第17話 「可愛い少女学」の我が師シェラ

 リビングにはヨスタナ師はいなかったが、母が居て、鼻歌を歌いながら掃除をしていた。


「まあ、レニーナちゃん、遊びにきたの?」と笑顔で尋ねてきた。


 私は「ヨスタナせんせいは?」と尋ねると、困ったような顔を母はし、少し頬を膨らませた。


「レニーナちゃんの体調が良くなさそうだから、村の幼稚舎に勉強を見に行くそうよ。困ったひとねえ」と人差し指を頬に当てて少女のように可愛らしく、困っていた。


 ふむ……なるほど、これが父が惚れるような、まさに、「ザ・美少女」である可愛さなのか……。


 私は心で、母を「可愛い少女学」の師として、シェラ師と呼びつつ尋ねた。


「ママ、どうやったら可愛くなれるんですか?」


 と率直に尋ねると、ぱぁっと笑顔になると、「ふふ、それはね?」と思わせぶりに人差し指を立てながら、お茶目な感じにウィンクしてくる。


「うん、それは……?」というと、「レニーナちゃんは十分可愛いわー!」とぎゅぅとしてくるので、「そ、そうじゃなくて、子供的に……はっ!?」と口を閉ざしたが、母は「もしかして……」と急に真面目な表情になった。


「えっと、ほら、まだ3さいで……」とごにょごにょというと、母はがしっと肩をつかむと、「分かってるわ、皆まで言わないで」と至極真面目な顔をして見つめてくる。


「これはやらかしたか」と軽く冷や汗をかきながら思ったが、「つまり、レニーナちゃんは、お友達が欲しいのねーー!!」と目を輝かせて言った。


「お、どうした?」とリビングへ来た父に、「レニーナちゃんも幼稚舎に入れてあげて! 情操教育もしなきゃダメ!」と涙目で母に頼み込まれて、父の、勝敗は明らかであり涙無くしては見ていられない無駄な必死の抵抗も虚しく撃滅され、私は幼稚舎へ行く事になった。


 ……… その姿を見て1つ学んだのは、ちょっとやそっと男女同権にしたところで、女性の涙やウィンクや笑顔は強力な武器であり、男性は勝てない、という事だった。


 いやまあ、私も生前は妻がいたので多少は分かってはいたが、自分がやる側になるとは思っていなかったので……とても勉強になった。



--------------

※よろしければ作品のフォローといいねでご評価して頂けましたらとても嬉しいです!励みにすごくなります!よろしくお願いします!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る