幕間――――過ぎ去れし日々
第1話
高台にそびえ立つ、お城のような邸宅――
正門を潜り抜けても、本館の玄関までの距離はなんと2
合計すれば、二千坪以上にも及ぶ広い敷地に複数の庭園が広がり。その中でも一番の目玉だと言われている大噴水は夜になってもライトアップされ、暗くなってもその美しさを眺めることができる。
使用人用の別棟まで用意されており、随時約100人がそこで生活し、日々の業務に勤しむ。無論、その中には
人伝か、精鋭中のプロでも突破するのが極めて困難と言われている、厳しい選抜試験をクリアするか、この二択のみ。
そして、錦雅代は後者の方だ。まさか、たかがのメイドオタクが合格できるとは彼女自身でさえ想定外だったが、だからこそ、今彼女が就いたこの職に常に誇りを持っている。
彼女が
――別に一日サボっても、埃が増えるわけでもありませんのに。
バックには一部の使用人も描かれたそれの中心に座っているのは、
そして、
そんなある日、雅代はいつものように、絵の中にある
――色んな絵画が飾っていたのに、どうして当主様はこの一枚にだけ、ご執心なんでしょうか。毎日お手入れをしなくても良いと思いますが、お金持ちのやることは分かったようじゃありませんね。
当時、選抜試験を合格したのは、ただ雅代一人だけ。その実力を買われて、彼女はこの絵の手入れをする、と直々当主様に命じられた。
この命を受けた当初は、雅代自身も疑問に思ったが、
「まあ、それはつまり、守るべき資産の中に
そう結論を出してはフフフ、と埃をはたいて落とす彼女。
後に、彼女がこの絵の重要性を知ることになるのは、更に一ヶ月後――
仕事をしていればするほど、
食事の際に必ず彼女と同席したり、四人の姉を差し置いて、二人だけで外出したり、旅行までしたりした。おまけに、彼女たちにお嬢様学校に行かせておいて、
自分の息子を平然と屋敷を追い出すような冷徹な人間が、孫の可愛らしさに虜になり、溺愛していた。そのせいで、
とは言っても、彼女が姉たちと一緒にいる機会は滅多になかったため、当時の彼女も気に留めもしなかったが。
同じ屋根の下で住んでいるのに、どうして一緒にいる機会が少ないかと聞かれると、使用人たちもその一役を買っていたからである。
『もし一姫が他の姉たちと話しかけるようであれば、さり気なく彼女を引き離す』という命を仰せつかっていた。無論、下したのは、他でもない祖父の
そんな彼がここまで
この見解は、ある使用人がこれまでの
だけど、それがうっかりと姉の一人の耳に入ってしまった。それからだった。彼女たちが
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