第18話 はじめてのがっこう

「はーい、注目! 今日から一緒に勉強……多分することになる、レニーナちゃんです。お友達を募集中なんだってさ! ぜひお友達になってあげてね! みんな、拍手!」


 ヨスタナ師から非常に恥ずかしい紹介をされ教室の皆から拍手や「誰あの子!?」「え、あんなちっちゃいの大丈夫……?」「ロイ様のとこの子だって!」とよく聞こえる声で囁き合うのを聴きながら、にこっと微笑みを維持する。


 なんとか耐えきり、「レニーナちゃん、自己紹介して」とヨスタナ師に急かされてこう、母の笑顔を真似てみた笑顔を作って挨拶した。


「はじめまして、わたしはレニーナ・フィングルです。3さいです。よろしくおねがいします」


「みんな、単語ドリルは持ってきたね? って、ああ、レニーナちゃんはこっちの方のを」と目をそらされながらも受け取ると絵本だった。ヨスタナ師は中腰になり耳元で囁いた。


「君はその……なんだ、お友達を作りにきたんだよね? 勉強はいいよね? ぶっちゃけこの中で古典文学なんて読んだら引かれるよ!?」


 私はまあそうだろうな、と思ったので「分かりました、ありがとう、ヨスタナせんせぇ」と答え、手渡された絵本を読む。


 何せ絵ばかりで文字は1ページに30文字も無く、ページも薄いため、文字だけだと30秒ほどで読み終わってしまったが、思考を変えるべきだ。


 絵本というのは絵を楽しむものなのだろう。今度はじっくり絵を見てなるべく想像しながら読む事にした。


 絵本ではよくある、美しく飾り立てられた特権階級の姫とやらが「平和な」と表現されているからには恐らくは他国と交戦状態にはない専制君主の城から、見た目がいかにも悪そうな顔と格好をした、「悪い魔法使い」に攫われる。


 他国の同じく専制君主の継承権を持つのに、旅の名目で遊び歩き帝王学すら学ばないでいた道楽王子が数々の試練を潜り抜けて姫とやらを奪還し、二人が結ばれてハッピーエンド、というものだった。


「せんせぇ」と、私はいまいち納得がいかなかったので手を上げて聴いてみようとすると、ヨスタナ師はびくっ!と身体を震わせた。


「ど、どうしたのかな? レニーナちゃん」と何故か卑屈そうな笑みを浮かべてきたが気にせずまずは疑問に浮かんだ事を尋ねた。


「ここに『わるいまほうつかい』とありますが、ぐたいてきには何のぜんかがある魔法使いなのでしょうか?」


 ヨスタナ師は困ったような笑顔を浮かべて、「お姫様を攫っちゃうんだよ? 悪い魔法使いじゃないのかな?」と答えるのでさらに尋ねた。


「そうなんですね、でもなにかようきゅうもされずに、姫とやらも何もされていなかったようですが、このまほうつかいは、何がしたかったんでしょうか?」


「それは……何かするつもりだったけど、する前に王子様に救われたんだよ、きっと

」と弱々しく微笑んで言う。


「わるいまほうつかい……つごうのわるいそんざい、いきょうと、いみんぞく、いしゅぞく……それをせいばいする、ほかのくにのおうじ……」と私は考える。


「もしかして、どうめいをむすぶための、こんいんを、はんぱつするこくないきぞくへのせいとうかをもくてきとした、どうじにつごうのわるいそんざいにすべてのつみをかぶせて、だんあつするいんぼう……!」


「そしてそれを、びだんにしたてあげた、メタファーをした、プロパガンダだったのではないでしょうか!?」と私が興奮しながら言うと、ヨスタナ師はなんとも言えない表情をした。


 ヨスタナ師はなんとも言えない表情で、きょろきょろと見渡し腰をかがめて私に「え、絵本だからね?あまりリアリティは求めないでよ」とぼそぼそと言う。


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