第7話「罪と罰」ー2

 妃美子は、保健室に行く途中でトイレに立ち寄り、例の不気味な手紙を再度開封した。パステルブルーの封筒の中には、一枚のコピー用紙と一枚の写真が入っていた。写真は、昨日盗撮されたものだ。


 “如月農園” と書かれた白い軽トラックの助手席に乗り、父と会話をしている妃美子がハッキリと写っている。“玄宗学園前駅” から離れ、助手席で小さく身を隠していた妃美子が身体を起こし辺りを確認した時には人影などなかった筈だ。犯人は軽トラから離れた距離からこの写真を撮っている。かなり高性能な望遠レンズ機能付きのカメラを使用したことが予想された。


 そして、コピー用紙の方には、“Word” で入力されたと思われる赤文字で、


――ボク、ミチャッタンダ

 “ヨウキヒ” ノ3ニンハ、ミンナ、オカネモチノオジョウサマッテキイタンダケ ド、オカシイナ、ヒミコッチハチガウノカナア?(ワラ)――


 と入力されていた。


 妃美子の小さな身体は、恐怖のあまり、ガタガタと震えていた。


「怖い……怖いよう……」


 妃美子の大きな瞳から涙が零れ落ちた。


 きっと、神さまが罰を下したのだと思った。


 “楊貴妃のお戯れ” などと言って、大勢の男子生徒を笑い者にして楽しんだから……

ちょっとばかり容姿が優れているからと言って、他の女子生徒を見下していたから……


 親友に嘘を吐いたから……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る