第4話 問答無用

「ちょ、ちょっと待って下さい。そんな急に……」


 いきなりの展開に、私は驚いた。なんで、そうなるのよ。偽聖女だと罵倒されて、婚約相手に相応しくないと勝手に判断されて、挙句の果てには国外追放だなんて。


「フン! 言い訳は無用! 貴様との婚約破棄と国外追放は決定事項だ! 縛り首にされないだけ、ありがたく思え」


 まるで情けをかけるような口調でパトリック様が言うけど、全然ありがたくない。そして、問題なのは婚約を破棄されてしまうこと。


 彼と結婚することが出来なければ、私は死ぬまで聖域を維持する役目を負わされてしまうの? それは、絶対に嫌だ。寿命が来る前に、過労で死んでしまうだろう。


「私は、彼女をイジメた覚えなどありません」


 嘘じゃない。私はサブリナのことをイジメていない。それに彼女だって、許そうと言ってくれている。


 サブリナという女性の顔を見た。すると彼女は、もうどうでも良いといった感じで私を見下すような視線を送ってきた。


 なるほど。さっきの言葉は、慈悲深い所を見せるためだけのものだったのね。私の味方をする気はないみたい。パトリック様とイチャイチャするために利用しただけ。イジメられたと嘘を言うのも、そういう理由のようね。


「最後まで貴様は、認めないようだな。――おい、衛兵! この逆賊を捕らえよ!」

「私の話を聞きなさいよ」


 鎧を身に着けた兵士たちが走ってきて、周りを取り囲む。そして、私の身柄を拘束してきた。問答無用らしい。


「離してくださいっ!」


 暴れてみたけれど、屈強な男たちの腕力に適うわけもなく。ただでさえ背の小さい私は、あっという間に捕まってしまった。


 本当に、国外追放されてしまうのか。こんな結末になるとは思ってもみなかった。


 あれ、でも待てよ。国外追放ということは教会に戻る必要が無いということよね。エルメノン王国の外へ出されてしまうと、聖域を維持する役目を続けることは出来ない。


 私が望んでいたこと。聖域を維持する役目を別の誰かに引き継いでもらえることになる。そうなれば、私は自由の身になれる!


 国外追放という扱いを受けるのは不本意だけど、これはチャンスかもしれない。


 だけど、他の誰かに私の役目を引き継いで大丈夫なのだろうか。今まで私が1人で聖域を維持してきたけれど、本来なら数十名の聖女で分担しないと大変なこと。


 今の教会には、実力不足の聖女しか居ないはず。それを急に、役目を背負わされることになってしまったら聖域を維持することは出来ないかもしれない。そうなると、王国の民は魔物の被害に晒されてしまう。


 ああ、心配になってきた。


「お願いします。どうか、考え直して頂けないでしょうか?」


 だから私は、パトリック様に言った。ちゃんと結婚してから、正式な手順で聖域を維持する聖女の役目を引き継ぐ。そうしないと、後々トラブルになってしまう可能性があるから。


 しかし、彼は鼻で笑った。そして、吐き捨てるように私に言う。


「貴様の話など聞くつもりは無い。さっさと連れて行け」

「はっ!」


 兵士たちに拘束された私は、罪人のように連行されてしまった。

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