第3幕
Smile for me―――決別
第1話
一触即発の空気が張り詰めている中、談話室に急ぐヒールの音がやってくる。
「お嬢様、ここに――っげ、やはりこちらにいらっしゃいましたか」
「あら、久しぶりの再会なのに、その挨拶は如何なものかしら? ねぇ、
「……お久しぶりです、
「あらぁ~。わたしを忘れてちゃ~困るわぁ~」
「
肩までかかるふわふわした髪のする長身の女性にも一礼する
これなら、元々死ぬほど仲が悪かった分家が協力し合えるようになったことについても頷ける。
一刻も早く状況を把握して分家の陰謀を阻止しないと。考え込む
「いやぁねぇ、
「ワタシ、生まれつきこの顔でございまして。もしお気に障るようでしたら、申し訳ございません」
「うんうん。その謝罪でさっきの『っげ』を許しちゃおうかなぁ~♪」
「……寛大なお心、感謝いたします」
内なる焦燥に気付かれまいと努めて冷静な声色で腰を曲げる
その際、姫の異変に横目で確認したが、
「いいことを思い付いた! ねえ、
この期に及んでまだヘッドハントしようとするとは、相変わらず懲りない人だ。そう思った
「せっかくのお心遣いに感謝しておりますが、遠慮させていただきます。ワタシは――」
だけど、
「四六時中ずっとあの子の世話をしてさぁ、一体何が楽しいの? 生きているようで死んでいるみたいな人間の世話を、ずっとしても無意味だとは思わない?」
「うん、そうそう~」
「そ・れ・に、次期当主はあたしになるんだから、転職先をどこにするのか、今の内によく考えておいた方がお得だぞ~♪」
「そんなバカな……! 先代当主様のご遺言を無視するおつもりですか!」
先代当主――
五姉妹の末娘であるのにも関わらずだ。それを無視するどころか覆ることすら許されていないはず。それなのに、
やっと焦りを露わにした
「そんな人聞きの悪いことを言わないで、
クッ、と思わず下唇を噛む
失意した姫を見て嗜虐心がくすぐられた
「それに、これ以上当主の席を空けておくわけにもいかないもの。8年間を経っても回復の兆しが見られない以上、仕方なく代わってやる。ただそれだけの話よ。
最後の方で甘ったるい感じの声になっていて、あまりの不快さに吐き気がする。三十路になる手前の女性として、自分より年上の同性の猫撫で声を聞くと、どうしても生理的嫌悪感が湧き上がるもの。
目前まで接近してきた
鋭い冷刃に逆撫でされそうな、深く冷徹に輝いている碧瞳の前に
「いくら祈ってもね、
いつの間にか、
その結果、姫は自分の感情を押し殺して、殻に戻ろうとしている。見れば、みおは車椅子の後ろで更に身を小さくして、震えていた。
――このままではダメだ。
そう思った一人の少年の声が、暗鬱な空気を鋭く切り裂く。
「――同士討ちは、いつの時代でもよろしくナァーイ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます