第6話 潜入から深淵へ

 私とテセラは、リンカーネを離れて新拠点での探索活動をした事により、絶壁の向こうに謎の施設を発見した。


 トンネルが開通するまで休んでから、改めてその施設を探索する事にしたのであった。開通したトンネルを通って、私とテセラ君とトネールさんはこの大きな建物の前に来た。


「こんな大きな建物、リンカーネにも無いよ」

「どうやら大昔の技術で作られたみたいだな。中に何があるかは分からないから慎重にな」

「それでは行きましょう」


 私達は、いよいよ中へと足を踏み入れた。


「すごく埃っぽいね……」

「防塵マスクの着用をおすすめします」

「そうだな、自前のを使おう」

「私も持って来てるよ」


 私とトネールさんは防塵マスクを取り出して着用した。顔全体を覆うので目も守れるし有害な埃をほとんど綺麗にしてくれるの。埃を吸ったら大変だからね。


「それにしても薄暗いな」

「テセラ君、ライト点けてくれる?」

「了解です」


 テセラ君の光のおかげで内部が照らされた。中には埃をかぶった機械が沢山並んでいてベルトコンベアのようなものも確認出来た。


「ここで一体何が作られてたんだろう」

「今も俺達の生活を脅かすクラックどもがここで作られたのなら破壊しなくちゃな」

「今の所その証拠は見当たりませんね」


 今分かっている事は、ここは何かを作ってた工場だったということ事。きっとここでは大昔の戦争に関する何かを作っていたという事なのかしら。


「だいぶ探索したから、そろそろ戻ろうか」

「そうですね、この施設のデータも十分記録出来ました」

「何事も無くて良かったな……」


ボコッ


 突然、私とテセラ君の足元がへこんだ。


ドカラガラアアアッ!!!


「きゃああああああああっ!!!」


 突然床が崩れて私とテセラ君は空いた穴に

吸い込まれるように落ちていった!!!


「テールウウウ!!!テセラアアア!!!」


 穴に向かって叫ぶトネールさん。


 しばらくすると……


「私達は大丈夫だよー。テセラ君のジェットのおかげで地面に激突はしなかったよー」

「このまま転落したら高確率で大変な事になる所でした」

「そ、そうなのか……」


 私達が無事な事を聞いて胸を撫で下ろすトネールさん。テセラ君が咄嗟に私を掴んでジェット噴射した事で最悪の事態を避ける事が出来た。


「しかし現在の状況を分析するとこのまま飛び上がって戻るのは困難です。私達はこのままひとまず一番下まで降りて内部を調べてみます」

「トネールさんは別ルートからここに来てくれるかな。私達、ここを調べるから!」

「ああ、分かった!必ず助けに行くからな!」


 テセラ君は私をゆっくり下降させて地底にふわっと降り立った。ここからはテセラ君の光だけが頼みの綱。私とテセラ君は闇の回廊を進み始めた。


「この建物が地下にも広がってるだなんて。テセラ君、ちょっと無茶を言うけどライトの出力を上げてくれるかな」

「了解です、テールさん。これが私のライトで照らせる最大出力です」

「ありがとう、テセラ君。それじゃあここから私達の冒険を始めよう」


 いつもの気持ちを忘れないように私達は進み始めた。廊下を進み、部屋を見つけて中に入って調べてみた。


「沢山のコンピューターが並んでいる。」

「どれも旧世代のテクノロジーのようですね」

「リンカーネでもこれほどのものはまだ出来てないからね。連絡用の無線機もまだまだノイズが混ざっているから……キャアッ!!!」


 私はコンピューターのキーボードの上に人らしき者が顔をうずめているのを見つけた。白衣を着ているが、既に全身白骨化していた。


「ここで仕事をしたまま事切れたのかな……」

「そうらしいですね……おや」

「どうしたの?テセラ君」

「テールさん、彼らの胸元にはIDカードが付いていました。何故かスキャンする事が出来まして、こちらがデータとなります」


 テセラ君の4の目のモニターには白骨死体に付いてたIDカードのデータが表示されていた。


「R国研究員、ハヤカワ・ハヤイカワ……」

「それが彼の素性だったのですね……」


 テセラ君が読み込んだデータには彼らの名前や身分が記録されていた。お墓を立てる時は彼らの名前を刻まなくちゃ。彼らは確かに生きていた証を残すためにも。


 他の部屋を調べても、同じような白骨死体は何体か見つかった。ずっとここで仕事を辞める事も出来ずにいるのはかわいそう。一段落したら、彼らを埋葬して安らかな眠りを与えてあげたいな。


 こうして、数十名ほどの犠牲者の名前をテセラ君は沢山記録した。


「廊下にも、白骨死体が沢山あったね……」

「逃げる途中のようにも思えますが……前方に大きな鉄の扉を発見」


 私達はいよいよこの施設の最深部と思われる重要研究室の前に辿り着きました。


「でも、全然開かない……なんて固いの……」

「テールさん、離れて下さい」


ブゥン!!!


 テセラ君は右手からレーザーブレードを起動して、ドアを焼き切った。


ジュイイイイイズバッ!!!


「ここが最深部の重要研究室……」

「また白骨死体が見つかりました。調べます」


 その死体から読み込んだデータは……


「R国研究主任、当研究所所長ケット・ホワイトポイント」

「この人が一番偉い人だったのかな……」

「そうらしいですね……あ、あれは!?」

「な、何があったの!?」


 私はテセラ君の見ている方向に顔を向けた。そこには、テセラ君と同じ形のロボットが何体も並んでいた……!


「こ、これって……テセラ君……なの?しかも、こんなに沢山……!」

「……検索機能に異常発生!システム修復を試みます。しばらくお待ち下さい……」


 テセラ君でもビックリするほどの事態。


「こういう時は私がちゃんとしなくちゃ!」


 私は一人でこの部屋を調べた。怪しい所が無いか必死に調べた。色々な引き出しを引っ張ると出てくるのはテセラ君そっくりなロボットの設計図や既に食べれなくなった保存食などが出てきた。


「これがケットさんの机……これって!」


 研究所長のケットさんの机の引き出しから一冊のノートを見つけて私はテセラ君の所に戻ってきた。


「テセラ君、大丈夫?」

「はい、何とか修復は出来ました。ではそのノートを見てみましょう……」


 こうして、私とテセラ君はこの建物の真実に繋がるノートのページを開きはじめた……。


 一方で、トネールさんは。


「思ったより広いなここは……っと、これは非常用階段?ここを降りればテール達が見つかるって事だよな!」

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