第3話 友達から相棒へ

 テセラが起動して、一週間が経過した。


 私はテセラ君に色々なお手伝いを

教えてあげたり、比較的安全なエリアへ

一緒にお散歩をしたりして過ごした。


 結果的に収益はいつもより減っちゃった。

けどこれも将来テセラ君が役に立つため。


「おはよう、お父さん」

「フェールさん、おはようございます」

「テール、テセラ、おはよう」


 お父さんもテセラ君を快く家族として

見てくれている。嬉しい。


「今日はどこへ行くんだ?」

「今日はもう少し遠くへ行こうと思うの。

テセラ君が早く仕事を覚えられるように」

「私も、テールとのお散歩は楽しいです」

「そうか、これだけは覚えてくれるか?

お散歩と冒険は全く違う。

危険な所を歩く時は、僅かな判断の遅れが

命取りになる場合もある。忘れるなよ」

「了解しました」

「お父さんもありがとう。

それじゃあ行ってくるね!」


 私とテセラ君は家を出発して、まずは

レコルテ…レッくんのパン屋さんへ行った。


「いらっしゃいテールちゃん!

今日も美味しく出来たよ!」

「今日もいつものよろしくね」

「テセラとの散歩の時も買ってくれるのは

嬉しいけど、仕事はちゃんとしてる?」

「うん、今日はテセラに冒険の事を

教えてあげようと思うの」

「そうなんだ。僕みたいに臆病な性格じゃ

なければいいんだけど」

「初めての冒険、楽しみです。

テールさん、早く行きましょう」

「その様子なら大丈夫そうだね。

まるで友達同士みたい」

「テセラ君が早く行きたがってるから

今日はもうこの辺にしておくね、じゃっ!」


 私とテセラはレッくんのパンと共に

リンカーネに比較的近い廃墟へ行った。

私とテセラ君は友達同士のような関係で

お互いを知るために接しているの。

傍から見るとちょっと珍しいんだけどね。


   * * * * * * *


 ここは新米冒険家の訓練にも使われている

練習用の廃墟。定期的に有志の冒険家が

手頃な素材を隠して、これを見つける事で

冒険家に必要な技能を鍛える事が出来る。


「あの瓦礫の下に鉱石の反応アリ」

「わあ!本当だ!テセラ君はすごいね!」

「いえ、このセンサーのおかげです」


 テセラ君の頭の左側面にある

サイコロの2の目の部分にはメインセンサー

とサブセンサーが付いている。

上の方にはアンテナがあって、通信電波を

傍受したり、下のサブセンサーを人や物に

向けると内部をスキャンして異物などを

チェックする事が出来るの。


「そのチカラがあれば、地雷や不発弾も

簡単に見つけられるかな」

「了解です。地表をサーチ中。

練習用地雷を複数確認」


 訓練所にも本物の現場を想定して

沢山の地雷が埋まっている。さすがに

身体を吹き飛ばす程の威力では無く

風船が割れる程度の衝撃だけどね。

私も訓練していた頃はうっかり踏んで

ビックリしちゃったな。

もしこれが本物だったら……ああ怖い。


「それじゃあ、安全に処理しなきゃね」


 私は地雷処理用の拳銃を構え、テセラ君が

見つけた地雷を撃った。


パァン!!!パァン!!!パァン!!!


「お見事です。」

「そうだ、明日テセラ君を見つけた廃墟に

行ってみようよ。沢山地雷を撤去すれば

多くの冒険家の助けになると思うから!」

「了解しました」


 私とテセラ君は帰宅した後

地雷撤去作業の準備をして明日に備えた。


   * * * * * * *


 次の日の朝。

テセラと出会った廃墟で

私達の地雷撤去作業が始まった。

立ち入りをためらうような場所も念入りに

サーチしてもらった。


「前方に地雷確認!」


バァン!!!


「さらに2つ確認!」


バァン!!!バァン!!!


「前方に大きな不発弾!」

「これは私だけじゃ処理出来ないから

業者さんにお願いして撤去してもらうね」

「了解です」

「ここには目印を付けておこう」


 こんな感じで地雷撤去の作業は

良い感じに出来たのだった。

これでここを訪れる人も安全に探索出来て

ゆくゆくはここを緑ある土地に出来たら

もっと頑張りたくなっちゃうよね。


「さて、ちょっと休憩にするか」


 廃ビルの陰に着くと

私はバッグからレッくんのパンと

合成ミルクを取り出して食事にした。

この合成ミルクというのは、生き物の骨を

すり潰した粉を水で溶かしたもの。

正直あんまり美味しくないんだけど

レッくんのパンが口直しになるから

何とか飲めるんだけどね。


「どこかで天然モノのミルクが飲める所が

あるといいのになあ……」

「天然モノのミルクですか。リンカーネの

町にはミルクを出す家畜はいませんね。

ミルクを出す生物……人間以外にも

いるのでしょうか」

「昔は沢山いたらしいんだけどね。

生態系も取り返しがつかない程破壊された

今はまるで伝説のように扱われている」


 そんな話をしながら食事をしてると……


グラグラグラ……ガラッ!!!


 廃ビルの壁が崩れて、私目掛けて

落ちてきた!!!


「キャァァッ!!!」


 私はあわててしゃがみ込んだ。


「……ピーーーーー」


 すると、テセラ君の目が赤く光った。

テセラ君は右手を落ちてきた瓦礫に向けた。

そして……!!!


ダダダダダダダダダン!!!!!!


 テセラ君の右手から

強力なビームが何発も放たれた。

大量のビームを浴びた瓦礫は

あっという間に木っ端微塵となり

私の頭上には埃だけが降り注いだ。


「テセラ君……今の何……?」

「……ピピッ」


 私と目が合ったテセラ君は

元の青い目に戻りこう言った。


「テールさんを助ける方法を考えたら

突然身体を何者かに乗っ取られた

かのように動かされました」

「それで、手から凄いのがババーンと……」

「どうやらこの手にはビームガンが

内蔵されていますね。出力を変えれば

標的ターゲットに合わせた対応も出来そうです」

「……」

「どうしましたか、テールさん」

「テセラ君……君は……!」

「!?」


バッ


「本当にすごいよ!!!」


 私は思わずテセラ君に抱きついた。


「な、何をするのですか!」

「そのチカラがあれば、テセラ君は私達を

危険から守ってくれるんだから!」

「そ、それもそうですね」

「これからもよろしくね。相棒」

「相棒ですか。悪くありませんね」


 そんな訳で、今日はテセラ君の

秘められたチカラを知ったのでした。

あの後業者さんが不発弾を丁寧に解体して

素材は爆薬以外は家のジャンク屋に

破格で卸してくれたの。

目視で見つからない不発弾を

見つけたお礼だって。


 おかげで今日の夕飯はちょっとだけ

豪華なものが食べれた。

テセラ君と一緒なら、私の夢見た

緑いっぱいの世界も実現出来るかも。


   * * * * * * *


 それから数日後。

ジャンク屋にあるお客さんがやって来た。


「いらっしゃいませー」

「ここがテールのいるジャンク屋か。

今日は俺の相棒の点検を頼むぜ」


 テールのいるジャンク屋かあ。

確かにちょっとは有名になれたみたい。

なんて少し思いながらも、接客しなくちゃ。

そのお客さんは、2mほどの身長で

背中に身の丈以上の銃を背負っていた。


「相棒って……それ、銃だよね」

「ああそうだ。この後かなりヤバい仕事を

受けなきゃならないからな」


 大型銃の点検だなんて、初めての事だけど

私にも出来るかな……。


「内部をスキャン。この辺りに異常発見」

「そっか、私にはテセラ君がいるからね」


 テセラ君のお陰で首尾よく銃を点検して

短時間で修理する事が出来た。


「これが点検のお代だ」

「ご利用ありがとうございます」

「それとテールを冒険家と見込んで

もうひとつ頼みがある」

「何でしょうか」

「俺と一緒に探索して欲しい所がある」


 探索して欲しい所って……?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る