第13話 話し合い

 アメリアさんに案内された家のベッドに、背負っていた男性を寝かせる。まだ彼は起きない。しばらく待っていたら、目を覚ますはずだけど。


 これで、私の役目は終わりだろう。ここで、お別れだ。そう思ってアメリアさんに別れを告げようとした時、家の中に誰かが入ってきた。


「アメリア! 魔物に襲われたという報告があったが、詳しく話を聞かせてくれ」

「村長、もちろんです」


 立派な白いひげを生やした高齢の男性、村長らしい人物が何人か村人たちを後ろに引き連れ、やってきた。魔物に襲われたという話を確認しに来たようだ。


 村長は私の顔を見て、ベッドの上に寝ている男性を見る。それからアメリアさんと話し合いを始めた。私は、ここから立ち去るタイミングを逃してしまった。


 仕方ないので、そのまま待つことに。


 アメリアさんの話を聞き終えた後、次に村長は私に話しかけてきた。


「2人を助けてくれたこと、感謝する」

「いえ……」


 頭を下げて、感謝の言葉を伝えてくれる村長。とても丁寧に。そこまで感謝されるほどのことをしていないので、少し困ってしまった。


「それで、君の話も聞かせてほしいんだが。君の名前は?」


 これは尋問だろうか。やっぱり怪しまれているのかもしれない。正直に答えるべきなのか少し悩んでから、私は答えた。


「……クローディといいます」

「クローディちゃん。君が、どこから来たのか聞いてもいいかな?」

「……」


 自分の名前は正直に答えた。けれど次の質問については答えられなくて、私は口を閉ざすしかなかった。エルメノン王国で追放されたと言ったら、どう思われるのか。それが心配だったから。私が黙っていると、別の質問が飛んできた。


「ふむ。君の仲間は、どこにいるんだい?」

「いえ、1人です」

「そうか」


 嘘は言えない。仲間が居ると言ったら、捜索隊を出そうと提案されるかもしれないから。それだと、一生見つけられない人物を探し続けることになってしまう。そんな迷惑はかけたくない。だから私は、本当のことを言った。


 けれど、1人だと言う方が怪しまれるかな。どうしよう。


「なら、どこか行くあてはあるのか?」

「それは……」


 それも、言うべきかどうか。今度は、答えを待たれる。どう答えるべきか。


 私に目的地なんてない。ソレズテリエ帝国に行こうと考えていたけれど、その後の目的なんて何も考えていなかった。


 村長は、この質問については私の答えを聞くまで黙っているつもりなのか、じっと見つめてくるだけ。それなら、答えるしかないわね。


「行くあては、ありません」

「それなら目的を見つけるまで、この村に滞在すればいい」

「え?」


 予想外の言葉に驚いてしまった。どうして、そんな事を言うのだろう。私は、森の中から急に現れた怪しい人物なのに。そんな人を、村に滞在させて大丈夫なのか。


「彼女の面倒は、私たちに見させて下さい」

「そうだな。この子の面倒を見るのは、アメリアたちに任せよう」

「はい。助けてもらった分の恩返しをさせて下さい」

「え?」


 トントン拍子に話が進んでいった。私が戸惑っている間に、アメリアさんに面倒を見てもらうことになっていた。どうして、そんなことに。


「テリーも、それで良いですね」

「もちろんだ」


 いつの間にか目覚めていた男性が頷いて、了承している。


「アメリアに話は聞いた。君が俺たちを助けてくれたと。本当にありがとう」

「あ、いえ」

「好きなだけ、この家で過ごしていくといい」


 こうして私は、村に滞在させてもらうことになった。次の目的が見つかるまでは、この村に居てもいいと言われて。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る