新天地は遊戯とともに
第七話 僕らより年下の太皇太后
この国の服は、左の
衽にも二通りあり、真っ直ぐな
まるで八重咲きの百合のようだった。
「どう?」
くるり、と
目尻には華やかな紅がさしてあり、大人びた印象がある。けれど、悪戯っぽく笑う
「似合っているよ」
嘘交じりもなく素直な感想を僕が言うと、何故か
「照れが足りない。やり直し」
「ええ……」
「もっとこう、あるでしょう。『可愛すぎて直視できない』とか、『あー……うん、似合ってるんじゃないか?』って言って一人でいる時に真っ赤になるとか!」
「後者は君確認できないと思うけどいいのか?」
一人で顔を赤くするとか、何その変態。
しかし僕も『
その名にかけて、演じて見せよう!
精一杯の笑みを浮かべて、僕は言った。
「あんまりにも綺麗で、言葉を失った」
すごい顔をされた。
「……やっぱりいいわ。なんか、嘘くさい」
「ええ……」
爽やかに称賛する伊達男を演じたつもりだったんだけどなあ。
「いいわ。掛け値なしのさっきの言葉の方が嬉しいもの。早く行きましょう」
李太皇太后が待ってるわ、と
その後ろ姿を見て、僕は何となく聞いてみた。
「髪型、あんまり変わってないよな。庶民の時と」
「ああ、普通はもっと盛るみたいだけど。
女官たちの髪型の方が可愛いわ、と
「それに、その髪型じゃ、埋もれちゃうしね」
「埋もれる? ……あ」
今、気づいた。
結った根元には、豪華な房飾りの簪の中に、質素な玉の簪があった。それは僕が、彼女の成人祝いに贈ったものだ。
女は成人の証として
「私ね。これが一番可愛いと思うの。」
そして、満面の笑みで言った。
「だってあなたが最初に結ってくれた髪型だもの!」
さ、早く行くわよー、と、鼻歌交じりに彼女が進む。
数拍おいて後、僕は硬直した身体を動かすことができた。――ただし、血も全身をめぐって、顔どころじゃなく身体まで真っ赤になったけど。
「何してるのー?」
見えないところから、
一人で赤くなるとか、僕は変態か。
■
後宮には、亡き昌帝の皇后――李
藍大将軍の孫である彼女は、僕や
若いと言うより、幼い、と言った方がしっくり来る李太皇太后は、じっと僕らを見つめていた。
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