第9話 桃色髪の聖女の事情 ※サブリナ視点
護国の聖女にイジメられたなんて話は、サブリナの嘘だった。クローディを貶めるための、サブリナがでっち上げた話である。
彼女も、こんなに上手くいくとは思っていなかった。嬉しい誤算だ。他にも色々と用意していたけれど、それも使わずに済んで非常に楽だったと。
サブリナは、クローディのことを馬鹿な女だと思っていた。教会に言われた通り、役目を果たそうと頑張りすぎている愚か者だと。
あんなに頑張る必要なんてない。自分だったら、もっと手を抜いて上手くやる。他の皆だって、本当の実力を隠して聖域を維持し続けるなんて大変な役目から逃げているのに。頑張っているのは彼女だけ。悲劇の少女でも気取っているつもりなのかと、サブリナは内心で嘲笑っていた。
だけど、護国の聖女と崇められているのも事実だ。パトリックと婚約関係だということも、サブリナは気に入らなかった。
だから、パトリックを奪うことにした。最初は嘘の話で2人の関係を悪化させて、婚約を破棄させることが一番の目的だった。けれども、出会った瞬間にパトリックがサブリナを気に入った。
パトリックからの好意を察知したサブリナは、予定を変更。全力で誘惑して、彼のパートナーの座を奪い取った。
そして、卒業式のパーティーでクローディの婚約が破棄された。サブリナが考えた計画通りに。
まさか、クローディが国外追放されるのは予想外だったけれど。
しかし、これはチャンスだとサブリナは感じていた。彼女が去った後、護国の聖女という称号の座が空くことになる。そうなれば、自分がそこに座ることが出来るのではないかと。
聖域を維持する役目なんて面倒だけど、少しだけ頑張って役目を果たせばいいの。その後は、パトリック様と結婚するためにさっさと役目を終えるのだ。それだけで、護国の聖女の称号を手にすることが出来そう。あの女が崇められていたように、私も崇めてもらう。サブリナは、新たに考えた計画を実行することにした。
パトリック様を奪い取る計画は大成功だった。ならば、次の計画も成功するはず。
サブリナは、輝かしい未来を想像して笑みを浮かべた。
早速、パトリックに相談をした。王太子としての権力を利用して、教会内での話もスムーズに進めるため協力してもらう。
「なるほど。聖域の維持に関する話は了解したよ。君が新たにエルメノン王国を護る聖女になると名乗り出て、あの女の代わりになるわけか」
「その通りです。王国のため、私にも出来ることをしたいのです!」
「愛しいサブリナ。君は、きっと素晴らしい聖女になる。僕が保証するよ」
「はい! パトリック様の期待に応えられるよう頑張ります!」
「あぁ。だけど、無理はしちゃ駄目だよ」
「わかりました! もちろん、絶対に無理はしないです」
パトリックの腕の中で元気よく答えたサブリナ。あの小さな体の女が出来ていたのだから、自分にだって出来るはずだ。彼女には自信があった。
だけど、無理するなとも言われた。彼の言うことを聞いて、もしも大変そうならば他の聖女も強制的に協力させればいい。
私が大変だと泣きつけば、パトリック様が教会に言ってくれる。万が一に備えて、指示してもらう準備も出来ていた。
教会も、王子からの命令には逆らえないだろう。他の聖女たちはサボっているだけで、ちゃん役目を果たせるはずだから。
でもまずは、私1人で。あの女がやっていたように、聖域を維持するだけ。それで護国の聖女の称号を手に入れる。今度の計画も、完璧だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます