第三回 ジュンくん

 私の初恋は、小学五年生の時だったと記憶している。

 私が通ったH小学校は木造校舎で、市内を流れる支流沿いにあった。ただ、二年の時に西地域から南地域に引っ越ししたために、通うのに少し遠くなった。

 さらに二年生となった私は、特別クラスへの編入となった。

 なぜそうなったのか今では確認しようがないが、当時の私は人見知りが激しく、一般クラスでは馴染めそうもないと判断したのだろう。

 そんな小学校、もちろん階段も廊下も木。

 机が二つ繋がったような、長方形の木造机も健在である。家庭科室のミシンは、もちろん足踏み式で黒いミシン。

 洋式トイレなど完備されておらず、和式である。

 まさに、トイレの花子さんがいてもおかしくはない。

 さて、五年生となった。

 当時、生徒会長的な男の子ジュンくんがいた。何という名前だったか忘れたが『ジュン』という名前があったことは記憶している。

 彼は私のいる特別クラス六組の前、五組の子でイケメンであった。

 所属クラブはテニス、クラスでは学級員長、漫画の世界の設定のようだが、実際にいたのだからご容赦願いたい。

 ま、イケメンかどうかは人の目によるが。

 私はこの『ジュンくん』にロックオンである。片思いというやつだ。

 五年生となると、多人数クラスに慣れるためなのか、私と何人かの子が授業を受けに行くことになった。

 私が行くことになったのは五組。『ジュンくん』のいるクラスだ。

 あいにく、席は離れていたが、当時の私はどんな心境だったのだろう。

 

――隣だったら。


 そう妄想したかどうかはわからないが、何日かして、私の座る席が『ジュンくん』の隣となった。

 私が教室に入ると、私の机は『ジュンくん』の物置き場。

 教科書やらリコーダー、体操着の山。

 私をちらっと見た『ジュンくん』が、慌てて片付ける様子は、今でも覚えている。

 小学校を卒業してから会うこともなく、私の初恋も儚く消えたが、今彼はどうしているのだろうか。

 

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