第49話 建武政権の崩壊と護良親王即位
さて、主に近江の佐々木道誉の働きで比叡山に山に押し込められたままの建武新政軍に対してのこちらの兵糧攻めが完全になり全体的に圧倒しつつあった。
比叡山は琵琶湖周辺の水運と金融を掌握していたが、俺達は元天台座主であった護良親王の記憶を元に比叡山の持つ琵琶湖の船を全て破壊、琵琶湖経由での食料の輸送を絶ち、北陸道も封鎖することで京市街の方面はもともとこちらが抑えていたから比叡山は完全に糧道を絶たれた。
そんな中、京に入った俺達はまず護良親王が
彼らは建武の新政の時に藤房の出奔と反逆、そして失政の詰め腹を切らされ職を剥奪されて蟄居していたのだ。
護良親王が彼らに言った。
「宣房、季房、今後は藤房とともに私のために働いてほしい」
二人は平伏して答えた。
「は、今後我が親子は大塔宮に使えさせていただくことをお許し下さい」
「うむ、よろしく頼むぞ」
「ははー」
これで万里小路一族はこちらについた。
この頃比叡山の後醍醐天皇側の食糧難はいよいよ深刻になってきており、公家連中は腹減ったしもう都に戻りたいと嘆き始めていたようだ。
そういった状況で護良親王は後醍醐天皇にたいして兵を挙げたのではなく君側の奸である公家などから天皇を救う為にやったことで帝を京に迎えたい、そのために後醍醐天皇の身の安全と名誉の保障、京への帰還を認めるにかわり自分への皇位の継承と三種の神器の譲渡、そして君側の奸である二条道平、吉田定房、坊門清忠、北畠親房、そして姦婦阿野廉子の排除を行うこと、を条件とすると伝えた。
それと同時に俺は新田義貞に朝廷に対する忠誠を貫くのであれば、むしろ君側の奸の公卿を滅するためにこちらに降伏して、関東の討伐・統治に協力してほしいとの意向を書で伝えた。
実際に新田がこちらに下ってくれれば関東方面の鎮守府将軍にしてもいいと思っている。
俺や菊池が関東にいくよりは従うものも多いだろうからな。
さらにその間に俺達は大和の
形代というのは単なる模造品ではなく神器の力をわけられた神器に準ずるものだ。
これを各神社や神宮で受け取ることにより最悪今現在の三種の神器が失われたりしても正式な三種の神器を護良親王が手に入れたことになる。
まあ、これは念のためのもので帝が素直に渡してくれればいいのだが。
さて比叡山では護良親王が尊氏などの武家を討ち取ってくれて、これで武家中心の政治からもとに戻ると楽観的な連中はこれで京に帰れると浮かれていたが、君側の奸と名指しされた面々を筆頭に上級貴族は渋面を浮かべていた。
だが後醍醐天皇は、名指しされた部下などを切り捨てれば自分は都に帰れるし、このまま比叡山にこもっていても飢えるばかりでいずれ破局が訪れるのは目に見えているので、和睦に応じるべきであると皆に伝えた。
そして、後醍醐天皇は京都に向かう際、
恐らく恒長親王が北へ行った頃には恒良親王の皇位を取り消すつもりでいたんだろう。
天皇はニセの三種の神器を親王にわたしているらしい。
越前の気比大宮司が以前から宮方に好意的であったり、白山神社は昔から比叡山と縁があったりと北陸は比叡山の天台宗山門派の影響が強いところだったからな。
さらに、
しかし、天皇の構想は破局した、新田義貞一門が先にこちらに下ったのだ。
大舘氏明、江田行義らの新田一門でもすでに建武政権側にいる意味は無いと言う意見のものが増え、新田義貞も天皇が勝手に和睦を結ぼうとしていると聞いて愛想を尽かしたわけだ。
「新田殿、これからはまた戦友としてよろしく頼む」
俺は新田義貞に笑いかけた。
「うむ、こちらこそだ。
楠木殿、共に戦おうぞ」
俺には足利尊氏と違って新田義貞に対してのライバル意識はないから普通に受け入れたさ。
新田義貞は播磨守はとかれたが上野介と越後守はそのままだ。
ただし越後は建武政権残党の勢力が強く上野は足利残党の勢力が強いから自分で取り戻さないといけないけどな。
さらに
懐良親王と坊門清忠は薩摩硫黄島に流刑、五条頼元はその能力や姿勢を鑑みて取り立てた。
こうした中で天皇は側近や親王を見捨てて、公家衆をつれてれ京へ向かった。
のんきな公家共はこれで、兵乱も治まり、再び平和が訪れ自分たちは働きもせずに遊んで暮らせる日々が戻ると思っていたのだろう。
「大塔宮、自分の父親やその側近でも情けを与えてはいけませんぞ
中途半端な情けは最悪の結果を生む事をあなたはおわかりでしょうが」
「うむ、わかっている」
そんな連中に対して護良親王は万里小路宣房に政務に関わっていたもののうち賄賂を取って居たものは全て処刑とし、毒にも薬にもならないやつは官位剥奪、まともに政務を行っていたものは正式に官位を与えて召し抱えるようにさせた。
後醍醐天皇は、
護良親王は正式に即位して今上帝となった。
事実上建武政権は崩壊したのだ。
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