6章の主人公サイド
今日はやけに晴れていた。雲がひとつもなく、空は澄んでいた。
俺はまだ、あの幽霊に言われたことを引きずっていて、気分が悪かった。
『友達、彼女…、そんなもん所詮他人だ。気に入らなかったらすぐに切り離すだろう。…お前は霊媒師とか言ったな。俺たちみたいなやつと相手するんだろ?危険じゃん。お前の彼女も、言葉に出さないだけで、よくも私を危険なことに巻き込んだなと思ってるぞ。』
…そうだ。仕事の連絡が入った時はいつも結たちは承諾してくれるが、ひょっとすると我慢させていたのかもしれない。そして友達より仕事を優先してしまったから俺から離れていくかもしれない。だから、あの時俺は結たちから距離を置いたんだ。
俺がいなくても、3人は仲良くやっていけるだろう……。
そう思いながら重い足を運び、学校へ向かった。
⭐︎ ⭐︎ ⭐︎
終礼が終わった。私は帰りの支度を済ませて、離れた所にいる神を見た。今日も下を向いていることが多かった。あの日から一週間、私は神とはあまり話していない。むしろ、神が私から遠ざけているように見えた。
でも、私は知ってる。あの時、他の幽霊が神と話していたのを。そして、内容も覚えている。
私はかばんを持って、神のところに行った。
「神、一緒に帰ろ?」
と話しかけた所、
「…結。えっと、放課後は自習したいから今日はごめんな」
と返された。
「え…、あ、そうなの?…わかった。がんばってね。」
私は、そっとしたほうがいいのではないかと思い、神から離れた。そして、教室を出た。
校門を出たあと、私はこれまでのことを振り返った。
神は一週間以上元気がない。それはあの幽霊に言われたことかもしれない。最初はそっとしていれば、次第によくなると思っていた。でも、今も続いている。神はすごく優しいし、かっこいい。でも、一人で抱え込んでしまうことがある。だから、神はあの日からずっと苦しんでいる。
そっか、私はそっとしておくとか言い聞かせて、見て見ぬふりをしてたんだ。…私最低だ。
だったら私はどうしたい?私は、神を助けたい。だから…、今から戻ろう。学校を出てそんなにかかっていない。だから、まだ間に合うはず…!
私は来た道を折り返し、学校の方へ走って向かった。
⭐︎ ⭐︎ ⭐︎
結に誘ってくれたのは嬉しかったが、その気にはなれなかった。今、一緒に帰ったとしても、迷惑になるだけだろうと思ったからだ。だから俺は今、気分を紛らわそうと勉強をしている。現在教室にいるのは俺だけで、少しほっとしている。
しばらくして、勉強はけっこう捗り、苦手な単元が克服できたので、家に帰ろうと決めた。俺は勉強道具をカバンに入れ、席を立つ。そして教室を出ると、俺は鍵をかけた。
すると、足音が聞こえた。俺は聞こえた方角を向くと、結がいた。
「…結」
結は走ってきたのか、まだ息が荒かった。
「あ!えっと…忘れ物を取りに来たの」
「…じゃあ、これ鍵。渡しておくから、忘れ物見つかったら職員室に返しておいて」
俺はそう言って、結に鍵を渡した。そして俺が結を通り過ぎようとした時、結に「待って」と言われ、袖を掴まれた。
「結…?」
俺は振り向く
「…ごめん、忘れ物ってのは嘘。神、聞いて。話したいことがあるの」
結はそう言い、俺は立ち止まった。すると結が切り出した。
「…神、ここ最近私を避けているよね。それはどうしてなの?」
俺は言葉に出来なかった。でも次の発言で俺は動揺する。
「それって、もしかして神を連れ去ったあの幽霊に関係すること?」
「っ!どうして…」
「聞いてたの、私も。あの時、神がまだ幽霊といたのが見えて、少しだけだけど会話も聞こえてた」
結は両手で、俺の手を握る。
「…神にとっては私は他人かもしれない。でもね、私はそんなことで別れたりなんかしないよ。だって、神はすごく優しいし、どんなことでも努力して頑張っているのを私は知ってる。神の仕事を体験した時だって、自分の得意なことを生かして頑張っている神は本当にかっこよかった。だから私はそんな神を好きになったの。…でも、神は一人で抱え込んでしまう悪い癖がある。現に今、一番ひどいし。…だからお願い、私を頼って。私はずっと神といたい...。神だけが苦しむのは嫌!私は神の支えになりたい!!だからお願い、一人で抱え込まないで私を頼ってよ!!!」
俺は涙が流れた。結が今まで勝手に俺が距離を置いていたことの後悔、そして何より結が俺を心配してくれたことの嬉しさで、いろいろな感情が込み上げてきたからだ。
「…神、辛い時は泣こ?私がいるから、大丈夫だよ」
結は涙が出ながらも笑顔で言った。そして結はゆっくりと、俺を抱擁した。
俺は込み上げてきた感情が泣き声となり、溢れ出した。
「ううっ、うあああああああああああああああああああああ!!ぐすっ…、うああああああああああああああああああ!」
俺が泣いていても、結はずっと背中を優しく撫でてくれた。
しばらくして、俺は泣き止んだ。さっきまでの重かった空気が嘘みたいに軽くなったような気がした。
「神。泣き止んだ?」
「あ、うん。ありがと…」
俺が下を向くと、結は俺を抱きしめたままでいたのがわかった。ふと俺は冷静に考えた。すると俺は急に恥ずかしくなった。
「…結、もしかしてなんだけど、俺たち結構すごいことしてない?」
すると、結は顔を上げた。
「あはは、今更気づいたの?けっこう長い時間抱きしめあってたよ。」
それを聞いて、俺はもっと恥ずかしくなる。
「えっ」
「えへへ、まあ私もこの状態はちょっと恥ずかしいかな?」
俺は慌てて腕を解いた。すると結は不服なのか、「むうっ…」と言って拗ねた。
「さ、さすがにここでは恥ずかしいし…」
「じゃあ神が泣いていたことは?」
「わああ!言わないで!」
泣き終わった後、俺は妙に冷静さを取り戻し、さっきまでの記憶を消し去って欲しいと心の底から思った。けどその考えは次の一言で吹き飛ぶ
「もちろん言うつもりないよw」
俺はホッとした。
「でもね、辛い時は泣いていいんだよ。私が神の居場所になるから、いつでも話しかけてきてね。あ、私から行く時もあるかも」
「ありがとう…!」
すると結は廊下の窓の方を向いた。
「ねえ見て夕焼け!綺麗だね!」
外を見ると、太陽が沈みかけていて、あたり一面オレンジ色に輝いていた。
「うん、そうだね…」
外の景色に見惚れていると、急にほっぺに柔らかい感触がした。
「…え?」
「えへへ〜びっくりしたでしょ。私から勝手に距離を置いた罰だよ♪」
「ご、ご褒美の、間違いじゃ…って、ええ!?」
俺は結にキスされた。夕日が落ち、ほんのり明るい光がつつまれるなかで。
「タイミングよかったでしょ!」
と結は目を輝かせて言うので、俺はおかしくて笑った。
「ほんとにすごいwもしかしてここまで計算したん?」
結の反応はなかった。
「結…?」
俺は結が涙を流していることがわかった。でも、すごく笑顔だった。
「やっと、笑った…。いつもの神だぁ…!あ、ごめんね…。神が久しぶりに笑顔になって…、ほんとに嬉しくて…!」
結はぽろぽろと涙を流している。彼女が泣いた所を俺は
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