第2話
そんなある日、
それもそのはず。なぜなら、彼女は自分だけが特別扱いされていたことを知らなかったからだ。
どうしよう、と思い悩む
唯一の例外は、
――これは憧れの
逸る気持ちを抑えつつ、
「ここにいたんだね、
「……ねえ、お爺様。どうして、次期当主になるのが私なの……?」
「こ、これ、おじいじ言ったんだろう? その、部屋の外で無暗にその話題を持ち出すのは……」
「ねえ、どうして……」
可愛がっていた孫娘に上目遣いされて、彼はようやく観念したように深く重い息を吐き出す。
「……そうだ。この
それを聞いた
「さあ、おじいじと一緒に部屋に戻りましょう」
「……うん」
半ば強引に
それから
しかし、彼女の時間のほとんどは授業、
しかしそんなある日、その偶然が早くも
もしこれが上手く行けば、憧れの
「どうかなさいましたか、
「……うん。あ、でもここでは他の人にも聞かれちゃうから、ちょっと移動しましょう」
彼女と話してみると、意外なことに彼女はしっかりとした芯を持っていることが発覚。落ち着きのある口調の上に、自分の価値観もしっかり持っていらっしゃる。とても9歳の子との対話とは思えないほどだ。
――なるほど、当主様がここまで可愛がっていたのにも頷ける。
むしろ、事情の大まかを知っている人間にとって、聞くだけで心苦しくなるものばかりだ。
『バカにされようが無視されようが関係ない。家族だから仲良くしたい』
そんな思いが
二人とも揃って
おまけに、
他のお嬢様方とのわだかまりを解消する前に色んな問題が立ちはだかっているが、まずは一つずつ解決していこう、で話し合いが一旦終了。
これからは定期的に作戦会議を開こう、と
「……貴女、私の専属メイドになる気はない? 確か、メイドって色んな種類があるでしょ?」
それを聞いた
ただ彼女の相談を一度乗っただけでこんなあっさりと行くものとは、まさか罠なのか。一瞬身構えたものの、すぐに納得して緊張を解した。
――それだけ、彼女が独りだということか。
ずっと
四六時中にずっと大人たちに囲まれている環境の中で、果たして彼女は心置きなく心情を吐露できる相手がいるでしょうか。
どれだけ屋敷が大きくても、どれだけの使用人に囲まれても、相談できる相手が一人もいないようでは、最早無意味だ。見れば、彼女は拒絶を恐れて、小さな手が震えている。それに、本人から持ち掛けてきたのなら、むしろ本望と言えよう。
ならば、
彼女は片足を斜め後ろの内側に引き、もう片方の足の膝を軽く曲げ、背筋は伸ばしたまま両手でスカートの裾を軽く持ち上げて、ゆっくりと言葉を紡ぎ出す。
「かしこまりました。本日より、
「……うーん。なんか物足りないんだよねー」
はあ、と思わず間抜けた声で返す
「そうだ。ねえ
言われた通りに、
「――私と指切りして。ずっと一緒にいるよの約束をするの!」
実に子供らしい約束に
「これから先、どんなことが起きようと必ずお嬢様の傍にいます」
「えへへ、これからもよろしくね、
新しい主の眩しい笑顔につられて、
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