第1話「妃美子の回想録」ー2
“玄宗学園高校” に入学してから1ヶ月以上、楊華と貴衣と妃美子は、一言たりとも言葉を交わすことがなかった。
1年3組に3人のタイプの異なる超絶美少女が揃い踏みという噂は、秒速で学園中に知れ渡るところとなり、学園中の男たちが妃美子たちを一目見ようと、1年3組の教室周辺には連日ゴミのような人集りが築かれていた。当然、それを面白く思わない者もいた……
――「女」だ!
「もうっ! 誰かさんたちのせいで、うるさくて勉強に集中できないんだけど!」
「あー! もー! 男って、なんでバカばっかりなんだろ? 女を外見だけで判断するから、ああいうパッケージだけがご立派な粗悪商品が調子に乗るんだよねー!」
「アイツら、絶対、性格最悪だよねー?」
そんな声が彼方此方から聴こえてきた。
――ゴールデンウィークが明けて間もなくのことだった。
休憩時間になるたびに、飽きもせず妃美子たちの悪口を言うために屯ろっている女3人組たちのところへ、金色の長い髪をなびかせて、高宮 楊華が喧嘩を売りに行った。
楊華は、女たちが屯ろしている席の隣の席のモブ男を追いやると、モブ男の机の上に座り、すらっと伸びた長い脚を組み、小さな顔の右頬に白魚のような長い指を当てながら凛と通る声で言い放った。楊華のフェアリーピンクのジェルネイルに散りばめられたクリスタルストーンがキラキラと煌めいた。
「ねえねえ、それってさあ、私たちのこと言ってるのかなあ? ねえ、もっと聞かせてよ〜! 円城寺と如月とは喋ったことないから、2人の性格とかは知らないんだけどぉー、私は性格悪いよー。でも、それが何? そうやって群れて陰口叩いているブッサイクなアンタたちより外見が良い分、私の方がマシじゃね?」
そう言って、楊華は妖艶な笑みを浮かべた。
言っている内容はともかく、その、清々しいほど堂々とした態度と圧倒的美貌に気圧された3人組は、
「い……今に見てろっ!」
「吠え面かけよ!」
「あばよっ!」
という情けない捨て台詞を吐き捨て、その場から散り散りに逃げ去って行った。
楊華のこの凛とした態度を目の当たりにして、今まで楊華に対し嫌悪感を抱いていたクラスの女たちの半分ほどが、あからさまには態度には出さないものの、密かに楊華に対し憧れるようになった。楊華にはそういった“カリスマ性”があった。後にこのカリスマ性が役に立つことになるのだが、それはまだ、先のお話……
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