最終第7章 過去

 親父は俺が幼い頃に事故で亡くし、お袋は専業主婦だったため、今の家庭は貧乏だ。家も狭く、所々家の中は傷んでいる。そんな中で俺のお袋はすごく優しく、いつも俺が困った時など頼りになっていた。親父がいなくなって間もないときお袋は泣いていたが、一瞬だけだった。お袋は親父の死を受け入れて、その分俺が寂しくならないように愛情を注いで育ててくれた。だから俺はお袋に育ててもらった分、自分で家事などすすんで行った。俺が何かお袋のために行動すると、お袋はいつも俺を褒めてくれる。それが俺にとってのご褒美だった。

 

 15歳になって俺は高校に晴れて合格し、日が流れ、入学式の当日になった。俺が制服を着るとお袋が

「和夫、すっごくかっこいいよ!」

と、褒めてくれる。

「やめてよ、恥ずかしい。…でも、ありがとう」

高校生になってくると、親に褒められるのは流石に恥ずかしい。

「まあ、照れちゃって///」

お袋は俺を茶化す。

「も、もうそろそろ出発するから」

俺は扉の前に行った。

「はーい♡…そうだ和夫、無理しないで頑張ってね。」

お袋のその発言は、俺が少し内向的な性格であることをわかってくれてる証拠だ。

「わかった。行ってきます」

俺はそう言い、外を出た。


 校門で先生らしき人にもらったクラス分けの紙を見て、自分の教室を探した。

「1年4組…!」

自分の教室が見つかり、俺は中に入った。

 俺は黒板に貼ってあった席の場所を確認して、それから指定された場所に座った。

俺は一息ついた。これからどんな高校生活を送ることになるだろうと胸を膨らませた。

 すると、「ねえねえ、えーと…宮内くん?」と誰かに呼ばれた。おれは声のした方向へ目を向ける。

 女の子だった。生まれて初めて女子から声をかけられたので、俺は緊張した。

「あ、はい。宮内です」

俺は変な感じに挨拶したのではないかと焦った。

「あはは。私、大月紗幸っていうの。1年間よろしくね」

ニコッと笑顔で返してくれたので、さっきの不安はなくなった。むしろ、体温が上がっていくように感じた。

 これが、初めて紗幸さんと話した瞬間だった。

 

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見えないものの奥底に おみず @reqied

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