第42話「天下の大悪人、説得する」
秋先生と話をしたあと、俺は
俺は
勝手に帰国するわけにはいかないし、無断で秋先生と冬里さんを合流させるわけにもいかない。ちゃんと、責任者の許可を取っておく必要がある。
そんなわけで、俺は首都に戻り、炭芝さんと話をしたのだった。
「あの
事情を伝えたあと、炭芝さんはおどろいたような声をあげた。
俺は一礼して、
「さすがは炭芝さまです。秋先生のことをご存じでしたか」
「無論です。王弟殿下もあの方を、何度も
炭芝さんは
「私が使者として話をしたこともあります。ですが『興味がない』ということで、いつも拒まれてていたのです」
「秋先生は雷光師匠の師匠……
俺は答えた。
「その
「玄どのが
「ぼくは秋先生と娘さんを、藍河国にお連れしたいと思っています」
俺は
「雷光師匠が戻られれば、師匠は秋先生と会うことができます。
母上は身体が弱い。
季節の変わり目には、よく体調を
最近は良くなってきているけど、念のため、秋先生に
父上は母上のことが大好きだ。
母上が早死にしたら気落ちして……そのせいで、戦場で不覚を取ることもあるだろう。もしかしたら、それが父上が『剣主大乱史伝』に登場しない原因なのかもしれない。
秋先生の力を借りれば、そんな展開は防げるはずだ。
俺の家族は、なにがなんでも生き残ってもらう。
父上も兄上も母上も、星怜も、白葉たちも、全員。
そのためにできることは、なんでもするつもりだ。
「王弟殿下は母のために、身体によい薬草を送ってくださいました。ぼくの父──『
「……確かに。そうですな」
「
ゲームでも、どうすれば燎原君のメリットになるかを、常に考えていた。
そんな人なら、俺の提案の意味もわかるはずだ。
秋先生が藍河国に来てくれれば、燎原君は貴重な人材を得ることになるんだから。
「よろしいでしょう」
しばらくして、炭芝さんは顔を上げた。
「
「ありがとうございます!」
「王弟殿下は多くの客人を養っていらっしゃいます。玄秋翼どのなら、間違いなく受け入れてくださるでしょう。おふたりの住居も、用意してくださるでしょう」
「感謝いたします」
俺は深々と頭を下げた。
「ただ、秋先生は『自分の食い
「そのような
炭芝さんは笑いながら、
「玄秋翼どのには、国境近くの町で待っているようにお伝えください。我々が藍河国に帰るのにあわせて、合流することといたしましょう」
「承知しました」
「それにしても……高名な医師で
「……え?」
「おや、ご存じなかったのですか?」
不思議そうな顔の炭芝さん。
「玄秋翼どのは
「そうだったんですか……」
知らなかった。
俺が知っているのは、
あの人はゲーム内では
そっか。秋先生は、もともと武術家だったのか……。
「よければ、武術の指導も受けてみてはいかがですかな?」
「機会があればそうします。秋先生は、どのような武術を?」
「『
炭芝さんの答えは、短かった。
「いわゆる『
そのあとで、俺は
「そういうことなら、僕も天芳と一緒に学びたいな」
俺の話を聞いた小凰は、迷わずにうなずいた。
「僕はこれからも、
「小凰はすごいですね」
「当たり前のことをしているだけだよ」
小凰は照れた顔で、
「僕の夢は、ふたつの国の者たちが、普通に一緒に暮らせる世の中にすることだからね。たとえば、奏真国と藍河国に生まれた者たちが、家族のように生きることだよ。夏は涼しい藍河国で暮らして、冬は温かい奏真国で暮らす……そんな生き方が、あってもいいと思わないかい?」
「そうですね。いいと思います」
本当にそう思う。
自由に行き来ができるということは、ふたつの国が平和だということ。
敵対せず、乱世にもならない、ってことだ。
「素晴らしい夢だと思います。ぼくも応援しますよ」
「うん。天芳なら、そう言ってくれると思った」
小凰は未来のことも、しっかり考えてる。
お母さんを奏真国に帰して終わりじゃない。
その先を、小凰は
すごいな。小凰は。俺も見習わないと。
「一緒に強くなりましょう。雷光師匠が戻ってきたときに、びっくりするくらいに」
「うん。約束だよ。天芳」
「はい。小凰」
こうして俺は小凰と一緒に、
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