第4話「高宮 楊華」ー4
―― 刹那。
楊華の白魚のように美しい右手が、
そして、先ほどまで、楊華の目の前にいた筈の
「僕は、気分を害したので、帰らせてもらいますっ!」
突如出現した美少年は、無惨に砕け散ったビン底メガネの破片を優雅な所作で拾い上げ、その場を立ち去ろうとしていた。
楊華は、地べたに膝をつきながら、
「お……お待ちくださいませっ! 貴方様のお名前をお聞かせ願えませんでしょうか?」
と、そのお方に縋るようにして懇願した。
「はっ? アンタ、暑さで頭やられちゃった? 僕は、平野 皇一ですよ。さっきまで、アンタと無益な争いをしていたでしょう? メガネはかち割られるし、帰りは遅くなるし、本当、散々な目に遭いましたよ! 金輪際、僕に関わらないでくださいっ!」
楊華は、今度こそ立ち去ろうとする平野の白いシャツの裾を掴み、
「愚かな私めの数々の無礼を、どうか……どうか……お許しくださいませ!
涙混じりに、必死に哀願する楊華を見下ろして、平野は、
「えっ? ヤダよ、めんどくせえ!」
と、楊華を突き放すように言い放った。
「そこをなんとか……なんとか……お願いいたしますぅ!」
楊華が、
「しつこいゴミだなあ……そこまで言うなら、付き合ってやってもいいけど、条件がある」
「はい! なんなりと! マイ・カイザー!」
「今日から、オマエは俺の奴隷だ! それと、『もふネコ戦士 エカチェリーナ』を侮辱したことを悔い改め『もふネコ戦士 エカチェリーナ』の公式ファンクラブに入会し、もふネコ信者として崇め奉ることを誓えるか?」
「はいっ! 我が命にかえましてもっ!」
“玄宗学園高校の楊貴妃トリオ“ は、この時を持って、事実上、消滅した。
そして、その日を境に、玄宗学園高校は『もふネコ戦士 エカチェリーナ』のコスプレをした女子生徒たちで溢れかえり、平野 皇一は、“
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