ニナ

お騒がせな一行が去った。


幸い、妖精隊員の損害はなかった。とは言え、跪いたままの姿勢を強制されていた彼女達にはかなり辛かったようで束縛から解放された後、全員へたり込んでいた。


一方、賢は祥子の元に駆け寄っていた。


「祥子!大丈夫か!?」


「うううう、なんとか死んでないみたい。あのでかい奴、ほんとひどい」


<全くだ、あのクソ野郎。今度あったらぶっ殺してやるぜ>


「え!?今のは誰だ!?」突然割り込んできた謎の声に賢は驚き声を上げた。


<ああ、あんたにも聞こえてたか、王様>


「君は、誰だい?」


<俺は、@△○$+>ニナだ>


「は?ニナ?」


<やっぱあんたらには聞き取れないか。めんどくせえからその最後の『ニナ』だけでいいぜ>


「ニナ?君はいったい?」


<あんたの妹と精神をリンクして話してるんだ。本体は別の場所にいる>


「別の場所?それはどこに?」


<しらね>


「はあ!?ちょっと適当すぎない?大体何私とお兄ちゃんの会話に割り込んでんのよ?声だとどっちか判別付かなかったけど、あんた女ね?」


祥子は女の直感で、声の主がライバルになりうることを見抜いた。口調は荒いままだが、間違いなく賢には優しい。


ニナも女性だからか、祥子の警戒心になんとなく気がついたようだ。


<なんだ?めんどくせえ女だな。俺ら『女神』が王様にそれなりの敬意を払うのは当然だろうが>


「『女神』ですって?そんな口調で?」


<うっせえ。口調は関係ねえ。『女神』は王様に仕える。さっきの女王とかと似たようなもんだ>


「で、もう一度聞くけど君はどこに」


<わからねえ。だが俺の本体はどっかで眠ってる。あんたが王様になったってことは、既に手がかりが何処かにあるってことだ。詳しいやつに聞け>


「聞けって?」


<わりーが俺もこれ以上わからねえ。そろそろ限界なんで寝るぜ>


「ちょっと待ってくれ」


<じゃあな、今代の王様はなかなかイケメンで嬉しいぜ>


<あ、ちょっと言い忘れてたが、あんたの妹はあんたのこと思い浮かべて毎夜毎夜1人でオ>

「あ”ーーーーーーーーーーーーーーーーー」


祥子が大声でニナの発言を遮ってるうちに彼女の声は聞こえなくなった。


「祥子!なんだい、いきなり大声を出して。最後なんて言ったか聞き取れなかったじゃないか」


「いいの!!それより、まずはみんなのところに」


「わかった、ニナにはもっと聞きたいことがあったが仕方ない。おじさ、いや群司令に報告しよう」


「うん!」


2人は混乱した状況の中で撤収作業中の山下群司令と妖精隊員に合流するのだった。

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