第14話
とある昼下り。
俺は、コーヒーを飲みながら渋い顔をしていた。
別にコーヒーが不味い訳ではない。先日、心霊調査員である
定期的に調査の経過報告を聞いているのだが、そこでも「あまり進展はないね」ということがほとんどだった。
しかしながら、急いではいないとは言え、何だか落ち着かない。
何もできないので、待つしかないというのが、かなり歯がゆい。
優奈自身は、あまり未練をどうのこうの思っていないかもしれないが、命を落としてもなお諦めきれない想いを抱えているのは、事実だろう。
それなら、早めに見つけてあげたい。きっとそれが、優奈にとってもいいことだろうし。
すっかり冷めたコーヒーを一口飲んだその時、テーブルに置いていたスマホがブルブルと震えた。電話のようだ。
スマホの画面には、浮雲論理の文字が表示されていた。
俺は、慌てて口の中のコーヒーを胃へ流し込むと、電話に出る。
「はい、
「おっすおっす、論理おねいさんです」
「なんすか、そのしゃべり方」
何かのネットミーム……?
論理さんは、俺のツッコミなど気にする様子もなく続ける。
「さて、優奈ちゃんのことなんだけどね。どうやら、阿部君のいる町から電車で2時間くらい行った町に住んでいた可能性が出てきたんだ」
「結構、離れてますね」
てっきり隣町くらいの距離間かと思っていたが、全然違った。というか、そんな範囲で捜索してくれていたのか。
真剣に仕事に取り組む姿勢は、妹である浮雲倫理さんと似ているみたいだ。流石、双子である。
「さて、調査も大詰めかもしれない。いい結果になるよう、祈っていてくれ」
「はい。……ところで、論理さん」
「なんだい?」
俺は、気になっていることを恐る恐る聞いてみる。
「あの、結構な捜査期間になってますが、調査料って……」
ちらりとテレビの方へ視線を向ける。視線の先には、優奈がゲームに熱中していた。
昨日のことである。
優奈がぽつりと、「論理の調査って、どのくらいお金かかるんだろー?」と無邪気に言った。
優奈のことで頭がいっぱいで、お金のことなど全然考えていなかった。
論理さんと俺の間で、しばしの沈黙。
「阿部君」
「はい」
「ファイト☆」
論理さんは、それだけ言うと電話を切ってしまった。
……しばらくもやしメインで生活するか?
「
ゲームがひと段落したのか、優奈が俺の側に寄ってきた。
「いや、少し世知辛い話を」
俺は、心で冷や汗をかきまくりながら答える。
まぁ、直近で大金を使う予定はないから、大丈夫か。
そう思った矢先だった。
「あっ!」
「どうした、優奈」
「潤一、来週の金曜日、私の誕生日だ!」
「……へ?」
ご
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