第3話 友達から相棒へ

 テセラが起動して、一週間が経過した。


 私はテセラ君に色々なお手伝いを教えてあげたり、比較的安全なエリアへ一緒にお散歩をしたりして過ごした。


 結果的に収益はいつもより減っちゃった。けどこれも将来テセラ君が役に立つため。


「おはよう、お父さん」

「フェールさん、おはようございます」

「テール、テセラ、おはよう」


 お父さんもテセラ君を快く家族として見てくれている。嬉しい。


「今日はどこへ行くんだ?」

「今日はもう少し遠くへ行こうと思うの。テセラ君が早く仕事を覚えられるように」

「私も、テールとのお散歩は楽しいです」

「そうか、だがこれだけは覚えてくれるか?お散歩と冒険は全く違う。危険な所を歩く時は、僅かな判断の遅れが命取りになる場合もある。忘れるなよ」

「了解しました」

「お父さんもありがとう。それじゃあ行ってくるね!」


 私とテセラ君は家を出発して、まずはレコルテ…レッくんのパン屋さんへ行った。


「いらっしゃいテールちゃん!今日も美味しく出来たよ!」

「今日もいつものよろしくね」

「テセラとの散歩の時も買ってくれるのは嬉しいけど、仕事はちゃんとしてる?」

「うん、今日はテセラに冒険の事を教えてあげようと思うの」

「そうなんだ。僕みたいに臆病な性格じゃなければいいんだけど」

「初めての冒険、楽しみです。テールさん、早く行きましょう」

「その様子なら大丈夫そうだね。まるで友達同士みたい」

「テセラ君が早く行きたがってるから、今日はもうこの辺にしておくね、じゃっ!」


 私とテセラはレッくんのパンと共に、リンカーネに比較的近い廃墟へ行った。私とテセラ君は友達同士のような関係で、お互いを知るために接しているの。傍から見るとちょっと珍しいんだけどね。



 ここは新米冒険家の訓練にも使われている練習用の廃墟。定期的に有志の冒険家が手頃な素材を隠して、これを見つける事で冒険家に必要な技能を鍛える事が出来る。


「あの瓦礫の下に鉱石の反応アリ」

「わあ!本当だ!テセラ君はすごいね!」

「いえ、このセンサーのおかげです」


 テセラ君の頭の左側面にあるサイコロの2の目の部分にはメインセンサーとサブセンサーが付いている。上の方にはアンテナがあって、通信電波を傍受したり、下のサブセンサーを人や物に向けると内部をスキャンして異物などをチェックする事が出来るの。


「そのチカラがあれば、地雷や不発弾も簡単に見つけられるかな」

「了解です。地表をサーチ中。練習用地雷を複数確認」


 訓練所にも本物の現場を想定して沢山の地雷が埋まっている。さすがに身体を吹き飛ばす程の威力では無く風船が割れる程度の衝撃だけどね。私も訓練していた頃はうっかり踏んでビックリしちゃったな。もしこれが本物だったら……ああ怖い。


「それじゃあ、安全に処理しなきゃね」


 私は地雷処理用の拳銃を構え、テセラ君が見つけた地雷を撃った。


パァン!!!パァン!!!パァン!!!


「お見事です。」

「そうだ、明日テセラ君を見つけた廃墟に行ってみようよ。沢山地雷を撤去すれば多くの冒険家の助けになると思うから!」

「了解しました」


 私とテセラ君は帰宅した後、地雷撤去作業の準備をして明日に備えた。


   * * * * * * *


 次の日の朝。テセラ君と出会った廃墟で、私達の地雷撤去作業が始まった。立ち入りをためらうような場所も念入りにサーチしてもらった。


「前方に地雷確認!」


バァン!!!


「さらに2つ確認!」


バァン!!!バァン!!!


「前方に大きな不発弾!」

「これは私だけじゃ処理出来ないから、業者さんにお願いして撤去してもらうね」

「了解です」

「ここには目印を付けておこう」


 こんな感じで地雷撤去の作業は良い感じに出来たのだった。これでここを訪れる人も安全に探索出来て、ゆくゆくはここを緑ある土地に出来たらもっと頑張りたくなっちゃうよね。


「さて、ちょっと休憩にするか」


 廃ビルの陰に着くと、私はバッグからレッくんのパンと合成ミルクを取り出して食事にした。この合成ミルクというのは、生き物の骨をすり潰した粉を水で溶かしたもの。正直あんまり美味しくないんだけど、レッくんのパンが口直しになるから何とか飲めるんだけどね。


「どこかで天然モノのミルクが飲める所があるといいのになあ……」

「天然モノのミルクですか。リンカーネの町にはミルクを出す家畜はいませんね。ミルクを出す生物……人間以外にもいるのでしょうか」

「昔は沢山いたらしいんだけどね。生態系も取り返しがつかない程破壊された今はまるで伝説のように扱われている」


 そんな話をしながら食事をしてると……


グラグラグラ……ガラッ!!!


 廃ビルの壁が崩れて、私目掛けて落ちてきた!!!


「キャァァッ!!!」


 私はあわててしゃがみ込んだ。


「……ピーーーーー」


 すると、テセラ君の目が赤く光った。テセラ君は右手を落ちてきた瓦礫に向けた。そして……!!!


ダダダダダダダダダン!!!!!!


 テセラ君の右手から、強力なビームが何発も放たれた。大量のビームを浴びた瓦礫はあっという間に木っ端微塵となり、私の頭上には埃だけが降り注いだ。


「テセラ君……今の何……?」

「……ピピッ」


 私と目が合ったテセラ君は、元の青い目に戻りこう言った。


「テールさんを助ける方法を考えたら突然身体を何者かに乗っ取られたかのように動かされました」

「それで、手から凄いのがババーンと……」

「どうやら私のこの手にはビームガンが内蔵されていますね。出力を変えれば標的ターゲットに合わせた対応も出来そうです」

「……」

「どうしましたか、テールさん」

「テセラ君……君は……!」

「!?」


バッ


「本当にすごいよ!!!」


 私は思わずテセラ君に抱きついた。


「な、何をするのですか!」

「そのチカラがあれば、テセラ君は私達を危険から守ってくれるんだから!」

「そ、それもそうですね」

「これからもよろしくね。相棒」

「相棒ですか。悪くありませんね」


 そんな訳で、今日はテセラ君の秘められたチカラを知ったのでした。あの後業者さんが不発弾を丁寧に解体して、素材は爆薬以外は家のジャンク屋に破格で卸してくれたの。目視で見つからない不発弾を見つけたお礼だって。


 おかげで今日の夕飯はちょっとだけ豪華なものが食べれた。テセラ君と一緒なら、私の夢見た緑いっぱいの世界も実現出来るかも。


   * * * * * * *


 それから数日後。ジャンク屋にあるお客さんがやって来た。


「いらっしゃいませー」

「ここがテールのいるジャンク屋か。今日は俺の相棒の点検を頼むぜ」


 テールのいるジャンク屋かあ。確かにちょっとは有名になれたみたい。なんて少し思いながらも、接客しなくちゃ。そのお客さんは、2mほどの身長で、背中に身の丈以上の銃を背負っていた。


「相棒って……それ、銃だよね」

「ああそうだ。この後かなりヤバい仕事を受けなきゃならないからな」


 大型銃の点検だなんて、初めての事だけど私にも出来るかな……。


「内部をスキャン。この辺りに異常発見」

「そっか、私にはテセラ君がいるからね」


 テセラ君のお陰で首尾よく銃を点検して、短時間で修理する事が出来た。


「これが点検のお代だ」

「ご利用ありがとうございます」

「それとテールを冒険家と見込んでもうひとつ頼みがある」

「何でしょうか」

「俺と一緒に探索して欲しい所がある」


 探索して欲しい所って……?

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