第11話「やっと会えたね」ー1
楊華と貴衣が正門を出るのを教室の窓から確認してから、妃美子は教室を出て、屋上へと向かった。足が恐怖心からガクガクと震えて上手く歩くことができない。途中、何度も階段の手摺を掴んだり壁に寄り掛かったりして、やっとの思いで屋上へと到着した。
心臓がバクバクと音を立てている。今にも破裂しそうだ。
鉄製の重い扉を開けると、生徒らしき人物は見当たらず、ひゅうひゅうと風の音が聴こえてきた。妃美子の頭上には湿気を帯びた灰色の分厚い雲が垂れ下がっており、今にも泣き出しそうだった。
(もしかしたら、背後から、現れるかもしれない……)
妃美子は、雷音に怯える子猫のように、辺りを警戒した。
屋上の隅々まで探してみたが、人影はなかった。
(もしかして……諦めて、帰ったのかな?)
――と、その時、
妃美子の背後から、不気味な声が聴こえてきた。
「ひーみーこーちゃーん。遅くなってごめんねえ。もしかして、内心ホッとしてたりしてる?」
その声は、屋上の扉の内側から聴こえてきた。妃美子は反射的に後退りをした。先ほどよりも震えがひどくなった足から力が抜け、そのまま地面に尻もちをついた。立ち上がろうとしても、震えの所為で立ち上がることができない。
屋上へと通じるねずみ色の鉄製の扉がゆっくりと開けられた。
そこに現れたのは、パステルブルーの“もふネコ戦士エカチェリーナ“の着ぐるみだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます