妖怪と夢食さん
ひとしきり魅惑のモフモフを楽しみ気持ちが落ち着いた所で顔を上げると、夢食さんと纏さんは楽しそうに話していて同い年だとは聞いたけど一体どういう関係なんだろう?
「お、やっと落ち着いたか」
「あら、思ったより早かったですね」
「なんか俺の反応見て楽しんでないですか?」
「まぁな」
「妖怪が見える人は知ってますけど、殆どが既に知っている人ですから新鮮なんですよね」
「やっぱり!」
「そんなにショックは受けて無さそうだったからな」
人が衝撃の事実を聞いて複雑な心境を抱えてるのにその反応を楽しむのは流石に酷いと思います!いや、確かにそんなにショックは受けてなかったけど!その人の反応を楽しむ姿なんか2人似てませんか!?
「なんか2人似てませんか~?」
「え、そうですか?」
「そんな事ねーと思うけど」
「絶対似てます!それはそうとして2人はどういう関係なんですか?」
「どういう関係って客と店主」
「妖怪の事を色々知ってる老け顔さん」
「おう、良い度胸じゃねーか」
「うふふ、冗談ですよ」
「この腹黒が」
「え~酷いです~。朧月君もそう思いませんか?」
酷いと言いながら纏さんはニコニコと笑ってるし、その様子を見て夢食さんは呆れ顔だ。口調もいつも通りになってるし、絶対この二人仲いいだろ。
「え~・・・・」
「ほら、初対面に正体見抜かれてるぞ」
「夢食さんの正体だってバレてると思いますよ」
「俺は隠してねーから良いんだよ」
「私だって猫なんか被ってませんよ」
次々と毒のある冗談を言い合う二人。纏さんは所々毒があるけど、人を馬鹿にした感じがしないし、飄々とした態度があまり変わらない所が少し夢食さんに似てる気がする。だけど、この2人の出会いと仲良くなったきっかけが全然想像つかない。性格は似ているけど、夢食さんはわざわざ人に関わりに行くタイプじゃ無いし纏さんはからかいがいの無い夢食さんに話し掛ける事も無いだろう。どうやってこの二人が出会ったんだ?
「表面上だと優しそうに見えるのが厄介なんだろうが」
「それは貴方もじゃないですか」
「俺は仕事の時だけだっつーの」
「それはそれで問題だと思いますけどね」
「あのー」
「ん?なんだ?」
「どうしたの?」
「お二人ってどうやって出会ったんですか?見た感じ纏さんが睡眠に関する悩みは抱えて無そうなんで、お客さんって事は無いですよね?」
「客と言えば客だが」
「色々あって話が長くなってしまうから簡潔に言うと、モフちゃんの元気が無くなって困ってたらある人にこの店を紹介されたの。それで出会ったのがこの夢食さんって訳なのです」
「へ~夢食さんって妖怪の相手もしてるんですか?」
「客の半分は妖怪だぞ」
「初耳なんですけど!」
「言って無いからな」
いや、そんな大事なこと先言っておいてもらえませんか!?え、つまり俺が接客した人の中に妖怪が紛れてた可能性もあるってことだよな。全く気が付かなかったんだけど!
「ちなみに言っておくと、お前がバイト始めてから初の妖怪の客だからな」
「あ、そうなんですか」
「おう、初対面でどういうリアクションをするか楽しみだったんだがな~・・・・よりによって脛こすりか」
「のっぺらぼうとか一つ目小僧、山姥とか面白い相手なら良かったかもですね」
「だな、流石に牛鬼とかヤバいの相手は可哀そうだがもうちょっと腰を抜かすような相手が良かったな」
「土蜘蛛とかがしゃどくろとかは如何ですか?」
「んなの来たら大変なことになるっつーの!アホか!」
「面白いと思ったんですが・・・・残念です」
「がしゃどくろなんて俺の店に用ないだろ・・・・」
妖怪についてよく知らないから名前を言われてもどんな奴か分からないけど、この二人が楽しそうに話すって事は絶対ろくでもない相手な気がする。初めての相手が脛こすりで本当に良かった!ありがと~脛こすり。感謝を込めてまた撫でる俺を見ながら
「犬神でも良かったかもしれませんね」
「お前はどうしてそんなヤバい奴ばかり上げるんだよ」
「いえ、モフモフが良いのかと思いまして」
「せめて、猫又にしてやれよ」
「化け猫では?」
「・・・・まぁギリギリ」
「ちょっと不穏な話しないでください!てか、纏さんは脛こすり以外見えないんですよね?」
「そうですよ、ですので私には無害です」
「酷い!」
「大丈夫だ朧月、見えなくても害を与える妖怪は山ほど居るからな」
「何が大丈夫なんですか!?」
うぅ、二人して俺の事からかって!絶対に何時かやり返してやる!
「妖怪・・・・一体妖怪って何なんですか?」
「前に言っただろ違う進化を遂げた生き物だって」
「あの話本当の事だったんですか?でも、進化したにしては特殊過ぎませんか?人に見えなかったり、夢に入れたりって」
「妖怪は曖昧な存在だってさっき言っただろ。妖怪っていうのは生物と自然現象などが結び付いた存在な者も多いんだ。そして、現代ではそう言った曖昧なものや自然現象は現代では解き明かされてはいないが科学で説明できるもの、まだ理解が及んでいないものとして認知される。昔は科学なんて一般的じゃ無かったら、不思議な現象には不思議な生き物が関連していると考えられていたが、化学が進んだ今は妖怪や超常の存在を想像しなくなる。人というのは見たい物だけを見る者だ。故に実際には視界に入っているのに理性と知性が否定し居ないものだとして認識する。これが妖怪が人の目に見えない理由だ。勿論、その人間の性質も大きく影響するがな。脛こすりは、雨の夜に起きた低気流が動物と結び付き生まれた存在だから見えないんだ」
「ワフ!」
「へ~じゃあ、妖怪って全部普通は見えないんですか?」
「そうとも限らない、伝承にある鬼は人間の突然変異によって常人より筋力と背丈が大きくなり骨異常によって角が形成された存在だし山姥は前に話した通りだ。この二つの種族は脛こすりのように何かしらの事象に結びついたものでは無いから普通の人間の目にも見えてしまうんだ」
「そうなんですか・・・・ちょっと難しいですね」
「まぁ単純に自然現象と結び付いた者は見えない物が多くて、ただの進化や突然変異の場合見える物が多いと考えればいいだろ。生まれる時は自然現象と結びついていなかったのに後々人によって語られたことによって結び付いてしまった奴も居るから複雑なんだよ」
夢食さんの話は少し難しくて全てを理解できたわけじゃ無いけど妖怪が不思議な力を持っていたりするのは事実みたいだ。普通の人でも見られる妖怪が居るって事は、現代で偶に報道される未確認生物とかはそれだったりするのかな。
「獏だって後の伝承で力を変えたんだ。元々は夢を食うなんて事は無かったのに人に語られることによって夢が食べられるように変化した。曖昧な存在だからこそ想像する人々によって存在が引っ張られてしまう。これは少し夢と似てるな」
「あ、確かに」
「つまりは妖怪は動物が自然現象と結び付き進化した者だと思えば良いんだよ」
「なんか纏め方雑な気が・・・・でも、何となく理解出来ました!つまり、普通の人でも見れる妖怪を連れてくれば纏さんを驚かせることが出来るんですね」
「え、どうしてそうなったの?」
「お、良い心掛けだ」
見えるって事は驚くことも出来るってことだ。やられっぱなしは嫌だし、もっと妖怪の事を知って驚かしてやろっと。
「なかなかいい度胸を持ってるみたいだね」
「じゃないとこの店でやってけねーからな」
「あ、そうだ!妖怪について聞きたいことがあったんだった!」
「ん?知ってる事なら答えてやるぞ」
「昨日父さんが言ってた天狗ってマジで居るんですよね?」
「おう、居るぞ」
「おおおおお、やっぱりそうなんだ!会えたりしますか?」
「まぁ行けば会えると思うが・・・・何でだ?」
「いや、父さんが会った天狗一度は見てみたいなと思って」
「なるほどな~まぁ今度連れてってやるよ。どうせ用事もあるしな」
「本当ですか!?やった~!」
「ただの子供を妖怪の世界に巻き込んで良いんですか?」
「こいつの体質的にこれから色々な奴と遭遇するだろうから教えちまった方が安全なんだよ」
「なるほど」
天狗に会ってみたら何を聞こうかな~そうだ質問を増やすために父さんから色々聞いてみようかな。天狗が居るって事は河童も居るだろうし、他の妖怪も居るはずだ。このお店は妖怪相手もするって言ってたし、これから色々な妖怪と出会うだろうしこれは本格的に父さんから話を聞いた方が良いかも!父さんが聞いたら羨ましがるだろうな~言ったら駄目だけどね。
暫く三人で話していると、あっという間に夜になってしまったので解散となり俺は妖怪と出会えた喜びにうきうき気分で家へと帰った。あ、ちなみに纏さんの用事は、お気に入りのアロマソルトが切れたから買いに来たそうだ。
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