第14話 異世界「ウェンディズ」と理想の狭間
「……ちょっと疲れてしまったので、へやでやすんできます……」
と言ってヨスタナ師に断って、私は、3歳になりベビーベッドの代わりに与えられた、子供用の小さなベッドがある部屋に戻り、小さな鏡台を見る。
そこにはエメラルドの目に肩くらいまで伸びた銀髪の私、レニーナが見える。
私の地球で妻と授かった我が子は男子だったが、女児だとこれはおっとりした目つきの可愛い顔立ちという事になるのだろう。私の眼から見てもそう思うし、現役で……現在進行形で、少女のように可愛い母に似てるので、可愛い事になるのだろう。
「これがわたし……。そして、ここが、わたしが、生きるせかい……か」
そう呟いて鏡の中の自分の顔をおててでぺたぺたと触ったあと、ため息をついて、私はいったい何をすべきだろうと考える。
この世界は神が実在し、神の眷属がそれを補佐し、天使までいるらしい。その中で私の信じてきた理想は必要なのだろうか。
困った者は神やそれに類する者達により救ってもらえて、誰も困っていないなら、特に誰かが不条理に、理不尽に苦しむような社会システムになっていないなら、無理に変える必要がないかもしれない。
他方、思う。人が神に頼り過ぎているこの社会は、健全なのだろうか、とも。
牧歌的ではある。素朴に空が青いのはルティアスとやらの神と主張するところの者が青色が好きだから……空の色が青い理由を知らずとも生きていけるだろう。
また、空の光の散乱を何か解明して解決しなければ科学が進まない地球と違い、これまた、神とやらとそれらに追従する存在が、何か困った事があれば、救ってくれるのかもしれない。
だが、これでは自然科学の発展は見込めないだろう。同様に、社会科学も人文科学も進まず……停滞した中世社会のまま延々に続く事になるのではないか、とも。
しかし、私の心の中ではとても矛盾する事に、こういった神々や精霊や天使達こそが、私が「もしも神と認めるなら」という、不条理な不幸を許さず、不幸から人民を救い、幸福へと導く、まさに理想の「私の宗教的価値観に合う神々のいる世界」ではないのか。
ならば、「人々は救われないままでいて、いつまで待っても現れない神を、いずれ現れ、もしくは死後に救ってくれるからとアヘンのように一時的な救いの代わりにせず、ありのままの物質的に存在する世界を見て、現実的に人々がお互いに協力しあって、人々の想いが正しく報われ、不幸な人を皆で現実的に救い合って助け合える、幸せな社会を創ろう」と地球で信じていた理想はこの世界では、果たして価値があるのだろうか。
鏡の中の難しい顔をしている自分を見ていると不思議な事に鏡の中の私が歪み、ぶぉん、と音が鳴ったかと思うと、目の前に、あの時、リィズと名乗った少女が、主神フェンリィズが、じとーっとこっちを見ながら不機嫌そうな表情でこちらを見ているのが分かった。
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