学校の怪談
「そういえばさ、この高校って学校の怪談あるのかな?」
「え?どうしたんだいきなり」
次の日の昼休みいつものメンバーで昼食を摂りながら聞いてみると、爽太はいきなりの話題に驚きながらも答えてくれた。
「確かあったような気がするけど」
「むぅ、すまない。そういった物はあまり詳しくない」
「僕も知らないな~」
爽太はあること自体は知っているらしいが詳しい内容は知らないみたいで、日向と大和はある事すら知らないみたい。この学校は比較的には新しい学校ではあるから、学校の怪談はあまり有名では無いのかもしれない。
「あ、思い出した。美術室にある彫像が夜中になると走り周るとか聞いたことある気がするけど、どうしていきなりそんなこと聞くんだ?」
「ん?昨日家族でさ学校の怪談の話題になったんだよ。それでこの学校にもあるのかな~って」
「なるほど~」
「歴史のある学校では有名な怪談があるというが・・・・」
「うちの学校って結構新しいからな~」
「先輩達に聞けば多分分かるだろうけど、聞いておこうか?」
「いや、そこまで気にしなくても大丈夫。単純に興味本位で聞いただけだから」
爽太は先輩に聞こうとかと言ってくれたが、わざわざそこまでしてくれなくても大丈夫だ。学校の怪談が妖怪の仕業だとしたら、生活している内に見かけるだろうしもし在ったとしても幽霊の仕業じゃ俺では見れないからな。
「校舎自体も新しいからね~うちの学校名でSNSを調べてみたら見つかるかもよ」
「あ、確かにそれ良いな。早速調べてみようかな」
「もう、調べたぞ」
「はやっ」
「ふむ、学校の怪談は存在している様だが七不思議では無いようだ。内容としては、0時に見ると自分の死に顔が見える正面玄関の鏡と校内を走り周る美術室の彫像、夜になると増える幻の教室。それと、危険を知らせる話す犬だそうだ」
「犬?」
「あぁ、なんでもこの学校に通う生徒に危険が迫っている時夕暮れ時に現れて警告してくれるそうだ」
「なんか、怪談というより良い奴ぽいな」
「他はなんかありがちな怪談なのに犬だけ異質だよね~」
危険を知らせる話す犬か~多分だけどそれ妖怪なんじゃないか?世の中には話す猫だっているんだし話す犬の妖怪が居たとしても不思議じゃない。そいつだったら俺でも見られそうだけど、危険が無いとあらわれてくれないのか~いや、でも俺なら隠れてても見破れるんじゃないか?
「怪談を作ったやつがオリジナル性を持たせようとしたんじゃないか?」
「他の話とだパンチ弱いもんね~」
「ふむ、特殊という事は実際に居るのかもしれないぞ」
「まっさか~」
日向と爽太はまたまた~とか言いながら笑っているが、大和は真面目に言っている様だ。あまり知名度が無いようだから、話が元になって妖怪は生まれないだろうけど話が有るって事は実際に居る可能性は結構高いかもしれない。今話しているこの瞬間もどこかで聞いてるかもしれないと、周りを見渡してみたけど犬らしき姿は無い。どんな姿の犬なんだろうな~と考えていると昼休み終了のチャイムが鳴った。
「あ、次の準備しないと」
「はぁ~昼飯後の日本史は流石に眠くなるんだよな~」
「爽太はどの授業でもそうじゃん」
「どの授業も真剣に受けるべきだ。偶の休息は必要だがな」
「は~い・・・・」
「来月には期末が待っているからな」
「赤点取らなきゃ大丈夫!」
午後の授業中結構な頻度で居眠りをこいている爽太だが中間テストは平均より上だから成績的には問題無いんだよな。爽太の言葉に笑っている日向は、学年上位に入るんだよな~大和は学年一位だし・・・・俺は言い訳になるが悪夢に悩まされて集中出来ていなかったので次は頑張らないと。
腹を満たした後の授業は眠くなるが何とかその眠気に打ち勝ち学校を終え、俺はいま求眠堂に来ていた。いつも通りこの時間はお客さんが居ないので、店の掃除をしながら学校の怪談について夢食さんに聞いてみることにした。
「夢食さ~ん」
「何だ?」
「学校の怪談ってあるじゃないですか」
「あるな」
「あれって妖怪なんですか?」
「ん~大きな括りで言うなら妖怪だな。幽霊の場合もあるがな」
夢食さんは、帳簿を見ながら答えてくれた。やっぱり思ってた通り大きな括りだと妖怪なんだ~てか、幽霊の場合もあるって事は幽霊も実際に居るの!?
「幽霊の場合もあるって、幽霊ってマジで居るんですか?」
「居るぞ~」
「え、じゃあ俺幽霊も見れたり?」
「力のある奴なら見れるんじゃないか?」
夢食さんは帳簿を見るのを止めると俺に手招きをして
「面倒な話になるから茶を飲みながら話そうぜ」
「あ、それじゃあここの掃除終わってからでも良いですか?」
「おう」
俺が夢食さんを待たせないように、丁寧に掃除しながらも素早く終わらせるといつものように座布団に座ると話し始めてくれた。
「学校の怪談に関わらず、怪談の類だがあれは大きく分けると妖怪が悪戯して現象だけが話になったものとその現象自体が本体の場合があるんだ。分かりやすく言うと、物が動いたりは妖怪の悪戯だが、トイレの花子さんなんかは本体だな」
「あ~なるほど。ってことはトイレの花子さんっていう妖怪なんですね」
「さっき話した通り大きな括りでは妖怪なんだが、怪異の奴らは制限が厳しい奴らが多いな」
「制限?」
「そ、例えば問いかけに答えなければ手出しが出来ないとか、ある場所ある時間にしか現れないとかな。そういった制限は、妖怪にもあるんだが怪異の奴らほどじゃ無いしな」
「0時にしか現れないとか、学校の三階三番目のトイレにしか現れないとかですよね?」
「そんな感じだな。そいつらは話によって存在が場所と時間、現象と強く結びついてしまってるから自由が利かない代わりに自分の領域だと強力だからあまり関わらないようにしろよ」
「は~い、もし関わってしまったらどうすれば良いですか?」
「まずは、目を合わせないことだな。目を合わせるという事はお互いが存在を把握するってことだ。見えているなら繋がれるし、見えていないなら繋がりを持つことが出来ない。目は程に物を言うって言うだろ?感情を読まれない為には目を合わせることは止めておけ」
目が合うから俺は妖怪と関われるのだから、目を合わせなければ関わる事は無いのか。人間相手でも目を合わせた時にどうもこっちの感情を読まれているんじゃないかという、そこはかとない違和感や不安を覚えるのに妖怪相手だと目を合わせてしまったら感情が剝き出しにされそうだ。
「次に言葉を交わさないことだ。言葉を交わすという事は、意思の疎通をするという事だ。よく質問をしてくる怪異が居るが、もし言葉を交わせば繋がりを作り約束をしてしまえばそれは強力な契約となってしまう。どんな質問にも決して答えるな。一度契約を交わしてしまえば、それを破棄することはかなり難しい。だから、相手の口車に乗るなよ。あいつら怪異は厳しい制限の所為で、自分と交わるもの以外には手出しできないからな」
「でも、怪異って妖怪なんですよね?それなら、何時もみたいに話して解決とか・・・・」
「存在が現象と強く結びついているって言っただろ?あいつらは一種の妖怪だが人間に害をなす現象のようなものなんだ。俺達みたいに意識や理性が持ち合わせず、ただ作られた話通りに害をなす現象それが怪異だ。こいつらとは意思の疎通なんて出来ないし、良心なんて持っちゃいない。あいつらは妖怪の中でも特別で異質なんだ」
「じゃあ、何時もみたいに仲良くすることは・・・・」
「無理だな」
怪異も妖怪ならば夢食さんや黒猫さんみたいに、楽しく話したりできるんじゃないかと思ったけどどうやら違うみたいだ。理性も無くただ人を害する存在それが怪異、妖怪であって妖怪では無いのか・・・・本当に危険な奴らみたいだ。
「でも、そんな危険な奴ら陰陽師が退治とかしないんですか?」
陰陽師は妖怪から人を守る役目を持っていると夢食さんは言っていた。ただ害をなすような相手を放っておくなんて、可笑しいと思うのだが・・・
「あいつらは人の話がある限り存在し続けられるから、陰陽師でもお手上げなんだよ。被害があった場所で、祓ったとしてもその怪異の話をされた違う場所でまた何事も無いように復活するから、祓っても祓っても切りがない。怪異を完全に消し去るには、その怪異の話を全ての人間から忘れられるしか無いんだがそんなの無理だろ?」
「不可能ですね・・・・」
大昔の情報伝達が進んでいない時代なら可能だったかもしれないが、今はネット社会であり情報伝達技術が発達している。一度インターネットに載せた物は完全に消えることは無いし、一度投稿されただけ多くの目に晒されてしまう。もし爆発的に人気が出れば、あっという間に全国に話が広がるだろう。そんな世の中で、人々の記憶から完全に消し去ることなんて無理だ。
「それにあいつらは個という存在が無いんだ」
「どういうことですか?」
「怪異って同時に色々な所で起きるだろ?例えば、A校で花子さんが居たとする。だけどB校やC校でも同じ花子さんの怪異の話が有る。さて、どれが本物だ?」
「花子さんっていう妖怪が複数に居るんじゃないんですか?」
猫又という存在は種族名であって中には黒猫も居れば三毛猫も居るように、たくさんの個があるってことじゃないのか?
「残念、全て同じ花子さんだ」
「え・・・・」
一体どういう事なんだ?
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