第20話 お買い物
今日は約束の土曜日。
駅で八神先輩と待ち合わせになっている。
先輩と2人きりでの買い物なんて初めてだから、緊張してしまって"服装が変じゃないか"とか"メイク大丈夫かな"とか気にしてしまっている。
「ふーっ…」
落ち着くために深呼吸をしていると、声をかけられた。
「葉山!」
「八神先輩!」
「待ったか?」
「いえ、今来たところなので!」
「じゃあ、行くか」
そう言って歩き出そうとした時、また声をかけられた
「あれ?焚翔!!」
「…はぁ」
「なんでため息なんてつくのー?休みの日にまで会えるなんて陽、嬉しい!」
そう言って八神先輩に女の人が抱きついた
「一ノ宮、離せ」
「えー?なんで?暇でしょ?私と遊ぼうよ!」
「(あの人が一ノ宮先輩…)」
「先約があるんだ」
「え?もしかして、この女?」
そう言って一ノ宮先輩は私を睨んできた。
この前、教室でのこともあるから気まずい…
「そうだ。あと、俺はお前の彼氏でもなんでもない。だから抱きつくな」
八神先輩はそう言って一ノ宮先輩の手を振り解き、私の手を掴むとその場を離れた。
その時に、一ノ宮先輩の方を見ると下唇を噛んで悔しそうに睨んでいた。
「葉山、ごめん。」
「え?」
「嫌な思いさせたよな」
「…そんな事ないです!」
「あいつ、いつもああなんだよ。毎回止めろって言ってるんだけどな」
「そうなんですね…とりあえず、さっきの事は忘れて買い物しましょう!」
「そうだな。行くか」
先輩はそう言って歩き出したから、その後を追った。
「で、どんなのがいいんですか?」
「んー…それがわかんないんだよなー。」
「身に付けるものがいいですか?」
「うーん…あ!財布!」
「お財布?」
「結構使っててボロボロなんだよな…」
「じゃあ、お財布にしますか?」
「そうだな。財布…だけじゃあれか?」
「そしたらお財布とハンカチなんてどうですか?ベタかもしれないですけど、実用性のあるものがいいかなって!」
「確かに。」
それから好きな色とか柄とかを聞いて色んなお店に入り、無事に良い物が買えた。
お礼にとファミレスに入って先輩に奢ってもらい帰路に着いた。
「葉山に頼んでよかった。俺じゃあ無理だったからな」
「でも、ほとんど先輩が決めたじゃないですか!私は提案しただけなので!」
「いや、本当。助かったよ」
「お母さん喜んでくれるといいですね!」
「…葉山。」
「はい?」
「あいつになんかされたら言えよ」
「へ?あいつ??」
「一ノ宮だ。」
「あ…忘れてました(笑)」
「…些細なことでもいいからちゃんと、俺に!言えよな」
「分かりました!何かあったら相談させてもらいますね!」
「着いたぞ」
「送ってもらってありがとうございました!また学校で。」
「…葉山!」
私がそう言って家に入ろうと一歩歩き出した時、先輩に呼ばれた。
「え?」
私が振り向くと同時に後頭部を抑えられおでこに先輩の唇が当たっていた。
「…えぇぇぇぇぇ!?」
「っ…じゃあな!!」
先輩は直ぐに離れると走って帰った。
「は?え!?…え!?」
私はその行動の意味がわからず、混乱しておでこに手を当ててとりあえず落ち着こうと家の中に入った。
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