここにいるテセラ君って……?」
「テールさん、続けて読んでみましょう」
私とテセラ君は突然出てきた『テセラス』という名前に驚きながらも続きを読んだ。
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こうして、私のロボット開発は始まった。サイコロ型の頭部にメインの機能を詰め込みその下には球形の胴体から手足を生やして文字通り『人間のお友達』として作り始めた。サイコロをデザインの基礎として……
1の目には色々記録するメインブレインを
2の目には何でも見透かす高性能センサーを
3の目には闇を照らすライトと3Dカメラを
4の目には感情を映すメインモニターを
5の目にはあっと驚く秘密の機能を
6の目には強力な推進力のジェットを搭載する事にして制作が始まった。
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「この設計、テセラ君とおんなじ……」
「どうやら私はこの、ケット氏とやらに作られた存在だったのですね」
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プロトタイプの完成には5年ほどかかった。これが成功すれば、テセラスは世界中で人間の良きパートナーとなって活躍して私の名前は永遠に語り継がれるだろう。
そう思っていた。だが、現実は非情だった。
プロトタイプの完成間近に、あるニュースがテレビに映った。それは……
私の住む国で、大規模テロ事件が発生した。夜間に行われた式典が突然爆撃されて死者は1万人を超す大惨事となった。その日を境に、この国では毎日のように悲惨な事件や事故が起こるようになり人々の心は疲弊していった。
そんな状況を変えたのが、『R国』と呼ばれる勢力だった。彼らは各地のテロや紛争を鎮圧し、人々はR国を英雄と呼んだ。その流れで私の住む国にあるこの研究所もR国の管理下に置かれる事となり私が開発したテセラスのプロトタイプをR国のお偉方が見た時、運命の歯車は音を立てて狂い出した。
あろう事か、テセラスを軍の主力兵器として量産する計画が始まったのだ。プロトタイプは押収され、そのまま行方知れずとなり、R国の工場では私の設計には無かったはずの『人を傷付ける武器』を搭載した偽りのテセラスが大量生産されて次々と実戦配備されたのだった……!
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「そ、そんな……!」
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テセラスはあらゆる場所で戦果を挙げてR国の主力兵器の座を確固たるものにした。こうして私の住む国も周囲の国も皆R国の属国となったのであった。R国は国に有益なものは取り入れて戦力にして無価値なら
R国の支配が進む中、ついに対抗しうる戦力が姿を表した。それが『L国』だ。奴らもテロや紛争を鎮圧するために強引なやり方で勢力を広めていった者達だ。R国が勢力拡大していく一方でL国も同じように勢力を拡大していた。
やがて、どちらの国も飲み込める国が無くなった後、ついにR国とL国による最終戦争が始まったのだった。
この戦争でもR国の主力は私が設計したテセラスであり、彼らはL国の主力兵器を次々と破壊したが、撃たれてスクラップとなるテセラスも跡を絶たなかった。
本来の目的とは真逆の物となったテセラスを私はこの研究所を拠点に作り続けた。そんな中、恐ろしいニュースが舞い込む。
L国の放った化学ガス兵器によってR国の多くの主要都市が壊滅状態になった。ゆくゆくはここも狙われると悟った私はすぐに10年分の食糧などを重要研究室に詰め込むように指示した。
罪を背負うのは私だけで十分だ。全ての物資がこの部屋に入れられた後、私はこの部屋全てに内側から強固なロックをかけて外部から誰も入れない状態にした。非常階段に繋がる部屋のドアもな。その後私はここから施設全域に放送した。総員、直ちに避難しろと。
その直後、監視カメラのモニターに苦しみ出す研究員の姿があった。おそらくL国のガスがここに注ぎ込まれたのである。
中には仕事を続けたまま倒れる者もいた。ハヤカワの馬鹿者が……避難しろと言ったのに何故仕事を続けるのだ……!本当なら、彼らをテセラスによって
助け出したい……しかし、全てのテセラスは戦場に出され、ここには原型となった無起動モデルしか置いてない。それに出入り口も締め切ったのだからな。
もう外の様子を見る事は無いだろうと私は全てのモニターをシャットダウンした。そして、今君が読んでいるこのノートを書いた後、机にしまったのだ。
全ての役目を終えた今、後は命尽きるのを待つだけとなった。最後に、これを見つけた勇敢な君にお願いする。
最初に書いてあった通りどうか、ここに書いてある事を一人でも多くの人達に教えてやってくれ。そして……
もしもどこかで、まだ動いているテセラスがいたのならば、彼に伝えてくれ。
『お前は人殺しの道具じゃない。人間のお友達になるべき存在だ』
と。
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私とテセラ君……は、ノートを読み終えた。
「そうだったんだ……あれ……テセラ君?」
テセラ君のモニターに映る目は赤く光っていた。私を見ると、こう言った。
「スベテヲ……オモイダシタ……」
「テセラ……君!?」
その声は普段のテセラ君の声じゃなかった。明らかに無機質な喋り方だった。
「ワタシハ……テセラス……ココデツクラレ……タタカイニイッタ……タクサンツクラレタモノノ……ヒトツ……」
今目の前にいるテセラ君……いや……『テセラス』は、憎しみと悲しみを湛えた顔で私を見つめていた……!
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