第十二話 即位式〜そして伝説は幕を開ける〜
上部に乗せられた天板からは、五色の宝玉が連なった糸が、雨のように垂れ下がる。黒地に金の刺繍と垂れた赤紐が、よく映えた。
まさか
冕冠と同じ色合いをした
この世を表す
それ以上に、多くの官吏たちから一身に受ける視線の方が重いかもしれないが。
「余は民間育ちである。宮廷のことは何もわからぬ。政も同様だ。
よって、
今、彼女は皇帝を『演じている』と思った。
本来の彼女なら耐えきれない。だが、演じる時、彼女は全くの別人へと変わる。『
藍大将軍を見る。彼は表情を崩さなかったが、その瞳には動揺の色が見えた。
いくら練習を積んだとはいえ、付け焼き刃だと思っていたのだろう。――最初から
『
彼が塩邑王より
塩邑王は豪族派だ。しかも、自分に付き添う部下たちを引き連れて
彼らが欲しいのは、傀儡の皇帝なのだから。それがわかっているから、
だが。その女は、思い通りには動かせない。
あんたたちは無学な女だと勘違いしているが、全くそうじゃない。今にきっと、それを思い知るだろう。
僕は、彼女のそばにいると誓ったのだ。
「それから。皆が知るとおり、余には既に夫がいる。余はそのもの以外に、夫を持つ気は無い」
ざわ、と官吏たちがざわめく。
藍大将軍が、「何を仰るのです」と小声で言った。だが、
「そなたたちの動揺はもっともだ。よって、余は、そなたたちに
「げ、
「余に勝った者のみと婚姻を結ぶことを、ここに宣言する!!
しーん、と、その場が静まり返った。
「……なあ、
「……庶民時代、
純粋に質問してくる
いや、だって、そう来る? 流石の僕も想像つかなかったんだけども。
こうして、前代未聞の即位式は終わりを告げ、二年の時が過ぎるのだった。
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