第10話「助けて!って言っていいの?」ー4

――「助けて!」


 たったこれだけの言葉が妃美子に重く重くのし掛かり、とうとう、打ち明けることができないまま放課後を迎えてしまった。


「妃美子、今日元気ないけど、まだ体調悪いんじゃない? もうすぐ“神無月”が迎えに来るから、お家まで送るよ!」


 貴衣が心配そうに声を掛けて来た。


「えー! 貴衣ずるーい! 妃美子は、うちの “アナスターシャ“ が送るの!」


 “もふネコ戦士エカチェリーナ“ の猫耳カチューシャを金色の艶めいた髪にセットしながら楊華が言った。


「2人ともありがとう! 実は、この後、ちょっと大事な用事があって、少し学校に残らなくちゃならないんだ。大丈夫! ちゃんとひとりで帰れるからさっ!」


 妃美子は、口角をキュッと上げて笑顔を繕った。


「えー? 大事な用事って何〜? もしかして、彼氏できた?」


「う……うん……そんな感じ……だから、ごめんね!」


 妃美子は2人にウインクをした。


「そうなんだ! やったね! おめでとう! あとでちゃんと私たちにも紹介してよー」


「も……もちろんだよ!」


「じゃあ、私たち、お邪魔虫はお家に帰りましょっ!」


「でも……」


 心配そうな貴衣の手を引っ張り、楊華は、


「じゃあ! 妃美子、また明日ねっ!」

 と挨拶をして教室から姿を消した。

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