第13話 「かみさま」への複雑な思い
そう、私は唯物論者であり無神論者だったが……いや、まあ今も唯物論者ではあるが、こうも、嫌というほど、もううんざりするほどに、こうも「神」の存在が身近であると、神の存在自体は認めざるを得ないので、この世界に限り無神論者ではなくなった。
だが、ルートシアニを始めとして、リィズもだが、摩訶不思議な存在がこの世界には存在し、厳密に定められ不動のはずの物理法則は当たり前のように歪められ「神の力」を借りて奇跡といって様々な物理現象を起こせるらしい。
こう……私は唯物論者なのに、この世界でも科学的に探究したいのに、あまりにチートというか荒唐無稽、珍妙であまりにも物理法則に反した、無茶苦茶すぎる現象が日常的にされているらしいのに、「神の加護の奇跡」の一言で片付けられすぎるので非常に困るのだが、しかし、あるものはあると認めざるを得ない。
まあ、厳密を求めれば、全てが幻想や夢や幻覚である可能性は排除できないが、その可能性を言い出したら「私」以外は……いや、「私」も含めて何もかも存在しないと懐疑しなければならない、我々はただの経験の束であり「私」は存在しないのではないか、などまああり得るが、そこまで疑ったりしたら、キリがなくなってしまう事になるのでそれは止める。
仕方ないので目の前で起きてるのだから、現象としては認めなければならない。だがその摩訶不思議な「神の力」についても、私は唯物論に基づき解析ができると信じている。
いつかは神の力を観測し、分析し、再現を行えるようになるのだ……「レニーナちゃん!」っと、忘れてた、ヨスタナ師にまた笑顔で、「どうしました?」と答えると、ヨスタナ師は笑顔で尋ねてきた。
「君も、5歳になると、神々との契約を行う事になるが、どの神にするか決めたのかい?」
私は、返答にとても困ってしまい、リアクションもできず固まってしまった。
……神については良く分からない。知りたくない訳ではないのだが……。
いや、正直に言おう。詳しく知ったら自分が自分でなくなりそうな、というべきか、神が身近にいる世界にどっぷり浸かる事へのためらいが……頭で理解したとさっきは言ったが、心情的には極めて複雑なのである。
まあ、この世界の神は身近な存在だというし……地球の「神」とはまた違うのかもしれないが。
だが故郷の世界……飢えて雪の中に倒れ、凍えて餓死していく農民がいるのに、それを気にすらもせずに、人民から搾取した巨額の富で建設した豪勢な教会で、聖職者達が、その見殺しにしているツァーリを、「地上における神の代理者」として讃える。
ツァーリは労働者も農民も一生食べる事ができない金箔の載った豪華のディナーを食べて、1本で家が建つくらいの赤ワインを飲み、酔ったらこれもまた家が1軒建つくらいの値段のする豪華なベッドで好き勝手に寝る。
貴族達はポーカーの賭けに農奴の身を賭け笑いながら人民の命を持て遊び、領地の人民の事など考えもしないで賭博場に入り浸る……という世界の不条理。
それを私は今世とはいえ、あの世界の「神」に対しては、そのような不作為で見逃し何故放置しているのか、一応リィズに「地球では神の原則不干渉の原則がある」とは聴いたが、それが「何故ダメなのか」は教えてくれなかった。
それに対して納得がいく答えが得られない限りは、やはり、「存在」を、というよりも、「神だから善ではなく、善だから神である」というテーゼに基づかない存在を、「神」だと認めるわけには行かない。
この世は神が作ったのだから、この世の不条理は、不条理ではなく神が与えた試練で、神の御心に沿う善である、などというような地球の聖職者の詭弁のような理屈を、もしも「その存在」も、本気でそう思ってやっているならば、私は「その存在」を「神」としては認める訳には断じていかない。
とはいえここは異世界。だいぶ話が逸れた。
だが、この世界の広義の「神」と、地球の広義なり狭義の「神」はまた違うのだ、という認識が、頭では分かっていても心情的には、とても区別して分けて考えろといわれてもしにくいのだ。
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