第4眠

 ――う~ん、むにゃむにゃ。


 むにゃ?


 ……。


 んん?


 ………………?


 目が覚めたのに、まだ真っ黒な世界に包まれていた。

 ……というか、全然転送が終わらないから、あれから何回も何回も寝直している。

 

 だというのに、まだ転送は完了していないらしい。




 ……




 ……




 ……




 ……これはもうアレだ。

 やっぱり、そういうことなんだろう。


 いや俺もさ、なんとなく『そういうこと』なんじゃないかな~とは思っていたんだけどさ、そうであって欲しくなくて何度も寝直していたんだよね。

 でも、これだけ寝てても転送が終わらないんじゃあ、やっぱり確定だと思う。


 ……いやまだ、まだワンチャンあるかも。

 神様の感覚と俺の感覚に差がありすぎるだけで、実際はまだ転送が終わってないだけという可能性も捨てきれない。

 いやいやそれどころか、あれだけ無尽蔵にチート能力をくれるぐらいだから、人間との感性に差があり過ぎてむしろガバガバってことの方が信憑性がある。

 つまりツーチャン、いや、スリーチャンぐらいはある!


 そう、だからみたいに真っ暗なここが転送先だなんて、絶対に違うはずだ。

 そうだ、そんなのあるはずがない。


 百歩譲ってもし仮にここが宇宙空間だとしてだ、『チートを貰って異世界に行ったら宇宙空間でした』って何がしたいの?


 何も無いじゃない。

 何も出来ないじゃない。


 どうするのこれ?これから何するの?

 チートあっても意味ないじゃない?


 ってか、空気が無かったら即死でしょ、チート貰ってなかったら俺死んでるよ?

 そこんとこ、どう考えてるの?

 あの神様バカなの?死ぬの?




 ……って違う違う違う違う、そうじゃない、そうじゃないんだ。




 よし、落ち着け、落ち着け。

 ひっひっふー、ひっひっふー。


 よし落ち着いた。


 ……


 ……そうだ、良く考えたら俺にはチートがあるじゃないか。

 だから、もしもここが宇宙空間だったとしても絶対に大丈夫。

 生命の維持はチートがあるから問題無いし、生命が活動できる惑星がたとえ何光年先にあったとしても、チートがあれば簡単にその場所を探し当てられる。

 もちろん転移するのだって一瞬だ。


 だからそう。

 まず最初にしなければいけないのは、これが本当に転送中なのかそうでないのかを見極めることだ。

 

 よし、そうと決まれば話は早い。


 俺はもう一度深呼吸をして気持ちを落ち着けると、神様から一番最初に貰ったあのチートを発動させることにした。




「『鑑定』!」




 そう声を発すると、今まで感じたことのない感覚が身体を駆け巡り、この世界を構成するありとあらゆる情報が脳内を満たしていく。


 森羅万象。

 それを肌で感じることによって生まれる全能感。


 チートの名にふさわしい能力が行使され、そしてチートによって強化された俺の感覚はこの世の全てを知覚する。


 そう、まさしくこの世界の『全て』がそこには表示されていた。





















 【鑑定結果】


 『無』


 この世界には、何も存在しない。



































 ――ふて寝した。






 ………………






 …………






 ……






 ……ぐぅ。

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