第17話 ちゃん付け
宣戦布告された日の放課後、私と由莉、咲枝と八神先輩、水元先輩、吉川先輩とで帰ることになった。
朝にあんなこと言われたからこんな所を見られたらどんな事になるのか不安だったけど、八神先輩と一緒にいられることの方が嬉しくて忘れていた。
「葉山。」
「なんですか?」
「今度の土曜日、空いてるか?」
「土曜日は…空いてますよ!」
「そうか…ちょっと買い物に付き合って欲しいんだけど」
「え!?わ、私でいいんですか?」
「お前なら良いの選んでくれそうだからな」
「行きます!」
「じゃあ、頼む」
「ちなみに誰にどんなプレゼントするんですか?」
「もうすぐ母さんの誕生日なんだよ」
少し照れたように先輩がそう言うと、水元先輩が茶化すように言ってきた
「お前母ちゃんのこと大好きだもんな!」
「うるせぇ!いつも迷惑かけてるし、誕生日くらいはと思ってるだけだ。」
「先輩ってお母さん思いの素敵な人なんですねっ」
「はぁ!?別にそんなんじゃねぇよ!」
「照れんなって!焚ちゃん♪」
「おまっ…!!」
水元先輩にちゃん付けされて怒っていたが、由莉が火に油を注ぐようにこう言った
「八神先輩、お母さまにちゃん付けされてるんですか?可愛いところもあるんですね!」
「お前ら…ふざけんな!!」
「いいじゃんかよー!」
「よくねぇ!葉山行くぞ!」
「え!?あ、はいっ」
丁度、それぞれの分かれ道に着いてすぐ八神先輩が私の手を引っ張って、その場を離れた。
「あ、あの八神先輩っ」
「あぁ…ごめん。痛かったか?」
「あ、いえ。大丈夫です。」
「さっきの…」
「え?」
「蒼也の言ったこと忘れろ。」
「"焚ちゃん"って呼ばれてることですか??」
「そ、それだ!この歳になってちゃん付けなんて恥ずかしいだろ?」
「…そんなことないと思います」
「は?」
「お母さん。本当に八神先輩のことが大好きなんだなって思いが伝わってきます!」
私がそう言うと先輩は"うるせぇ"って言いながら私の髪をぐしゃぐしゃに撫で回してきた
「ちょっ…もう!」
「ほら、早く家に入れ!」
「先輩のせいで髪がぐちゃぐちゃになってるから前が見えないので入れませーん」
私が目をつぶりながらちょっと意地悪するようにそう言うと、先輩が呆れたように"ったく"と言いながら髪を直してくれた。
「ほら、これでいいだろ?」
先輩がそういうので目を開けるとなぜか目の前に先輩の顔があって、あまりの近さにドキッとしてしまった。
「だ、大丈夫です。」
「これで家に入れるな。また明日な、詩」
そう言って先輩は帰って行った。
「先輩…ズルすぎるよ…」
私はそう呟いて家に入った。
けど、それをまさか見られてるなんて思いもしなかった。
「あの女…許さないんだから…」
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