第13話「楊貴妃のアフタヌーンティー」ー5
「私のパパはね、私の交際相手には、やたらと口出ししてくるけど、それ以外の交友関係に関しては放任主義なの。何度も、楊華と妃美子をうちに招待しなさいって言われてるくらいなの。パパは、神無月に絶対的信頼を置いていて、その辺のことは全て神無月に任せているから安心みたい。それに、パパは、今の地位を築き上げるまでにとても苦労をしてきた人だから、能力や資質がある人に対してはフレンドリーなの」
ここまで貴衣の話を聞いても、妃美子は、貴衣が言わんと欲していることを理解することができず、率直に訊いてみることにした。
「貴衣のパパが、貴衣の交友関係には放任主義で、能力や資質がある人に対してはフレンドリーってことはよくわかったけど、さっき言ってた『商談成立!』ってどういうことなの?」
妃美子は小首を傾げた。
「うちのシェフね、昔、パリの“グランメゾン”で働いていたの。家族でパリに旅行に行った時に、父は、そのお店の料理の味の虜になってしまって、その店のオーナーと交渉して、彼を、円城寺家の専属のお抱えシェフとして雇い入れることにしたのよ。彼、料理するだけじゃなくて、食材の調達もすべて彼の裁量でしてるの。そんなわけで、彼に『如月農園』のことを話したら、是非、提携したいって言って来たの。『如月農園』のかぶ、すごく美味しいって評判らしいわよ! うちの自慢のシェフが選んだ仕入先の娘が私の親友だって知ったら、パパ、きっと大喜びするわ!」
「本当にいいの? うち、小さな田舎の農園だよ?」
「いいも何も、こっちから無理言ってお願いしたんだものっ! ありがとう、妃美子!」
貴衣の言葉を聞いて、安心した妃美子は、改めて、2人に念押しの確認をした。
「2人とも、これからも、私の親友でいてくれるの?」
「くどいなあ! 当たり前でしょっ!」
楊華と貴衣の声が完全にシンクロした。
「そっかあ……良かったぁ……良かったよぉ……」
妃美子の瞳から嬉し涙が零れた。つられて貴衣も泣き始めた。そんな2人を両脇に抱えて楊華は優しく2人の髪を撫でた。
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