4章初め

「ただいまー」

詩織は玄関で靴を脱ぎながら言った。

「おかえりー!詩織、あなたの大好きな梨を食べやすく切っておいたよー!」

詩織はすぐさまカバンを置いてバタバタと洗面台に向かった。

「お母さんありがとう!」

手を洗い終えると、詩織は机に置いてある皿の上に乗せた梨をめがけて走った。

「いただきまーす!」

詩織はにこにこ笑顔になりながら梨を頬張る。詩織の見せる笑顔は私まで幸せになる。

「ふふっ、詩織は本当に梨が好きなんだね」

「らっふぇ、おいひいんひゃもん(だって、おいしいんだもん)!」

目を輝かせて応える詩織は、とても可愛らしかった。

いつも通り変わらない幸せ。…ずっと続いて欲しかった。

あいつさえ戻って来なければ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る