第16話 蝦夷との交易と塩田の改良に鉄砲の材料集め

  とりあえず俺は田畑を捨てて離散した農民や借金のかたに売り飛ばされたものなどをなどを受け入れる施設を作り、運用を後見人である南江正忠に任せ、俺は米や酒などの食料品や鉄鍋・土鍋などの生活用品を買い付けて瀬戸内海を西に向かい博多に寄港して食料や水を補給した後、日本海を陸伝いに北へ向かった。


 途中陸奥の十三湊(とさみなと)で食料や水を再度補給するとともにアイヌの通訳をやとった。


 この当時十三湊は、西の博多に匹敵する交易の中心として栄えた湊で、蝦夷地のアイヌの交易舟や若狭経由での京からの交易船などが多数往来していた。


 アイヌは石器時代から樺太や千島列島・蝦夷地(北海道)などに住んでいた先住民族で独自のカムイと呼ばれる文化を持った先住民族だ。


 彼等は粟や黍などの穀物なども多少は作っているが蝦夷はコメを作るには適していない寒い土地だから、主に昆布・鮭(さけ)・鱈(たら)・鰊(にしん)・蝶鮫(ちょうざめ)・帆立貝(ほたてがい)などの北の海産物や熊の毛皮や胆嚢・貂(てん)の毛皮・矢の羽に使う鷲(わし)や鷹(たか)の尾羽などが主な交易の品目だ。


 元は1284から1286年に樺太のアイヌへ連続して攻撃を行い、アイヌは樺太からほぼ排除されたらしい。


 元は、樺太の南端に城を設け、冬季に氷結する宗谷海峡からのアイヌの北上を阻止したようだ。


 日本における元寇のような暴風による被害というのを期待できない地ではどうしようもなかっただろうな。


 樺太を前線基地として蝦夷から南下して日本を攻めなかったのは単に元が地理を知らなかったかららしいのは幸運だったといえるだろう。


 それはともかく、干した帆立や昆布は珍味として高く売れる。


 俺は米や鮭を蝦夷の海産物と交換してほくほく顔だった。


 しかし、ここ蝦夷地にて手に入れたいものがもう一つ有った。


  それは釧路や留萌付近の石炭だ。


 木炭よりも高温で燃える石炭があれば、いろいろなもんに使える。


 製鉄や塩を煮詰めるのに使ったりなどだな。


 製鉄には硫黄を抜いてコークスにしないといけないが、中国大陸ではとっくの昔に製鉄に使われている。


 鉄鉱石にも含有されてるリンなどの成分によって、品質に差があるんだが日本では出雲などの中国地方の鉄は品質が優れているとされてるが、戦国時代に鉄砲の制作するために中国や東南アジア、インドからの鉄や鉛、硝石などを大量に輸入したらしい。


 それはともかく燃料として優秀な石炭をぜひ手に入れたいのだ。


 俺は通訳を通じてそれを説明して、アイヌの許可を得て石炭を掘り出すことにした。


「こんな黒い石が役に立つんですかね」


「ああ、ものすごく役に立つぞ」


 釧路近辺の炭鉱は江戸時代から掘られているくらいなので比較的採掘は容易だった。


 ある程度量が取れたらそれを船に積み込む。


「ありがとな、助かったぜ」


 俺は石炭の礼として米をおいていった。


 今後も継続的に取らせてもらうためには友好的に接しておきたいところだ。


 そして一度河内に戻り今度は水銀や干し椎茸を船に乗せて、硫黄島で硫黄を、琉球で珊瑚を仕入れたあと大陸に渡る。


 いつものようにそれらを東南アジアやインドで宝石や香辛料と変えるついでに鉛や鉄も購入した。


 そして元では粘土を購入する。


 大陸の粘土は耐熱煉瓦の材料にできるからな。


 壱岐に戻った俺は炭焼きで使う岩と砂の炭焼窯を改良して高温に耐えられるような釜を作り、石灰質の粘土をレンガの形に整えて高温で焼きあげ、耐火レンガが焼けたらそれを組み上げて漆喰で固め耐火炉を組み上げて原始的な高炉である爆風炉を組み上げた。


 送風には幡鉾川(はたほこがわ)の流れを用いた水車を使ったふいごを用いる。


 炉の改善で銑鉄製造(溶融冶金)に移行し原材料に磁鉄鉱、赤鉄鉱、褐鉄鉱、砂鉄などを利用することができるようになった。


 銑鉄から錬鉄が造られた。


 溶融銑を撹拌脱炭して鋼を造る間接法の炒鋼炉、反射炉、坩堝の他、直接法の海綿鉄炉なども作らせた。


 燃料を薪や木炭から火力の強いコークスに換えることで、鉄の生産量を増大させた。


 これによりたたら吹きでは少量しか生産出来なかった鋼や鋳鉄を以後は大量に生産することができるようになる。


 固いが脆い銑鉄では銃や大砲の素材として使いにくいが、柔らかく粘り強い鋳鉄なら使いやすい。


 青銅より熱に強いのもいいな。


 すぐに取り掛かるわけではないが、今のタッチホール式銃から火縄式の銃に改良はしたい。


 ついでに塩田を改良した、今の塩田は揚げ浜式塩田法というやつで、人間が海に入っておけに海水を組んで砂浜をまず少し削り粘土を用いて海水が染み込んでいかないように表面を加工してもう一度砂を戻しそこにえっちらおっちら海水を担いで行き砂の上に海水をにざばっとぶちまけて、それを太陽熱によって海水を蒸発させて塩分濃度を濃くし、白く塩が吹いた砂を塩田の中央に設置された樽に集めて海水をかけ、濃い塩水を採りそれを鉄の塩釜で煮詰めて塩の結晶とする。


 その桶で運ぶところを木製のピストン式ポンプで海水を汲み上げ、竹を割った水道で塩田まで流下させ省力化を図り、煮詰める際の燃料に石炭を混ぜて火力を上げて、煮詰める手間を短くした。


「おお、コレは楽ですな」


「んだんだ、海に入って桶に水を組んでそれを運ぶのは大変だったからたすかるだな」


 もっと効率のいい塩田もあるんだがいろいろな地理的な問題や技術の問題から今回は簡単な改良にとどめておいた。


 流下式塩田は効率は飛躍的に上がるが海水を汲み上げるために高性能なポンプが必要だし、枝条架の手入れも大変だからな。


 入浜式塩田は遠浅の砂浜で干満の差が激しい場所でないと作れないのでそもそも無理だ。

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