ゲームセンターと・・・・モフモフ?
カラオケを堪能した俺達は次にゲームセンターに来ていた。俺達と同じ制服を着た客もちらほら見かけるが、知り合いは居ないみたい。まぁうちの学校かなりの人数が居るし同じ制服だとしても先輩だったりと知り合いと出会う確率は低いだろう。
「何やる?」
「やっぱUFOキャッチャーだろ!」
「最後にレーシングゲームもやろうよ」
「シューティングゲームも外せないな」
訪れたゲームセンターはかなり大きく多くのゲームが揃っているので、どれを先にやるか迷うがまずはUFOキャッチャーをやることに。大きなぬいぐるみから小さなアクリルスタンド、お菓子にフィギュアなど数多くの景品を一つ一つ見ながら気になった物があればやるという事を繰り返した俺達。
「豊作豊作~」
「くそぉお、金溶かした・・・・」
「ふむ、中々の触り心地だな」
「よくそんなデカいの取れたな」
多くの景品を抱えにっこりと笑っている日向はアニメのグッズからお菓子まで色々なUFOキャッチャーに挑戦し、どれも数百円で取りこの中で一番上手いのは意外にも日向だった。そして、数千円使ったというのに何一つ景品が取れず項垂れているのは爽太だ。爽太が狙った景品はクッションやマットなど大きな商品で難しく全く動かすことが出来ず、日向が代わろうかと聞いたが「いいや、こういうのは自分で取るからこそ意味があるんだ!」と言って挑戦し続けた結果がこれだ。
「中々の可愛さだな」
「良かったな」
大和はと言うと白熊をデフォルメした大きなぬいぐるみを五百円で手に入れていた。真顔でぬいぐるみを揉むその姿は中々にシュールだが、喜んでいるようで良かった。俺はというと、チョコレートの大箱に挑戦し五百円ほどで無事確保できた。こういうのって普通に買った方が安かったりするけど、みんなでゲーセンで取るっていうのが楽しいんだよな~
「くそぉ・・・・UFOキャッチャーでは負けたがレースゲームで絶対勝ってやる!」
そう言って泣く振りをしながらレースゲームへと走って行った爽太。
「何時から勝負してたんだよ」
「あらら~」
「勝負か・・・・負けるつもりは無い」
「こっちはなんかやる気になってるし」
呆れ顔の日向とやる気に満ちている大和と一緒に爽太を追いかけようとしたが、視界の端に何か違和感を感じ右を向くと、そこにはネズミをモチーフにした景品が入っている台の前に、二人の女子高生が立っていた。制服は別の学校のものだが、ゲームセンターに女子高生が居るのは何ら可笑しなことでは無い。だがその女子高生たちは普通ではありえないものが付いていたのだ。
「尻尾だよなあれ」
そう、普通の人間には付いていない尻尾がスカートの上から飛び出すように垂れていたのだ。一人は肩程の茶髪に、先端に行くほど白くなる黄金色の尻尾を持ち、もう一人は黒髪のボブに丸く太く先端は黒くなっている尻尾を揺らしながら何やら楽しそうに何かを話している。そこまで距離が離れておらず、普通だったら聞こえる距離だがゲームセンターの中は多くの人の声とゲーム台による電子音そして店内を流れ大音量のBGMにかき消され何も聞こえない。どうしても、気になったので近付こうと足を踏み出そうとした時
「覚君何してるの~?」
「え、あ日向」
「ん~あ~もしかしてナンパ~?」
「違う違う!」
「え~怪しい~。女の子が気になってるところ悪いけど爽太君と大和君が闘志を燃やしながら待ってるから強制連行でーす」
おそらく妖怪だと思う二人に歩み出そうとしてたところを見た日向はにやけながら俺を揶揄いながら背中に回り押して二人の元へと連れて行かれながらも視線はどうしても尻尾を生やした二人を追ってしまった。歩くうちに機会に遮られたことによって諦めレースゲームの前で俺達を待つ二人の元へ行くと。
「何かあったのか?」
「腹でも壊したか?」
「それがさ~二人とも聞いてよ~覚君ってば女の子ナンパしようとしてたんだよ~」
「何だと・・・・俺達を裏切るつもりだったのか!?」
「敵前逃亡は許さぬぞ」
「だから違うって!」
三人に揶揄われながらもレースゲームに挑みからかわれた仕返しとして一位をつかみ取り、次はシューティングで勝負だと歩き出す爽太のについていきながらも妖怪だと思われる二人が居た場所を見てみたが、もうそこには姿は無かった。残念に思いながらもゲームセンターを楽しみ、時折周りを見渡し探したが帰る時間になってもその二人を見かけることは無かった。
「って言う事が有ったんですよ」
「なるほどなー」
そして今俺は朝の仕事を終え一緒に休憩をしている夢食いさんにこの事を話してみると、特に驚いた様子を見せる事無く淡々とフルーツサンドを口に運んでいる。
「あの子達って多分妖怪ですよね?」
「だろうな。む、これ当たりだな」
「何が入ってるんですか?」
「杏子だ。杏子は日持ちがしないから生で中々食べれないんだよ」
「へ~こっちのみかんも凄い美味しいですよ。いつもご馳走様です」
「あぁ気にするな」
バイトの休憩時間になる度に毎回何かしらのお菓子を出してくれるのだが、どれも甘いものばかり。甘いものは好物だからすごく嬉しいんだが太りそうでちょっと心配だ。
「あ、話が逸れちゃいましたね。それで、あの子達って何の妖怪なんですか?」
「ヒント、有名な動物」
どうやら素直に教えてくれる気は無いようだ。有名な動物といえば犬や猫だけどあの二人の尻尾は違っていた。他に有名なものだと、最近はカワウソとかリスとかも人気らしいけどそれとは違う。
「ヒントその2、日本に昔から居る動物」
昔から居る動物か~俺そこまで歴史に詳しく無いんだよな~。あの二人の尻尾の特徴をよく思い出してみると一人はかなり毛並みが良く艶々と光り毛の量が多く先端は細くなっていて、もう一人は丸く太い尻尾が印象的だ。これに当てはまる動物といえば、つい最近動画で見た気がするぞ。確か・・・・
「狐と狸ですか?」
「せいかーい」
「・・・・狐と狸が化けるって本当の事だったんですね」
当てれた喜びよりも、こんな都会に狸と狐が居て本当に人間に化けることに衝撃を受けているとそこに追撃するように夢食さんはなんて事の無いことのように言う。
「狸と狐は割とそこら中に居るからまた見かけることになると思うぞ」
「そうなんですか!?狐と狸が住む場所無くないですか?」
「まぁ純粋な奴は殆どいないけど、混ざった奴らは普通に人間として生活してるからな。案外妖怪はそこら中に居るもんだぞ、すぐそこの通りにだって猫又が居たり」
「ちょちょ、ちょっと待ってください!純粋な奴ってどういことですか?それと、混ざった奴らとは!?」
次々と話される新情報を処理しきれず一度待ったをかける俺。
「純粋な奴っていうのは人間で言う純血の奴らの事を言うんだ。妖怪っていうのは、概念と結び付いてはいるが動物なのには変わりない。だから、番を持ったりして繁殖するんだが狐は狐と狸は狸とみたいに種族内で相手を持つことが基本なんだ。人間だって人間としか基本繁殖しないだろ?」
「でも、違う種族が交わることって自然界だとあったりしませんか?ライオンと虎の子供が生まれたってテレビで見ましたよ」
「だから基本はって言っただろ。古くから同じ種族だけで繁殖して生まれたやつらを他の生き物や概念が混じっていない純粋な奴って言うんだ。それに対して混ざった奴は、他の種族と混ざり存在を薄めたものを言うんだ」
「ハーフみたいなものですか?」
「今風に言うとそうだな。妖怪の中には人になることが出来る奴らが居るからそういった奴らが人間と混じったことによって妖怪の要素と人間の要素が混じった奴が生まれるんだ。そうやって生まれた奴は基本的に人間の中で過ごすから、都会でも見かけたりするんだよ。恐らくだがお前が見た二人もそういった者だろうな」
じゃあ、あの子たちは狐と人間、狸と人間のハーフかもしれないってことか!確か夢食さんは獏の先祖返りだって言ってたけど、夢食さんも同じような存在なのかな?
「夢食さんもですか?」
「あ~う~ん・・・・まぁそんな感じだ」
「その言い方絶対違うじゃないですか!」
「俺のはややこしいんだよ」
「え~」
「はら、話し戻すぞ。さっきお前はハーフって言ってたが一度混ざった血と存在は消えることが無い。血が薄まったとしても、代々妖怪の特徴が出る家系もあったりするんだ。故に親が必ず妖怪だとは限らない。本当に昔の先祖が混ざったことで妖怪としての力は殆ど無い奴らが今では多いな」
「そうなんですか・・・・そういう人達が多いって言ってましたけど、どれくらい居るものなんですか?」
「千人に一人ぐらいは居るんじゃねーか?」
「え、そんなに居るんですか!?」
多いとは言っていたけどそんなに居るとは思わなかった。うちの学校は三学年合わせて千人くらい居るし、もしかしたら妖怪の血を引いてる人間がいるかもってことだよな。
「まぁ、これは血を引いてる人間がそれぐらいだってだけで妖怪の力を自覚している奴は殆どいないけどな。流石に現代までとなると血が薄まり過ぎだし遥か昔過ぎて、先祖の事を知らない人が殆どだからな。お前も自分の先祖について話せって言われたら無理だろ?」
「・・・・・爺ちゃんくらいなら」
「まぁ大体の人そうだろうな」
夢食さんの言う通り自分の血筋なんて気にしたこと無いし貴方の先祖はどんな人で何をやってた人なんですかって聞かれても答えられない。言われて辿ろうとしても、記録なんて残って無いし聞ける人も居ない。そうやって、自分が妖怪の血筋だって事も忘れてしまうんだろうな・・・・
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