Episode2:テセラの秘密

第5話 遠征から発見へ

 私はテール・オルネシオ。


 リンカーネの町のジャンク屋兼冒険家として大昔の戦争から長い年月を経て、復興しつつある世界を生きているの。


 ある日、私は冒険中に不思議なロボットを発掘して修復した。動き出したロボットに私は『テセラ』と名前を付けて一緒に過ごす事にした。


 テセラ君は目には見えない危険物をセンサーで察知して私に知らせてくれるし、もしも私にピンチが迫ったら両手が武器になり敵を打ち砕く事だってあった。


 そんなテセラ君の能力だけど、私にはまだまだ分からない事だらけ。今日はどんな冒険が私達を待っているのかな。


   * * * * * * *


 トネール達と一緒にクラック達と戦ってから一ヶ月ぐらい経ったある日。


 私とテセラ君は今日も周辺を冒険して素材の回収と地雷撤去の日々を送っていた。


 いつものように仕事を終えて家に帰ると父のフェールが迎えてくれる。


「ただいま、お父さん」

「お帰りテール、今日も良く仕事をしたな……と言いたい所だが、先程、テール宛に手紙が届いてな」

「手紙……何だろう」


 私はすぐさま父から受け取った手紙を見た。


―――――――――――――――――――――


 テールへ

俺だ、トネール・オウルアイだ。


 先日のクラック殲滅作戦でお前とテセラはすごい活躍をしたな。その実力を見込んで頼みたい事がある。それは、整備が完了した俺達の新しい拠点に留まり彼らの調査を手伝って欲しい。報酬も相応の額を出す。明日の朝、迎えに行くから返事はその時頼む。当たり前だが、強制ではないからな。行きたいと思う場合のみ請け負うように。


―――――――――――――――――――――


「トネールさん達が手に入れた拠点、完成していたんだ」

「行くかどうかは、テール自身が決めるんだ。俺からは何も言えない。ただ、当たり前だが、ちゃんとここには帰って来るように」

「うん、分かってるよ」


 私は明日の支度をして眠った。


   * * * * * * *


 次の日の朝、トネールさんが私の店に来た。


「テールよ、手紙は読んだな」

「読んだし、テセラと一緒ならどこにでも」

「私達にお任せ下さい」


 私の言葉を聞いたトネールは、お父さんにこう言った。


「また、娘を預かります。今回は長めの期間となりますが、必ずテセラ共々お返しします」

「よろしい。ではテールとテセラの事をよろしく頼む」


 こうして私は生まれ育ったジャンク屋からしばらくの間離れる事になった。出発の前に、レッくん……レコルテのパン屋でパンとビスケットを沢山買った。


「こんなに沢山買ってどこへ行くんだい」

「トネールさん達のお手伝いをするの。でも必ずここに帰って来るからね」

「分かった。僕はここで美味しいパンを沢山作って待ってるからね」


 レッくんにも挨拶を済ませて、私とテセラはトネールさんが手配したトラックに乗って先日の洞窟に向かって出発した。



「さあ、着いたぞ」

「すごいね。沢山の人達が働いている」

「この間までの様子からは想像出来ません」


 私とテセラは当分の間、かつてクラック達が住み着いていた洞窟を再利用した拠点で探索活動を行う事になった。お父さんとレッくんも心配していたけど私とテセラは大丈夫と胸を張ってリンカーネの町を出発したの。


「ここがお前達の持ち場だ。俺は周囲の警備をしている」

「分かったよ。それじゃあ始めるよ、テセラ君」

「トネールさんもお気を付けて」


 そんなわけで、私とテセラは新たな場所で、お仕事を始める事になったんだ。


「リンカーネの周りじゃ見かけない鉱物だ」

「爆発物の反応あり。以前のクラック達が仕掛けたものと思われます」


 私とテセラのお仕事は、いつものように周囲の素材の回収と危険物の撤去。拠点に住み込みで働く人達と同じようにこの辺りも暮らしやすくするために頑張らなくっちゃ!


「これでレッくんのパンは最後かあ」

「ビスケットはまだありますね。大切に食べましょう」


 拠点に戻れば食料もあるし寝る所もあってついこの間まで怖いクラックがいたとは思えない程快適に暮らせるようになっていた。そろそろレッくんのパンが食べたくなるけどもうしばらくここの探索は続きそうだ。


「また知らない鉱物!」

「大きめの爆発物です!」


 私とテセラは毎日のように周辺から様々な素材を入手した。手に入れた素材の多くがリンカーネに運ばれみんなの役に立っていると思うと私とテセラも気合が入る。


「君がテールと相棒のテセラか。活躍はトネール君から沢山聞いているよ」

「えっと、こんな素晴らしいお仕事が出来て私達、とっても嬉しいです!」

「拠点の住人からも注目されていますね。この調子で頑張りましょう」


 現地の作業員達も私達の事を気に入っている。この拠点のリーダーはトネールとは長い間盟友同士でこの間の私達の活躍にも感心しているみたい。


「気が付いたらもう一週間経っちゃったね」

「さて、今日も頑張りましょう」


 そんなわけで、今日も今日とて私とテセラの冒険は続いている。


   * * * * * * *


 一週間かけて、私達は自力で調査出来る範囲をほぼ調べ尽くしたけど、ここから先には大きな断崖絶壁が私達の行く手を阻んでいた。私とテセラは絶壁を眺めていた。


「大きな高い崖の壁。この向こうには一体何があるのかな」


 するとテセラが、思わぬ事を言った。


「テールさん、私を背負って下さい」

「え、背負うって……?」

「私が即席のジェットになる事でテールさんは高く飛べるようになるでしょう」


 私は言われるがままにテセラ君をリュックのように背負った。するとテセラ君のサイコロの6の目の足裏から強力なブーストが噴射して……


ズビュウウウウウン!!!


「わあああああっ!!!」


 私はテセラ君と一緒に空を飛んでいた。空を飛ぶ技術なんてずっと昔に失われて久しいけど、私が多分この時代で初めて空を飛んだ人間になったってコト!?!?


「ねえ!これ大丈夫なの!?」

「姿勢制御は私が行います。落ち着いて行きたい方向に体重をかけて下さい」

「わ、分かった!」


 私はテセラの言う通りに体重をかけて飛行し断崖絶壁を飛び越えた。


「絶壁の向こうに何かが見える……」

「スキャンした結果、あの辺りが

安全そうですね、降りましょう」


 絶壁の向こうには、建物らしいのが見えた。私とテセラ君は建物の近くに降り立った。


「まずはこの辺りの危険物を可能な範囲で処理しましょう」

「分かったわ。サーチよろしくね」


 私はテセラ君の言う通り危険物を撤去した。


 「この辺りをカメラで記録します。映像をリーダーさんに見せましょう」


 テセラ君はサイコロの3の目を正面に向けて周囲の様子をキャプチャーした。テセラ君のサイコロ頭の3の目は高性能3Dカメラとライトの機能を持っていて首の正面のメインカメラよりも美麗で繊細な映像を記録出来るようになっている。


「あの建物、何があるんだろうね」

「今はひとまず得られたデータを拠点に持ち帰りましょう」

「そうね。でもまたここから飛ぶの?」

「はい。このジェット噴射は大量のエネルギーを消耗しますが、計算によると帰りの分のエネルギーも余裕ありです」

「それじゃあまたよろしくね」


 私は再びテセラ君を背負うと、また飛び上がって絶壁を超えて拠点に戻ってきた。早速、この拠点のリーダーさんに今回得られた絶壁の向こうの情報を見せた。


「ほう、この施設にはきっと何かがある。しかし今のままでは君とテセラしかここには来れない」

「そうですよね……」

「なんとかならないでしょうか」


 するとリーダーはこう提案した。


「すぐさま、土木工事班を呼び出してトンネルを開通させよう。テールとテセラは一旦リンカーネに戻って休むといい。開通したらまた来てくれるかな」

「ありがとうございます!」

「ここ最近働き詰めでしたので助かります」


 私とテセラ君はもう一度トラックに乗ってリンカーネに戻ってきた。


   * * * * * * *


 束の間の休息でもテセラ君のメンテナンスを欠かさず行った。お父さんやレッくんにも向こうでのお仕事の話を沢山した。


 ……一週間かかってトンネルは開通した。私とテセラはまたトラックに乗ってもう一度拠点に向けて出発した。



 拠点に着くと、トネールさんが待っていて、土木工事班が開通させたトンネルへ案内した。トンネルの中は案外明るくて歩きやすかった。その先には、私とテセラが見つけた建物が、まるで私達を待っていたように佇んでいた。


「…………」

「あれ?テセラ君、目が一瞬……」

「何でもありません。さあ行きましょう」

「今回は俺も護衛しよう。頼むぜ二人共」


 こうして、私とテセラ君とトネールさんは、謎の施設の中へと潜入したのであった。


 この先で、目を覆いたくなる真実を知る事になるなんて、今の私には想像出来なかった。

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