あっという間に金曜日

 それから俺は毎日求眠堂でバイトをしたが纏さんのような妖怪を連れたもしくは妖怪自身のお客さんは来ず人間のお客さんだけだった。新しい妖怪に出会えることを期待してたが、会えず残念だがその分仕事は結構覚えたし一人で部屋の掃除が出来るようにまでなれた。アロマ系統はまだまだだけど、夢食さんはゆっくり覚えていけば良いと言ってくれてるので、お言葉に甘えて焦らずゆっくりと覚えていこう。面白い体験が出来ると思ったがバイトは特に変わらずだったけど、俺には新たな日常が増えた。それは・・・・


「それじゃあ、今日の妖怪講座だ」

「待ってました!」

「あら、今日もやるのね」

「ほんと、一体どういう心変わりなんだか」


 バイトから帰り父さんがリビングに居る時限定のイベントである妖怪講座だ。毎日のように父さんに妖怪の事を聞いていたので、父さんもノリノリになりそこに兄貴と母さんが加わり家族全員で妖怪の話を聞くことになったのだ。ネットで調べるより、父さんの方が詳しいし面白い話が聞けるから俺はこの時間が楽しみになっている。


「今日の話題は、猫又についてだ。猫又とは長年生きた猫が妖怪化した存在で尻尾が二股に分かれているのが特徴だ。そして、猫又は人を惑わし人間を山へ誘い込んでその肉を食らったという伝説が残っている妖怪だ」

「猫なのにこわ!?」

「あら、おっかないネコさんね」

「現代では、猫という生き物は愛玩動物として可愛がられているが狩りをする獰猛な肉食動物なんだ。猫は夜行性であり闇夜の中でも光る眼、人を惹きつける魅力から古来より魔性のものとされ恐れられていたんだ」

「え~俺全然怖いと思わないけどな~」

「そうね~ネコさんは可愛いって感じよね」

「まぁ現代人だとそう思うよな。だけど、古代だと猫という存在は色々なオカルトと繋がってるんだ。做夜、思いつくものはあるか?」

「古代エジプトでは猫は神聖な生き物とされ、女神バステトは猫の姿をしてたとかか?」


 静かに聞いていた兄貴に質問すると、少し驚いた様子を見せたがすぐに答える兄貴


「その通り、古代エジプトでは猫崇拝があったほど猫というのものは神聖な生き物であり魔術と関係する生き物だと言われていた。中世では魔女の使い魔だとされ多くの猫が悲しい目にあってしまったことがあるな。日本でも猫を殺すと7代まで祟られるなど全世界共通で猫というのはオカルト要素と結び付いている」

「ちょっとわかる気がするわ~」

「え?マジで?」

「えぇだってネコさんって不思議な魅力があるでしょ?今の人でも猫の事を崇めるかのように一緒に生活している人だっているじゃない。だから昔の人はネコさんの事を恐ろしいものだと考えちゃったのかもって思ったのよ」

「あ~確かに。俺の友達はもはや猫の下僕になって喜んでいる奴居たしな~」

「そんな猫だが、猫又以外にも化け猫と実は色々妖怪になっている者が多いんだ。猫に関する俗信によって、他の妖怪と混同されたりと恐れられている猫だがここで問題」

「お、バッチコーイ」

「猫の対になる動物と言えば犬と答える人が多いでしょう。この二つの動物は昔から人間の生活と深く関わってきましたが平安時代の貴族達に好まれ飼われていたのはどっちでしょうか」

「う~ん・・・・」

「犬じゃないかしら?昔は狩りには犬を連れて行っていたのだもの」

「猫は気紛れだから貴族の人には人気無さそうだから犬!」


 貴族の人達って人々を従わせる立場だったと思うから、従順な犬の方が好まれてたんじゃないかな?


「做夜はどうだ?」

「猫」

「お、割れたな。正解は猫だ!」

「あ~外れた~」

「あら、残念ね」

「做夜、なんで分かったんだ?」


 外してしまった事を母さんと残念がっていると、その様子を見て一人勝ちした兄貴がにやにやと笑っている。それを見た父さんが兄貴に聞くと堂々としながら


「平安時代の和歌や俳句に猫が結構出てくるから猫の方が人気なんだろうなって」

「お、そういうことか。確かにあの有名な枕草子にも猫についての話が登場する。よく知ってたな」

「中学の歴史の担任が猫好きでその話ししてたんだよ」

「なるほどな。では詳しい解説をするとしよう。平安時代の貴族に猫が好かれていた理由としては一条天皇が愛猫家でありその流れに乗り飼い始めたというのもあるが、猫は穢れを家に持ち込まない存在として犬より好かれたんだ」

「穢れって?」

「穢れというのは、人や場所に悪影響を及ばす悪い気だと思ってくれ。穢れは死に関連して発生するため、死体などを持ち込んでしまう犬より猫の方が好まれたんだ。しかも、猫は自分の死期を悟ると飼い主の前から消えてしまう。これによって家の中で死ぬことが無いため穢れが発生しない。他にも理由があるがこんな所だな」

「へ~」

「昔はそう言う事が深く信じられてたのね」

「今日はここまで、平安時代の話をしたから次は平安時代に有名な妖怪についてだ」

「楽しみにしてる!」


 父さんの妖怪講座が終わったので俺は部屋に戻り明日に備え眠りについたが、話を聞いた影響か猫に囲まれる夢を見てモフモフを堪能出来たので良い一日だった。明日も頑張ろう。


 いつも通りに起きて登校したが今日は、みんなと遊ぶ予定を立てた金曜日。結局何処に行くかは決めて無いけど、駅の近くだったら店はなんだってあるし取りあえず駅周辺で色々見ながらぶらつくことになった。放課後を待ち遠しく思いながら授業を受け放課後になると早速俺達は駅へと急いだ。


「んじゃまずはカラオケ行こうぜ!」

「うむ」

「良いよ~」

「りょーかい」


 まずは爽太の提案でカラオケに行くことにした俺達。駅の近くには沢山のカラオケ店が有ったが特にこだわりが無いので、店選びは爽太に任せて俺は何を歌おうかと考える。自分で言うのもなんだが歌は下手では無いが、曲のレパートリーが偏っていてみんなが分かりそうな曲というのが少ない。もっと色々聞いとけばよかったなと思いながら、決めたカラオケ店に入り部屋に入ると一番手は爽太となった。


「♪~」


 上手いな~・・・・爽太が入れた曲は最近の動画でよく聞く曲でありアップテンポの曲なのに難なく歌っている。学校で話すときも最近の流行をよく知っているし、話題が無くなることが無い爽太は陽キャという種別になるのだろうか。二番手に歌ったのは、日向だ


「いえ~い!」


 俺でも知っているようなアニソンをノリノリで歌う日向は歌う事を楽しんでいて、見ていて楽しいし曲の途中にある台詞まで完璧なのは少し笑ってしまった。そして、三番手になったのは俺だ。俺は数年前の教師ドラマの歌を歌う事にしたが、この二人の後はちょっとやり辛い!


「♪~」


 何とか歌い切った俺にみんなは拍手してくれたが、最近歌う機会が無かったから所々音程を外してしまっていた。また来ることがあるだろうから少し練習した方が良さそうだな~

 さて最後を務めるのは大和だ。見た目と性格から演歌でも歌うんじゃないかと期待したが、その期待は外れ有名なバラード曲を歌う大和。


「♪~~」

「うっま!」

「おおお~」


 クッソ上手い!普段無口であまり喋らないが声が良いなと思ってはいたが、バラードとの相性が抜群で聞いていて心が揺さぶられてしまう。大和の意外な一面を見た俺達は盛り上がりながらカラオケを楽しんだ。


「あ、俺飲み物取ってくる」

「いってら~」


 はぁ、入学当初は友達を作れるような状況ではなく解決した頃にはグループが作られていて詰んだと思ってたけど無事に友達作れて良かった~折角の高校生活なんだから色々楽しまないと。高校生になった今やれることは格段に広がったし、やりたいことも沢山ある。こうやって前向きにこれからの高校生活を考えられるのは夢食さんが、悪夢を解決してくれたおかげだしバイトも頑張らないとな。アイスと飲みものを手に部屋に戻ると


「もう始まってるよ~」

「やっべ!」

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