第3話 恋人の名は
目の細い感じがとてもよく似ている。
こんにちはと3人が頭を下げると女性も微笑みながら軽く会釈した。
お母さんですか?と紺野が話しかけようとした時、宮地の隣に別の女性が隣に並んだ。
「どなたか紹介してくださる?ノブオさん。」
宮地は少し考えて友人ですよと答えた。
「そうでしたの。わたくしは…ふふっ。言ってもいいのかしら?」
その女性を頬を赤らめて宮地を見つめた。
「ボクから紹介するよ。恋人の日高あや子さんだ。」
「えっ?」
「えっ?」
紺野と白木が同じタイミングで聞き返した。
「ボク?」
加賀見が違う所に反応する。
「反論は許さねぇ。」
声には出していないが宮地の目力がそう言っている。
身の危険を感じた紺野と白木はウンウンと何度もうなづく。
「えっ、熟女好きにもホドがあるっしょ。どう見てもおばあ」
半笑いで余計な事を言いかけている加賀見を白木が肘でこづき、紺野も右肩を軽く叩いた。
「まぁ、失礼しちゃう。ノブオさんより一つ年上なだけなのに。」
宮地の恋人は口をぷくっと膨らませて横を向いてしまった。
「もう行きましょ。女中さんそのお花は、わたくしのお部屋に飾ってちょうだいね。」
「あや子さん、ボクから叱っておくから機嫌を
直してね。また会いに行くから。」
宮地が話しかけると笑顔になった彼女は女中さんに手を引かれてその場を去っていった。
「なんで違うって言わないの?名前とか。」
紺野は2人の姿が見えなくなるのを確認して宮地に恐る恐る聞いた。
「最初は言った。めっちゃハッキリ言ってやったんだ。ノブオは爺ちゃんで、俺は孫だって。母ちゃんをメイド扱いすんなって。」
「名前が違うのは分かってたけど、お爺さんの名前だったんだ。」
「何度も言い聞かせてみようとしたけど、全然ダメでさ。パニックになるだけでどうにもなんねぇの。本人はマジで10代の女の子のつもりだからさ。娘を産んだ記憶がないんじゃ…そりゃ孫もいないわな。」
それを聞いた加賀見が気まずそうな顔で宮地に頭を下げた。
「ごめん。俺ちょっと空気読むの苦手でさ。」
「いいって、そういうの。」
宮地がふっと笑った。
「どっからどう見ても80代くらいのバアさんが男子高校生の彼女気取ってんだから、オレだってビックリだよ。年の割に姿勢もいいし、足腰が丈夫な分目も離せない。ダルイよ。」
そういうと宮地は眠そうに大きなアクビをした。
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