第16話 かみさまたちの事情
「あと……こう、神々が人間と近いし、神達は人間のように心を持った神で、基本的には12神柱には貴女の嫌うような、人格の悪い神は、私はいないと思うのだけど……。ただ反面、その……神にも、色々といて、ね?」と言い淀む。
そしてリィズは思い出すような遠い目で悲しそうに語った。
「つまり、あまり善くない神、素行的な意味とかでも、与える力とかの意味でも、善くない神もいて……。神もあまり一枚岩でないというか、というより主神の私に従わないで、今は12神柱だけど……前はもう少し神がいて15神柱がいたの」
と、彼女は神々の事情を説明するが、「あまり善くない神」か……やはり摩訶不思議な力を持っていても、確かにこうも人間っぽさ丸出しの神々達だと、色々あるんだろうなあと思っていると、リィズは「まぁね」と言い、話を続けた。
「そういう風に神族会議から離脱して、独立して人間たちが言う『悪神』という存在になったりと、結構好き勝手にやってるのよ。貴方的にいえば、広義の『神』というより『単に力を持った人間と変わらない特権階級』みたいに、ね」とまたため息をつく。
「その上、神にしろその眷属にしろ天使たちにしろ、人間を下に見ている者も少なくないし、神界だけでなく魔界もあって、堕天使もいて、そっちの方でも嫌な動きがあったり……」と表情が暗い。
こうもかなり弱々しいリィズを見るのは初めてで、勝ち気な彼女がこれだけ悩むとは。
すると、「その……ある意味、貴女にはちょっとだけ期待してるのよ?」と上目遣いで見てくる。
「もちろん、今は3歳児! そして女児! まずはそれを忘れずに子供らしく過ごしながら、そのうち段々世界を広くみていってみなさいよ」
と、空元気を出してまで、私のことを思ってニコッと微笑んで言ってくれる。リィズはまあ、広義の「神」としては、色々ポンコツに思えるが、勝ち気であっても非常に優しい子なのは知っている。
「くすくすっ、貴女でもそういう風に言えたりするんだ、褒めても何もでないわよ? ポンコツは余計だけど!!」とクスッと微笑んで、言葉を続けた。
「貴女の理想、だっけ? この世界は決して理想郷じゃないから、まず色々見てから貴女らしいのを考えれてみればいいじゃない」
と優しく言うとまるで女神のように見えるので困る。
「困らなくていいし、私は女神なのーーーー!!」
と言い返してくるのを見て、私は「ぷっ」と吹き出して、「あはははは!」大笑いしてしまった。
「やばっ、人が来るわよ、私はもう帰るから。困ったら鏡に向かって私を呼びなさい。それじゃね!」とあたふたして早口で言った後、鏡はまたぶぉんと揺らめき、と私の姿を映し出した。
「うん? 誰かと話している声が聞こえた気がしたんだが……レニーナ、何をしているんだ?」
と、父がドアを開けると問いかけてくる。
「ううん、だれも『人』はいなかったよ。わたし、ひとり」と嘘はつかずに言う。
「そうかあ」と父は納得のいかない顔をしながらも、こっちへ来ると頭を撫でて「レニーナ、父さんにはよくわからないが、難しい本とかも読めるようになったそうじゃないか! 父さんは鼻が高いぞー?」とご機嫌なようだった。
「う、うん。あ! それじゃわたしはヨスタナせんせいの授業のつづきがあるから!」
とちょっと嘘でなくても事実を誤魔化した罪悪感というか気まずさから、あいまいな笑顔のままひょいと椅子を降りてとてとてとヨスタナ師がいると思うリビングへと向かった。
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