第14話 聖域のこと
アメリアさんとテリーさんの家で面倒を見てもらうことになって、色々と説明してもらった。どうして2人は森の中で魔物に襲われていたのか、その経緯について。
アメリアさんは村一番の薬師で、怪我人の治療や薬を調合したりしているそうだ。
少し前に、この村の人達は魔物の退治を行った。それは、定期的に実施されていることらしくて、戦える村人たちで森の中に入って魔物を倒しているようだ。
そうしないと、魔物が増えて村を襲われる可能性が高くなるから。
魔物の退治で何人か怪我人が出たという。怪我をした人たちを治療するために薬が必要だった。薬を調合するための薬草を採取しようと出かけた先で、魔物に襲われて死を覚悟した瞬間に私と出会った。そういう経緯らしい。
魔物を退治したばかりの時期だから、警戒が薄れていた。油断していたと、2人は語った。
他国の人達は常に、魔物の問題に対処しなければいけないから大変だと聞いたことがあった。彼らの話を聞いて、本当に大変なんだなと思った。
それに比べて、エルメノン王国には聖域があるので村を襲われる心配がないから、安心して暮らせる。聖域の外側には魔物が生息しているので、定期的に退治する必要はあるけれど。いつでも安全な場所があるというだけで、心に余裕ができるだろう。
そんな大事な聖域を、私は解放してしまった。聖域が失われたエルメノン王国は、この村の人たちと同じように魔物の脅威に常に晒されるようになったのだろう。
だけど、エルメノン王国には私以外にも修行を積み重ねた聖女がいる。彼女たちの誰かが聖域を再展開することは、可能なはず。
しかし、エルメノン王国の聖域が消え去ってから、まだ再展開された気配がない。今も、聖域は失われたままのようだ。
あの後、私の代わりに聖域を再展開して維持する役目を担う聖女は居ないのだろうか。1人だけでは無理かもしれない。けれども、何十人か集まって協力すれば聖域を展開することが出来ると思う。維持していくことも。いや、難しいのかな。それとも準備に手間取っているのかもしれない。
いつ聖域が再展開されるのか、私には分からない。
現状を把握しているはずの教会は、一体何をしているのか。後任の聖女を決めて、早く聖域を再展開しないと大変なことになるかもしれないのに。
事情があったとはいえ、勝手に教会を離れて、勝手に聖域を解放してしまった私は口を出せるような立場じゃない。何か言えるような権利もない。
エルメノン王国の今後は気になるけれど、今の私に出来ることは何もない。別の国にある辺境の村で暮らすことになった私には、関係ないこと。
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