異世界への使者episode3 温水プールレストラン

@wakumo

 異世界への使者episode3 温水プールレストラン

「オホン!私がこの度、当、温水プールレストランの支配人になった『ほがら』であります。私が支配人となったからには、設備は最高!サービス最高!味も最高!売上も、もちろん最高!の超一流レストランを目指して、日夜たゆまぬ努力をしていこうと思うのであります。

 えー、ところで君達、このレストランで一番注文の多い料理はなんだね」      

「それは支配人もちろん、あったかーいうどんでございます」

「う・ど・ん…かね?」         

「いーえ、何と言ってもほかほかの肉まんでございます」

「肉まん、ほうほう」

「いーや、それよりもあつあつホコホコのたこ焼きのほうがやはり人気は上ではございませんか」

「ホウ…では、なにかね、体がポカポカしてくるような、思わずフーフーと息を吹きかけないと食べられない様な、そういった物がよく売れるのだね」              

「そう!そのとうりでございます」

「おや、ちょっと待って下さいよ。なんですか?すると、温水プールだと言うのに、この店に入ってくるお客さまというのは、寒さにガタガタと縮こまって、唇を紫にして、なにか温かい物でも食べなければどうにかなってしまいそうな、そんな人々の姿ばかりが想像されるではありませんか」

「オオ!支配人大正解!

 そうなんです。皆さんこの温水プールレストランにこごえながら入っていらっしゃって、あつーいうどんとか、ほかほかの肉まんとか、あつあつのたこ焼を注文されるのです」

「はてさて、それでは温水プールと言うのはちょっと変ではありませんか」       

「変、おや?支配人、なにか、勘違いしておいででは?ここは、温水プール、温泉プールではないのですよ」

「うおっほん、君はなにかね。私に意見をしようというのですか。そんな事はわかっていますよ、そんな事は…

 しかし、何故、温泉とは違うのですか?

 私が想像するのに、温水プールといえば、こう体を包み込むような、手足を自由に伸ばしてリラックスできるような、そんな、何とも言えない温もりの中で、母親の体内に留まっているような安心感を味わいながら、心を開放させて、さながら…」  

「やはり、何か勘違いなさっておられる。支配人、少々勘違いされておられる様でございますので、私から温水プールについての御説明をさせて頂きます。

 温水プールの水は…」

「み・ず?」

「さよう水でございます。足の指を水面にちょんと付けた瞬間、ん、これはなま温かい、入れるぞ、と、一瞬思うわけであります。

 そこで、足首まで入れてみる、しかしここいら当たりからちょっと疑い始める。ああ騙されたのではないか、温水とは名ばかりで水よりはましと言う程度かも知れない、と。

 そのように躊躇しながらも、乗りかけた船、皆さん戸惑いながらも勇気を振り絞って肩まで入られる訳です。 

 ここまで来ればOK!大丈夫でございます。いくらぬるめの水と言いましても、やはり水よりは多少なりともあったかい訳でして、中に入ってしまえば出るまでは快適なのですよ。

 ところがそれもプールの中に入っている間の話で、一度プールサイドに上がってしまったなら、もう寒くて、ブルブルの、ガタガタの、ファ、ファ、フワァークションでございます」

「うーん、なるほど…それではもっと温度を上げて、皆さんに御満足して頂こうではないか」

「またまた支配人、それがそう言う訳には行かないのですよ」

「なぜそういう訳に行かないのかね?」

「ご説明させていただきます。温水プールの温度が温泉程熱ければ…」

「うん、熱ければ?」

「みなさん思わずドッぷりと漬かって、泳ぐ人はいないでしょう。だからと言って中途半端な温度にしてしまうと、大腸菌が繁殖してプールどころではありません」      

「それで、ブルブルで、ガタガタでフワァークションと言う事になって、あったかーくて、ほかほかで、あつあつホコホコ、になるんだね」  

「いやはや、それでは当レストラン自慢のオードブルや、素晴らしく美味しい、ほっぺたが落ちそうなシャーベット、その他あれこれと用意された最高の品々を味わって頂けないのも頷ける。

 しかし、それにも増して、皆さんが寒さに震えていらっしゃるというのはサービスをモットーとしている私としては何とも残念な気がしますね。もっと皆さんに楽しんでいただける良い方法はないものでしょうかねぇ。

 もっと、あったかで、心地良い香りがして、うーん音楽も欲しいねぇー。小鳥のさえずりなんかもムードが出ますよ」

「いやあ、段々イメージが浮かんで来ました。支配人、いっそこの温水プールを、全体、南の島にしてしまったらどうでしょう」

「南の島?」              

「そうです、ハワイでも、グアムでもようございます。そんな島をそっくりこの場所に再現することが出来たらどんなに素晴らしいでしょう」                 

「それは、君、君、最高に良い考えですよ。でどうやって?」

「さあ、それはこれからゆっくりと考えることにいたしましょう。幸い、みなさんから特に苦情があったという事では無いのですからして、あわてる事はありません」     

「いやいや、私が早く実現したいのですよ。いやーワクワクします。で、どんなふうに」


…ほがら支配人のホテルマン精神によって突如として始まった、温水プールレストラン改造大計画は、こうして慎重にしかも迅速に進められていくことになったのです。                          

……やがて、

 プールは、悠然と姿を変え、潮の香り漂うサーフィンプールと、大きなやしの木影に、眩しいくらい太陽の光がサンサンと差し込む、トロピカルアイランドに生まれ変わりました。          

「…支配人!、余りの快適さに、もう人気は鰻のぼり、場内は溢れるほどの人・人・人でございます。当レストランにもシャーベット、アイスクリーム、各種フラッペとプールならではの注文が殺到しております」

「それはそれは、有り難い事ではありませんか。さあさあどんどんお作りして、皆さんに喜んで頂いて下さい…」         

「ホホホホッ、マネージャー君のアイデアは最高でしたね」

「ははっ、お褒めにあずかって光栄でこざいます」

「まず誰も考えなかったでしょうね。太陽と海もろとも小さな島をここに持ってこようだなんてね。で、どうやったの?」

「それは…秘密ということで…」

「そう、私にも言えない。ま良いか。こんなに大盛況なんだから…

 いやー、これは企業秘密、企業秘密ですよ。                

 さてと私もこうしてはいられません。表の看板を取り替えて来るとしましょう。    

すばらしいネーミングではありませんか。 ホーホッホッホ」            

 ゛レストラン南の島″         

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