第4話 宮地家の人々
外出する時の恋人つなぎは当たり前でいつでもどこでも祖母ファースト。
誕生日もクリスマスも我が子より孫よりも祖母に豪華なプレゼントを用意するし、家族旅行より夫婦水入らずで旅行に行く方が多かった。
孫の小学校の運動会でカメラを持参した祖父が、孫より祖母の写真をたくさん撮っていたのを知った宮地がキレた夜は、
「良いところのお嬢さんがなーんにも無いオレのとこに来てくれたんだ。すげぇだろ?金もなーんにもねぇのよ?昔はデェトも簡単じゃなかったんだぞ。でも、どうしてオレを好いてくれたか分かるか?そこらへんの男よりオレがいけめんってやつだったからよ。がはははっ!」
と、お酒の勢いもあって延々と
もう何も言うまいと宮地は心に決めた。
祖母はというと家の中でスッピンを見たことがないし、いつもオシャレに気を使い、基本的に余程のことがなければニコニコしているイメージの人である。
ただ祖父がテレビを観ながらうっかり女優さんやアイドルをこの人べっぴんさんだねぇ!なんて言おうものなら祖母の嫉妬心は大変なものだった。
言葉や態度に出していないのに、やらかしたのは祖父だけなのになぜだか家族みんなが恐ろしくて目を見ることができない。
その日のうちに機嫌が直ればラッキー。
大抵はお通夜のような食卓がしばらく続く。
祖父はマメなようでいて、たまにうっかり地雷を踏む人だった。
ある時、宮地が廊下で気配を感じて振り返ると祖母がすぐ後ろに立っていたことがある。
「後ろ姿がノブオさんに似てきたね。うっかり間違えるとこだったわ。危ない危ない。」
と、何かをサッと背中に隠した。
何をどうしようとして何を間違えたのか聞けなかったが、宮地はこの人だけは怒らせるのはやめようと心に刻んだ。
そんな祖母の変化に気がついたのは祖父が亡くなって1年後のことだった。
祖父が亡くなってからすっかり化粧もオシャレもやめてしまった祖母が、庭で洗濯物をしていた宮地の母親に話しかけた。
「ねぇ、そこのアナタ。そこの女中さん。ちょっと来てほしいんだけど。」
「やぁね。娘を女中さんだなんて。お手伝い扱いしないでよ、お母さん。」
「娘…。ああ、そうね。そうよね。そうそう。そうだ、そうだ。」
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