第4話 危険から君を守るため

 私とテセラ君に大きな銃の点検を依頼した、その銃を背負った大男は語り出した。


「俺の名はトネール・オウルアイ。クラックシャッターをやっている」

「クラックシャッター?」

「旧時代に作られた機械が時として人間に襲いかかる事がある。俺はそいつらを1体でも多く始末してこんな危険なモノ作った先祖の尻拭いをしているんだ」

「クラックシャッター……それであんなに大きい銃を持っていたのね」

「それは大変そうですね」


 テセラ君も興味深く話を聞いていた。


「こいつは噂のテールの相棒ってやつか」

「テセラ君だよ。とっても良い子なの」

「トネールさんがこれから行く場所について、もっと教えてくれるでしょうか」


 すると、トネールさんはこれから探索する場所の話をし始めた。


「リンカーネからずっと南にクラックがうごめく洞窟が見つかった。この辺りを探索していた冒険家が大量のクラックを発見して、奴らに気付かれ追いかけられながらも俺に情報をくれた」

「そうなのね」

「しかしここを落とせれば周囲の安全も保証されるという事だ。既に他のシャッター数名にも話はした」

「何やら大規模な作戦になりそうですね」

「そこでテールとテセラには俺達のサポートに回ってもらう。戦利品の回収とナビゲーションが任務だ」

「テセラ君、出来そう?」

「可能な限り、お手伝いしましょう」

「ありがとうテセラ君!私も回収作業なら沢山やってみせるからね!」


 するとお父さんがその部屋に入ってきた。


「話は聞いた。テールは本当にこの仕事を請け負うのか?」

「そうだよ。テセラ君と、トネールさんと一緒にクラックのいる洞窟へ……」

「そうなのか……実は俺はクラックによって膝を撃たれて再起不能となった。俺を撃った奴はすぐさま始末されたがこの脚はもう使い物には……」

「お父さん……」

「今度の仕事は膝だけじゃ済まない仕事になるかもしれないから、娘とその相棒のチカラを借りたくて来たんだ。必ずこの家に帰すと約束する。」

「トネール、俺の娘をよろしく頼むぞ」

「ああ、任せておけ」

「それじゃあ、行ってくるね」

「この私が皆さんをお守りします」


 お父さんにも話を着けて、レッくんのパンも多めに買って、私達はクラックの棲む洞窟へ向かった。



 トラックの後部に乗って私達は、クラックの洞窟から少し離れた所に着いた。


「あそこが先日見つかった奴らの巣窟だ」

「見張りのクラックが2体いますね」

「奴らどうやら定時で交代するらしい」


 私達の見ている先で無機質な人型機械が、不気味な雰囲気で洞窟入口を見張っていた。私の隣ではトネールさんが先程私達が点検した大きな銃を構えていた。


 すると、洞窟入口から別のクラックが出てきた。……すると!!!


ドシュン!!ドシュン!!ドシュン!!


 トネールさんの銃から放たれた3発の銃弾がクラックを破壊シャットした。


 すると、音に気付いたクラックが慌てた様子で外に出てきた所を!!!


ドシュン!!ドシュン!!


 穴から出てきたクラックも 同じように破壊した。穴から出てきた数機はトネールの銃弾の前に斃れた。


「よしお前ら、行くぞお!!!」


「うおおおおおおっ!!!」


「うおーっ!」


 勇敢なクラックシャッター達と共に私もテセラ君と一緒に洞窟へ突入した。私の任務は破壊したクラックの残骸回収と、テセラ君の解析によるシャッターの支援。


 私はシャッターが破壊したクラックの残骸を拾いながらも、洞窟を進んでいく。


「すごい……役に立ちそうなパーツが沢山!」

「ですね……頭上に無人機銃!!!」


ドダダダンッ!!!


 テセラ君のビームガンが無人機銃を破壊。撃たれる前に撃ったのだ。


「すごいよ……テセラ君は」

「テールさんは必ずお守ります」


 一方でトネールさんは……洞窟の奥でクラックが自らを生産している工場を見つけたのであった。


「ここが奴らを作る工場か。自分で自分を作り出すとはな……。こんな奴らが二度と作られてはいけないからな!!!」


 手榴弾のピンを抜き、工場に投げ込む。


ドッカアアアアアン!!!!!!


 工場は派手に吹き飛ばされた。


「お前ら、引き返すぞ!!!」


 トネールさんの言葉に従い、私達は洞窟の外へと脱出した。


「今日はちょっと拾いすぎたかも」

「人々の安心に繋がればいいですね」


 やっと出口に着いた所で、何かが私の前に飛んできた。


ドサッ!


 それは負傷したシャッターの1人だった。


「大丈夫!?」

「く……アイツ……つええ……」


 その目の前には、赤く錆びたクラックが、仲間を破壊された怒りをたたえて立ちはだかっていた。


「テール、大丈夫か!」

「ひとりケガしちゃった!今手当てする!」

「ああ……てか、アイツは……!」


 トネールは目の前のクラックに 、ハッキリと見覚えがあった。


「アイツは、ガキだった俺の家に上がって家を破壊した奴らだ!!!」

「ええっ!?」

「ここで会ったが何年目か忘れたけど!奴は俺が仕留めてやる!!!」


ドシュン!!ドシュン!!ドシュン!!


 トネールさんは銃を構え撃ちまくった。けどボスクラックは軽々と避けてしまう。そして一気にトネールさんの前に!


「俺が銃だけだと思ったか!!!これが俺の本命なのでね!!!」


 トネールさんはおもむろにナイフを取り出した。まるで『ニホントー』と呼ばれた剣のようなナイフだった。


「これを喰らええええええ!!!」


ズバブゥウウウウウン!!!


 ナイフはボスクラックの左腕を切断。だが斃すまでには至らない。


ゴオオ!!!ボコッ!!!


「ゴフウッ!!!」


 右腕で殴られ吹き飛ぶトネールさん。ナイフも飛ばされ地面に刺さった。


「トネールさん!!!」


 すると、ボスクラックは私を見て私に急に迫ってきた!!!右腕の鋭いカギ爪が私に迫る……!!!


「い、イヤアアアアアアアア!!!」


「ピピピピ……ピィーーーーー!!!」


 すると、テセラ君の目がまた赤く光る。すぐに私の前に立つと!!!


シュビィイイイイン!!!


 ビームガンの穴から、レーザーブレードが発生した。そして!


ズバズバズバズバズバズバァ!!!!!!


 一瞬のうちに、ボスクラックはバラバラになっていた。


「テセラ君……また、目が赤く光って……」

「…………ッ」


 するとテセラ君はエネルギーが切れて、そのままバタッと倒れてしまった。


「アイツが……一体誰がどうやって……」


 トネールさんが起き上がった。一方でテセラ君がバラバラにしたボスクラックは、頭だけで動こうとしていた。


ガ……ガガ……


「コイツは俺が、トドメを刺す!!!」


ドシュガッ!!!!!!


 トネールさんは、その大きな足で、ボスクラックの頭を粉砕した。その表情には、大きな満足感があった。


「これで俺は、人生の目標のひとつを達成したって訳だ」

「お、お疲れ様です……」


 こうして私達はトラックに乗って、リンカーネの町へと帰っていったのでした。


   * * * * * * *


 リンカーネの病院では、今回の戦いで負傷したシャッター達の治療が行われた。私はトネールさんの様子を見てあげた。


「なんか、大変な1日だった。」

「悪ぃな、危険な事に巻き込んじまって」

「でもこうして生きて戻れて良かったよ。それで、あの洞窟はこの後どうするの?」

「俺達シャッターの中継基地として利用するつもりだ。ここを足場に活動範囲を増やしていかないとな。それにしてもアイツは誰がどうやってバラバラにしたんだ?」

「テセラ君が急に私の前に出て、手から剣のような光を放って……」

「テールもテールで、とんでもないものを発掘しちゃったみたいだな」

「今は私の家で充電中」


 トネールさんは心配そうな表情をした。


「テセラというロボットも、もしかしたら俺達に刃向かうクラックになる可能性が無いとは言いきれない。もしそんな時テールならどうするんだ?」


 私はその問いにこう答えた。


「テセラは怖い奴になんかならないよ。私が優しく接していれば悪い事はしない。やっちゃダメな事はちゃんと注意もするし、小さな失敗も許してあげているよ」

「そうなのか」

「もしテセラが大きな間違いを犯しても、私自身が責任を取る。だからこれからもよろしくお願いするね」

「これは、良い相棒同士になれるな」


 トネールさんの部屋に看護師が来た。この人はセレニテ・オルネシオ。私のお母さん。


「お怪我は一週間で回復出来そうです」

「おおそうかい。それは良かったぜ」

「お母さんに診てもらった患者さんはたちまち元気になれるんだって」

「私も看護師として人の生き死にを沢山見てきました。けどそれが先祖の罪を浄化出来るのなら今後も続けていきます」

「他に負傷したシャッターはどうしてる?」

「お怪我の程度は色々ありますけど全員大事には至らないでしょう」

「本当に、ありがとうだな」

「トネールさん、ゆっくり休んでてね」

「テールもご無理はなさらないで下さい」


 私は家に帰り今回の成果を父に見せた。


「こんなに沢山の報酬、家の設備全て新調してもお釣りが出るほどだな」

「でも今日の仕事、正直怖かった。もしテセラ君がいなかったら……私もトネールさんもここに帰って来れなかったのかな……」

「仕事の結果がどうあれ、俺はテールがここに帰って来れるだけで十分だ。これからも、自分の身は大切にするんだ」

「うん、大切にするからね」


 私は寝る前にテセラ君の様子を見た。テセラ君は充電中、腕と脚と胴体を収納してサイコロ型の形態を取っている。


「テセラ君、起きてる?」

「テールさんですね。まだ充電中ですがこうしてお話する事は出来ます」

「今日もまた、誰かに身体を乗っ取られた感じだったの?」

「はい……今回もテールを守る手段を考えた時に身体が突然乗っ取られた感じでした。その時の事は覚えてません」

「それで、今度は手からビーーーッて光を出したんだよね。」

「どうやらこのマニュピレーターは私が考えていた以上に便利です。これからもテールの役に立つ事が出来れば私はそれで満足です」

「それじゃあ、明日も一緒に冒険について行ってくれるかな」

「もちろんです」

「それじゃあ、おやすみ」

「おやすみなさい」


 私は家の布団で眠りについた。


   * * * * * * *


 次の日の朝。


「テセラ君、あっちの廃墟には見た事もない植物が生えているみたい!」

「それは興味深いです。データベースを充実させれば未来永劫沢山の人の役に立てるでしょう!」


 澄み渡る青空を見上げて、私は言った。


「さあ今日も冒険に、出発だ!!!」


 私とテセラ君は共に手を繋いで。


 荒廃から蘇っていく世界を冒険する。


 ずっと先の未来の時代。


 もうすぐ始まる世界のお話。


to be continued.

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