第12話「My Friends」ー5

妃美子ひみごがそうしたいならそれでいいけど、剛ぐん、いぐら、うぢの妃美子ひみごが可愛いがらって、手出したら承知しねえど!」

 と、父は、縦も横も父の倍くらいあるんじゃないかと思われる、がたいのいい強羅を見上げながら言った。


「もうっ! 父ぢゃん! 強羅がそーたごどするわげねえべ? 私の命の恩人に向かって失礼なこど言わねえでよっ!」


 強めの口調で、妃美子が父を叱ると、父は、シュンとして、叱られたチワワのように項垂れた。


「そうですよ! お父さん! 俺にどって、如月は、同郷の仲間であり幼馴染です。異性どして見でいねえので安心してぐださい!」


 強羅の言葉を聞いて、妃美子の心がズキンと痛んだ。


「なんだど? オマエさんは、うぢの可愛い娘が魅力的じゃねえって言うのが? それに、なんだ?  馴れ馴れしく“お父さん”なんて呼んで!」


 父が、また、キャンキャンと吠え出した。呆れた母と妃美子は、


「もうっ! ごじゃっぺにして(いい加減にして)! 父ぢゃん!」

 と、声を合わせて父を叱った。愛妻と愛娘に叱られて、小さな体を益々小さくする妃美子の父を見て、


「いい家族だな……」

 と、強羅が妃美子に言った。


「うん! 私の家族は、世界一いい家族なの!」


 今まで見たこともないような、花のような妃美子の純真無垢な笑顔を見て、思わず、強羅も顔をほころばせた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る