最終話「玄宗学園高校の楊貴妃」ー4
「楊華と貴衣は、結局どこに決めたの?」
「んー。私は、“スターダスト カンパニー” に事務所決めたっ!」
楊華は、2年の秋くらいから、“もふネコ愛好会” の活動と並行して、楊華の姉であり、ティーンの女の子たちの間で大人気のファッション雑誌『
「うわー! すごいっ! “スターダスト カンパニー“ って言ったら、業界最大手じゃん! しかも、ミモザちゃんと同じ事務所なんて羨ましいっ! 仲良くなったらサインもらって来てー!」
“ミモザちゃん” こと“
「わーかった、わかった! わかったから、落ち着け、妃美子! ハウス!」
楊華と貴衣が大笑いした。
「それで、貴衣はどうするの?」
楊華が貴衣に尋ねた。
「私は、“ローズ女学院大学” を第1志望にした。ママも出てる大学だし、安心だからって。医学部にするか薬学部にするかは迷い中だけど……」
“ローズ女学院大学” は、お嬢様大学として有名だ。政治家や医者、日本でも有数の超大手企業の社長令嬢たちしか入学することが許されない超名門大学だ。勿論、偏差値もかなり高い。
「それじゃあ、翼くんとは、別の大学になっちゃうんだね。翼くんは芸術大学に行くのかな? もう、すでに売れっ子の漫画家さんだし、大学通う暇あるのかね?」
妃美子が言うと、
「自分の絵は自己流で身に着けたものだから、芸術大学で基礎からしっかり勉強したいって言ってたよ」
と、貴衣が言った。
「ところで、貴衣は、漫画家になる夢は諦めちゃったの?」
楊華が訊いた。
「ううん……諦めてないよっ! ただ、作画の方は諦める」
貴衣は、少し寂しそうに微笑んだ。
「そっかあ……貴衣、めっちゃ頑張ってたのにねえ」
妃美子が、泣きそうな顔をして言った。黒崎 翼と出逢ってから、貴衣は、成績は学年トップクラスを維持しながら、何度落選してもめげずに、必死に漫画を描き続けていた。
「でもね……嫌々医学の道に進むわけじゃないのよ」
貴衣の表情が綻んだ。
「どういうこと?」
楊華が尋いた。
「翼くんね、いつか、本格的な医療漫画を描きたいんだって。その時に、私に監修をお願いしたいって!」
貴衣の夢は、形を変えながら続いているのだと思うと、妃美子は、なんだか、とっても嬉しい気持ちになった。それは、楊華も同じだったようで、
「すごいじゃん! 貴衣! 売れっ子漫画家の作品に貴衣の名前が載るってことでしょ? 発売されたら、私、買い占めるからっ!」
と言って貴衣をぎゅっと抱きしめた。
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